月下の胡蝶

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お題《神様が舞い降りてきて、こう言った。》



おまえの淹れたお茶が飲みたい。


神様の身代わりであるおれに、あのとき淹れてくれたお茶をもういちど飲ませてくれ。





星空が綺麗な夜ベランダに、突然その青年は降りてきた。一瞬流れ星が落ちてきたんだと錯覚してしまったが、どうやら違うらしい。



「――覚えてるおれのこと」

「どこかでお会いしましたっけ……?」

「そう」


戸惑いつつも、何気ない雑談をする。そのくせ自分の話はまったくしないものだから、おもに私の話になってしまったが。


それでも嫌な顔ひとつしない。


なんだろう……この小さな違和感。


どうしていいかわからず、とりあえずお茶をすすめてみることにした。お茶を淹れることは得意なのだ。祖母が茶道の先生だったからか、自然と茶道に触れ身についてしまった。


「あのう、お茶淹れましょうか? なんでもお好きなお茶淹れますよ」


「ほんとうか?!」


急に少年のようになって、不覚にもときめいてしまった。胸の中に流れてゆく流れ星。


そしてこう言った。






「おまえの淹れたお茶が飲みたい。


神様の身代わりであるおれに、あのとき淹れてくれたお茶をもういちど飲ませてくれ」




この感情を、織りまぜてお茶にしてみようか。



7/27/2022, 11:44:43 AM