椿灯夏

Open App
7/26/2022, 1:04:01 PM

お題《誰かのためになるならば》


想いの原点。


原動力であり、追い風でもある。



「クオイ兄ちゃんは、どうしていつも笑ってるの?」

「笑顔でいたら、夜の底だって越えられる。それが嘘か真実(ほんもの)かより大切なことは、描こうってする想いなんだぜ」


いつも暁の国の辺境にあるちいさな教会で、子どもたちに物語の読み聞かせ、旅をしてきた自らの冒険譚、想いなどを語ったりしている。絵本を寄付したりと、クオイの活動は幅広い。



ふだんは手のひらサイズのグリフォン、フェンネルが、かばんに入っている。リシュティアから甘いものをもらううちに、甘党のグリフォンとなった。「ネルちゃん」と呼ばれている。


・手先が器用
ルシュラの懐中時計も直した。料理も実は得意で、行く先々で披露したりしている。スイーツやお茶を淹れる腕前はプロ並みだとか。


・人じゃないものにも好かれる
誰にも好かれるタイプ。老若男女問わず。
妖精とも仲がいい。

7/25/2022, 12:16:46 PM

お題《鳥かご》



オリメと出逢うまでは、月のない鳥籠にいるようだった。


「ヨル様」


彼女にそう呼ばれるたび、心に春風が舞い込む。



永遠に、月のない鳥籠で生きていくしかないと思っていた。でもそれはきっと、自分の世界しか知らなかったからだと識るのはもっと先のこと――。



「オリメちゃんみてみて、サクラが星屑糖(こんぺいとう)くれたよ」

「まあ、偉いですわ」


おれの鴉のサクラを撫でている彼女と、彼女の心友である姫。どちらもおれにとっては、大切な花だ。永遠に枯れない心の花。




――きっとみんな、姫のことが好きなんだろうな。



暁の姫が。



7/24/2022, 11:43:00 AM

お題《友情》




切っても切っても、きれないもの。




「魔王様〜今日の夕食は鶏肉のオレンジソテーだって」


部屋いっぱいに明るい声が響く。呼ばれた少年が、本から顔を上げる――淡い金色の髪に、サファイアの瞳。まるで《絵本の世界》からそのまま出てきたような見た目は、見る者を惹きつける。


《雨の中にいた記憶のない少年》――ユーリも、ここ暁の城に置いてもらっている身である。そしてここへ連れてきた少女は、リシュティア。笑顔の可愛らしい少女だ。


傍らに置かれた絵本を見、リシュティアが嬉しそうに言った。


「これクゥちゃんが描いた絵本だ!」

「姫も見るか? 新作だそうだ」

「――あ、ふふ」

「気づいたか」



少女が思わず笑みをこぼした理由を、ユーリは知っている。



「やっぱり、絵本の世界でもふたりは仲よしなんだね」

「だな」




やさしい眼差しの先には、いつもあのふたりがいる。



「クゥちゃんたち待ってるから、いこう魔王様」


「そうだな。待たせたらクオイがうるさい」





手をつないで、部屋を後にする。きっと、今日の夕食もにぎやかだ。


7/23/2022, 12:01:03 PM

お題《花咲いて》


どんな闇さえも包み込んで、夜明けに変えていく。


その笑顔が曇ることのないように。




「ひめひめー! 会いたかったよ〜」

「わっ」


暁の城への訪問者――西の地方に住まう砂糖菓子工房を持つ少女は、リシュティアを猫のように可愛がり、代々城へ砂糖菓子を献上し、数多の地を駆け回る。


こう見えて、凄腕の少女なのだ。



「今日はどうしたの?」

「えへへ。なんでだと思う? ヒントはねぇ、あなたのそばにいる……あなたを溺愛するお兄さまたちよ」

「お兄さま?」


ちらりと少女は、ルシュラとクオイに視線をやる。



(でもひめひめは私のよ)



「……あー俺とルーくんのことだよねえ」

「もしかしなくても、そうだろう」



前も誰かに言われた苦い記憶がある。離れた場所で、少女とリシュティアを見守っていたふたりは、苦笑いを浮かべるしかない。



「ふふん、頼まれてたイチゴの宝石だよ、はいひめひめ」

「……きらきらしてる」


袋から取り出された砂糖菓子に、リシュティアは瞳を輝かせ――ルシュラとクオイを見る。


「クゥちゃん、ルシュ、ありがとう! 大切に食べるね」



部屋に、花が咲く。


彼女の笑顔は、春を呼ぶ。



「……まいったな」

「……ほんとうに」




彼女の笑顔は砂糖菓子。


7/22/2022, 11:42:17 AM

お題《もしもタイムマシンがあったら》


名言――迷言? クオイはリンゴマニアである。



今日も暁の城は平和だ。ルシュラが使用人が淹れてくれた紅茶を飲みながら読書をしていると、またまた扉が強く開け放たれる。


「ルーくん! 俺未来いきたい!!」

ルシュラは一瞬ぽかんとし、それはすぐため息に変わる。毎度の事ながら、クオイにはふりまわされる。そして――意味がわからない。

「どうして、その答えにいき着いたのか、その理由を言え」

「ええ〜」


ルシュラは努めて冷静を心がけながら、とりあえず話を聞いた(しかたなく)。



想像しよう、そうしよう。


やはり、クオイはクオイである。



「絶対未来のリンゴの木は、とってもとってもなくならなくて、すぐまた実がなると思うんだ! こーんなでっかいリンゴがあるんじゃないか?!」



スケッチブックにでかでかと描かれたリンゴをえんえんと見せられるし、身振り手振り説明してくれるが――ルシュラは興味がなかった。




リンゴにしか興味がないクオイの話は、ルシュラでも食わない。



Next