テーマ“太陽の下で”
芝生の上で寝転ぶと
横に影が落ちる
「また。こんなところで」
そう言ってボクの顔を覗き込む
女が居る。
「……」
ボクは、目を逸らす。
「此処、いい場所よね」
「………」
ボクは、目を閉じる。
隣に座ったような感触がする。
ボクは少し、間を空けるように移動する。
「なんで逃げるの」
間を詰めるように、近付いてくる。
せっかく、太陽の下で
日光浴をしているというのに
邪魔ばかりしてくる。
本当に、邪魔な女だ。
近付きたいのは、ボクじゃないくせに
相手にされないからって
ボクは、騙されないからな。
そうしてボクは、目を開けて
女の横をすり抜けるようにして
家へと帰る。
「またね、猫ちゃん」
ぞわりと背筋が凍りそうになる。
ボクは駆け出す。
太陽の日が降り注ぐ
眩しい。
それなのに、ボクの日向ぼっこは
邪魔された。
とてもとてもとても
不愉快極まりなかった。
テーマ“落ちていく”
信じていた。
ずっと。
ずっと。
「愛してる」
そう言ってくれていたのに。
…私では無かった。
隣りに居たのは。
1週間前まで、笑顔で隣りに居たのに。
今、隣で笑っているのは
私じゃない人。
白いドレス
白いタキシード
幸せそうに笑う二人。
赤ワイン頭上から掛けたいくらい。
その位の憎しみと恨みと執念。
どうしてここに私は居るの?
そっち側じゃないの?
「ユキネ、来てくれてありがとう」
白いドレスを身に纏った
「アスカ、おめでとう」
私はそう返す。
「あ、シュウゴさん、この子、私親友のユキネ。」
「ハジメマシテ」
私は笑顔を浮かべる。
彼は私から一瞬目を逸らし
「いつも、アスカがお世話になってます 」
そう笑いかけてくる。
「いえ、お世話になってるのは私の方です」
そう、笑顔で返す。
あぁ、腹立たしい。
今すぐ、その白い衣装を紅く染めたい。
赤ワインで。
…いや、赤ワインだからと言って
紅くは染まらないか。
「…これからも、アスカと仲良くして欲しい」
彼は目を逸らしながらそう言う。
「勿論です」
ねぇ、シュウゴさん?
言われた事無いでしょう?
アスカに
「愛してる」なんて。
今時珍しい、政略結婚。
そこに愛はない。
少なくとも、アスカは私を愛しているし
私もアスカを愛している。
私とアスカの関係を知っている
シュウゴさんは、目を合わせられないんだろうと思う。
昔見たドラマみたいに、結婚式場から連れ出したいけれど、流石に無理。
私の腕力と脚力じゃ、連れ出せない。
私は落ちていっても後悔はないけれど
アスカを道連れには出来ない。
落ちていくのは私1人だけで…。
(同性愛は難しい)
テーマ“夫婦”
11月22日
いい夫婦の日
って言うけれど、そもそも
“いい夫婦”とは何なのか。
外面だけが良い仮面夫婦なんてのもいるだろう
別居(単身赴任、出稼ぎ)してても仲がいい夫婦も居るだろう
其々、様々な夫婦が居るのに
いい夫婦の日なんてものがあるのが
謎。
ちなみに、11月22日に婚姻しても
本当にいい夫婦になれるか分からない。
あっという間に離婚する可能性もある。
まあ、記念日としては覚えやすいだろうが(嫌味)
そこに愛はあるんか()
テーマ“どうすればいいの”
そう大体、こう思った時点でもう
どうしようも無い。
学校の勉強も
「何が分からないのかが、分からない」
そう思った時点でもう
手の施しようが無いのだ。
基礎を理解していないのだから。
色々やる事が多くて
パンク寸前なのに
まだやるべき事が増えていく。
そうしていくうちに
「どうすればいいの!?」
そう叫びたくなる。
つまりはそう
「諦めが肝心」
まあ、諦めたら駄目な事もあるのだろうけど
諦めないといけない事も
抱え込んでいたら、いつか
本当にどうしようもなくなり
最悪な事を考え出す。
世の中なんとかなる。
なるようになる。
どうすればいいの?
そう言う前に
どうしたいのかを考えるべきだ。
テーマ“宝物”
昔の人は、まさかこんな物が
現代の人から“宝物”扱いされているなんて
露ほども思っていないだろう。
「家の庭掘っていたら、出てきたんだよ」
白髪混じりの男が厭らしい笑顔を浮かべながら言う。
「お?何だ?金目のものでも見つけたか?」
もう一人の男…こっちは完全に白髪になっているが、恐らく二人は同じ年齢だろう。
「金目の物かは分からんけど」
「なんだよ。わかんねぇのかよ。」
「でもきっと、名の知れた名手が作った代物に違いない」
一升枡程の大きさの木箱を取り出す
「汚い箱だな」
「まあ、箱はな。問題は中身だよ中身」
白髪混じりの男が、箱を開ける
中からは、茶碗が出てきた。
「黒い…茶碗?」
「焼き物の茶碗だ。俺はこういうの詳しくないから分からないけど、凄そうだろ」
「お、おお。」
白髪の男も、こういう物には疎い。
「然るべき所に見せたら、きっと凄い金額が付くだろうと思うんだよ」
「いや、でも名手が作ったものなら庭には埋めないだろ」
「そういうもんだよな、やっぱり」
「可能性は0では無いなら…」
「テレビのお宝鑑定番組に応募でもしてみるか?」
「何でも無かったら恥晒しだけどな」
なんて笑っていた、数ヶ月後
テレビに映り、自慢気に茶碗を語っている男達の姿があり、彼等は、有名になった。
…自らの親が作った、何物でもない
廃棄された茶碗を、テレビに依頼した残念な人たちと。
ま、値打ちがあるものだけが宝物では無いですし…と鑑定士たちに苦笑いされたとも。
流石に家が建っている所の庭は、家を建てる前に色々調べられているはずなので
年代物の何かが埋められていることは少ないと思われる。