蒼月の茜雲

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テーマ“宝物”

昔の人は、まさかこんな物が
現代の人から“宝物”扱いされているなんて
露ほども思っていないだろう。

「家の庭掘っていたら、出てきたんだよ」
白髪混じりの男が厭らしい笑顔を浮かべながら言う。
「お?何だ?金目のものでも見つけたか?」
もう一人の男…こっちは完全に白髪になっているが、恐らく二人は同じ年齢だろう。
「金目の物かは分からんけど」
「なんだよ。わかんねぇのかよ。」
「でもきっと、名の知れた名手が作った代物に違いない」
一升枡程の大きさの木箱を取り出す
「汚い箱だな」
「まあ、箱はな。問題は中身だよ中身」
白髪混じりの男が、箱を開ける
中からは、茶碗が出てきた。
「黒い…茶碗?」
「焼き物の茶碗だ。俺はこういうの詳しくないから分からないけど、凄そうだろ」
「お、おお。」
白髪の男も、こういう物には疎い。
「然るべき所に見せたら、きっと凄い金額が付くだろうと思うんだよ」
「いや、でも名手が作ったものなら庭には埋めないだろ」
「そういうもんだよな、やっぱり」
「可能性は0では無いなら…」
「テレビのお宝鑑定番組に応募でもしてみるか?」
「何でも無かったら恥晒しだけどな」
なんて笑っていた、数ヶ月後
テレビに映り、自慢気に茶碗を語っている男達の姿があり、彼等は、有名になった。

…自らの親が作った、何物でもない
廃棄された茶碗を、テレビに依頼した残念な人たちと。


ま、値打ちがあるものだけが宝物では無いですし…と鑑定士たちに苦笑いされたとも。

流石に家が建っている所の庭は、家を建てる前に色々調べられているはずなので
年代物の何かが埋められていることは少ないと思われる。

11/20/2022, 2:53:53 PM