糸井

Open App
1/20/2025, 8:49:49 AM

『ただひとりの君へ』

君と別れてから一体どれ程の時間が経ったのか分からない。けれど、もしもまだ僕の事を覚えているのなら。待っていてくれているのなら。

また一緒に笑い合ってもう一度一緒に歩んで行こう。我儘を聞いて貰った分、君の願いを叶えてみせるよ。もう僕達を分かつものは無いから。自由をやっと手に入れたのだから。


両方が会いたいと思った上で離れ離れになるのは避けたいので、ここに今から向かう場所を記しておきます。

この手紙が君の元に届く事を願って。
また君に出会える事を祈って。

1/18/2025, 12:26:05 PM

確かに広がる小さな私の宇宙。
それは小さくたって無限の可能性を秘めている。

未知を埋める為に、道を進んで行く為に。ずっと抱いてずっと一緒に未来へ歩んでいく。

『手のひらの宇宙』

1/13/2025, 12:42:48 PM

「ねぇ、次は何処に行きたい?」

端正な顔を崩しても尚美しい彼は、輝かしい笑みで私に聞いてくる。金色のさらりとした髪も相まって本当に眩しくて、見慣れている筈なのに一瞬固まってしまう。そんな私の様子も更に愛おしそうに見つめられている気がしたので、咳払いをして一拍置いてから

「…貴方と一緒なら何処だって楽しい。そんな旅の記憶は宝石のように輝いていて、全ての場所が魅力的に見えてしまうの。だからね、私、何処までも行きたいな」

と言って彼を見つめてみると、今度は笑みを隠しきれないようなほんのり赤みがかかった顔をしていて。それは私だけが見れる特別な貴方のようで、たまらなく愛しい。

「それじゃあ、僕に何処までも何時までも着いてきてくれるかい?」

という言葉と共に彼の差し伸ばされた手を取って、もちろん、と返事をすれば私達はまた次の目的地へと翔けていく。まだ見ぬ景色を二人で見る為に。

宇宙の果てでも二人一緒ならきっと全てが華々しく心に焼き付いて満たされて行くから。

『まだ見ぬ景色』

1/10/2025, 8:18:02 AM

夜空を駆ける無数の光。身を削っては離れ離れになりながら、ただ燃え尽きるまで闇を照らし続ける。

ひと時の輝きを放った後に降る星のかけら達は、手をどれだけ伸ばしても届かない場所から旅をして来る。きっとそれは想像もつかないほど果てしなく途方もない長い長い旅。

一体どんな景色を見て、どんな道を辿って来たのだろう。この地に降り立ったかけら達にはそんな記憶が詰まっているのかな。

『星のかけら』

1/9/2025, 1:54:03 PM

『Ring Ring…』

そっと彼の家の呼び鈴を鳴らすと、高く澄んだ綺麗な音が響く。私はこの音が好きだ。静かな森へ風に乗って木にぶつかりながら何処までも進んでいくこの音が。それに…。

近づく足音がした後、ドアが少しくぐもった音をたてて開く。鈴の音は彼に繋がっているのだ。

「いらっしゃい。いつもありがとうね」
「いいえ、私の為でもありますから。今日もお邪魔します」
「うん、お茶いれて来るから座って待っていて」

部屋の中に入るとふわりと暖気に包まれる。此処には彼の作る薬を代わりに売買する為に通っている。彼がたった一人で、しかもこんな森の奥で薬を作り続ける理由はずっと分からない。

「はい、どうぞ。今日は緑茶だよ」
「わぁ、良い香り」

手にすっぽりと収まるカップから熱が染み込んでくる。ふぅーっと冷ましてから飲むと今度は中から幸福で満たされてゆく。

「…美味しい。これも自家製なんですか?」
「ふふ、いつも本当に美味しそうに飲んでくれるから嬉しいよ。うん、これも僕が育ててる子達の一部だね」
「薬の質も何処より高いと、こんなに美味しいお茶も作れちゃうんですね」
「うーん、なんだかちょっと違う気がするけど…」

お茶が飲み終わるまで他愛ない話をし続ける。彼は自分の事は全く話したがらないけれど、なんて事ない話ならずっと付き合ってくれる。ちなみに、薬の事なら尚のこと教えてくれる、が、止められなくなるから要注意だ。

質問や言葉を躱される度、途方も無く大きな壁を感じる事も多い。それでも、受け入れてくれる限り、綺麗な音も神秘的な森も美味しいお茶も味わっていられる限り。彼と話せる限りは、ずっと通い続けていたい。

それが出来るなら私は、何も知らないままで良い。
この時間を壊さないように守り続ける為なら。

Next