私は君に愛を注いだ。それは過去形ではなく現在進行形であり君へ行動で愛を伝えている。
君は私が君へ愛を注ぐ前から私へ愛を伝えてくれていた。そして君も現在進行形である。
そんな私たちの今日を良ければ覗いていってください。
金曜日だと言うのに今年最後のテスト。週終わりのテストは想像以上につらくてこの金曜日のために今週は勉強以外に何かした記憶がなかった。今年のラストチャンス。だからこそ教科前の少しの時間も復習のために教材を読み込む。すると君が見せてって私の元へ来る。隣に並んで2人で見たいページの争い。無駄な時間だけど、私にとっては無駄な時間じゃなかった。
昼休み。私は最後の教科に向けて復習をする。人が2人くらいたかって来てもなお張り詰めた空気は変わらない。点数を少しでも伸ばし…うっ、か、肩が重い…
「ねぇ、ちょっと!なんでそんなに体重かけてくるの!?肩痛いんだけど!?」
「えーなんとなく。身長縮めばいいかなって」
「私の身長これ以上縮めてどーすんのよ?」
「身長ちっちゃい方が可愛いよ」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?チビっていじりたいだけでしょ?ってか勉強したいの。邪魔しないで?」
私が1人で教材を読み始める。すると君は俺も見たいって後ろから手を回してくる。ふわっと香る胸を締め付けるような君の匂い。上を見上げれば君の顔が見える。少し後ろに反らせば君に寄りかかれる。そして私の目の前には回された君の腕。つまり何が言いたいのか、バックハグもどきです。今でも鮮明に覚えている。心臓が口から出そうな程鼓動が高鳴ったこと。みんながいるのに…金曜日だから甘えモード増しやがってこんにゃろー。いつもならステイをかけるのに今日は許しちゃったじゃん。
掃除。担当の先生がいなくてでも教室掃除を手伝うのも億劫で。近くの掃除場の人たちと交流しながら時間を潰していた私たち。私が先生に捕まって本日のテストの話をしていた。するとまたしても君がやってくる。ムズムズ。珍しく君がムズムズしている。何か話したいのだろうか。君が近づいてきて私が君の腰に手を回す。右耳に私たちだけの秘密話を囁く。ちょうどチャイムが鳴り教室へ帰る。その時に君が私の両腕を掴む。
「ちょっ…離してよー」
「えー、無理ー」
君の手の温もり。私はこんなに容易く君に触れていい存在なのだろうか。
放課後。君と私は居残りをする、自主的に。君と隣の席。机をつけて君にちょっかいを出す。鼻を通り抜ける君の匂いが忘れられない。君の頑張っている横顔にフィルターがかかって幸せなくらい輝いている。
「今日歩き?一緒に帰ろ…?」
「ん」
たった一言でもすごく愛おしくてたまらない。結局君と一緒に帰ってきてすごくすごく幸せな1日だった。テスト期間で十分に構ってあげられなかったけど、君にたくさん愛を注いで挽回していくつもり。ごめんね、大好きだよ、許してね。
題材「愛を注いで」
心と心。繋がればそれは運命だと感じる。しかし離れると再び近づくことは難しい。見えないもの。誰が何を考えているなんて分からない。そのくせそこに確かに存在している。そして距離なんてモノすら存在する。離れたり近づいたり、まるで目まぐるしく変化する日々のように今日も君と心が通い合う。
題材「心と心」
あ…まただ。君が他の子といると増していく怒り。君が私に気づいてくれない悲しみ。勇気の出ない自分への腹立たしさ。全てまとめてこれは私のエゴ。自分だけを見て欲しいという独占欲と自由でいて欲しいという希望。エゴを通り越したわがままなのかもしれないな。君は悪くないのに君が憎(いとし)いよ。私に優しさを振りまいてくれる時、また何でもないフリ。
家の中。2階にいるはずなのに1階からの怒声が響いてる。それは他でもない、私の父。怒りが向けられたのが母でも祖父でも私でも構わない。私には関係ないのだから。庇うことに疲れたから、人を助ける正義に嫌気が差したから自分の部屋に引きこもって何も出来ない出来損ない。それでもいい。モラハラなんてとっくの昔に気づいてる。私にとって親は絶対的存在だから逆らえない。だから今日も大人しくヘッドホンをつけてかける大音量の音楽。何でもないフリ。
「やったー!先生、私この教科で学年1位とったんだよー?やったーやった!」
また周りの誰かが喜んでいる。点数を公開することは誰かと比較されるということ。
私の順位は全て1桁内に収まっていて学年順位は3本指にはゆうに入っている。しかし私が公開しても「それを取ること」が当たり前であの子のように褒められることは無い。そして、また誰かに負けてしまった敗北感に苛まれる。
常に人の上に立っていなさい。と願いが込められて付けられた私の名前。私が1位でなければ意味を成さない名前。家へ帰ると兄と姉とまた比べられるのだ。わかっている、それでも
「おめでとう。すごいね、本当に尊敬してるよ」
って伝えてまた何でもないフリ。
題材「何でもないフリ」
3年間。それは保育園の時の遊ぶためのお友達に会いに行くというような日々じゃない。小学生の時の協調性を強いられる日々でもない。そう、私にとってこの3年間は本当に大事な日々だった。
3年間。とは言ったものの、厳密に言えば2年間。クラス替えを経て作られたモノだった。見慣れた友達がいれば初めましての人だっている。いわば互いにただのクラスメイトにしかすぎないということ。それでもクラス替えをしたため、後の2年間を共にすることは約束されていた。
私たちが共同生活をしていく教室では毎日新しいことを共に学び、喜びや苦しみを共有し合った。行事だって私たちが主体となって金賞を勝ち取った。半年も経たぬうちに私たちに絆が芽生えていたのだ。今までの指示に従うようなつまらない日々とは違った新たな世界。私たちが創りあげていくモノ。
決して楽しい事ばかりではなかった。協力もすれば競い合いさえする。傷つけ合っては慰め合う。誰よりも繊細な「今」だからこそ私たちを理解できるのは私たち自身しか居なかった、お互いに。私たちにしか分かり合えないモノが絆をより強めた。
もうこのクラスで過ごす日々は残り少ない。ましてや受験もあるのだからお互いに関わることもやがてなくなるだろう。まだ笑い合えているこの日々がとても愛おしくて大切で仕方ない。卒業したくないと語り合うのもきっと今しか出来ないのだろう。卒業。受験よりも私たちにとって大きな存在。苦楽を共にした「仲間」との別れなのだから。皆が集まることもあるのかどうかも分からない。卒業するまでに私はきっと皆に伝えると約束する。ありがとう。誰よりも皆が好きだった、と。
題材「仲間」
「今日は帰るね」
「えっ!?帰るの…?」
「…帰っちゃダメなの?」
「…」
「だって私がいても絶対勉強しないじゃん!」
「いやー?するつもりだったのに」
「嘘つき笑」
君とまた同じ会話の繰り返し。私だって本当は君と一緒にいたいけど受験生だから私も1人で勉強したいの。6校時目の自習時間。他愛のない会話。
「できた!」
君が描いていた絵が出来上がったらしい。面接の原稿も考えずに本当に呑気な人。
君が今にも寝そうな私の腕を掴む。
「寝たらだめだよ」
そう言って手を握ってくる。いつもは冷たいはずの君の手がすごく温かくて落ち着いた。私は今日もまた君のことが好きだって実感する。抑えなきゃいけないはずなのに気づいたら好きだって叫んじゃいそうなくらい、惚れちゃったんだよ。
今日は一緒に帰れなかったけど、テストが終わったらまた一緒に帰ろうね。その時は手を繋いで…なんてわがままかな?
題材「手を繋いで」