椋 muku

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あ…まただ。君が他の子といると増していく怒り。君が私に気づいてくれない悲しみ。勇気の出ない自分への腹立たしさ。全てまとめてこれは私のエゴ。自分だけを見て欲しいという独占欲と自由でいて欲しいという希望。エゴを通り越したわがままなのかもしれないな。君は悪くないのに君が憎(いとし)いよ。私に優しさを振りまいてくれる時、また何でもないフリ。

家の中。2階にいるはずなのに1階からの怒声が響いてる。それは他でもない、私の父。怒りが向けられたのが母でも祖父でも私でも構わない。私には関係ないのだから。庇うことに疲れたから、人を助ける正義に嫌気が差したから自分の部屋に引きこもって何も出来ない出来損ない。それでもいい。モラハラなんてとっくの昔に気づいてる。私にとって親は絶対的存在だから逆らえない。だから今日も大人しくヘッドホンをつけてかける大音量の音楽。何でもないフリ。

「やったー!先生、私この教科で学年1位とったんだよー?やったーやった!」
また周りの誰かが喜んでいる。点数を公開することは誰かと比較されるということ。
私の順位は全て1桁内に収まっていて学年順位は3本指にはゆうに入っている。しかし私が公開しても「それを取ること」が当たり前であの子のように褒められることは無い。そして、また誰かに負けてしまった敗北感に苛まれる。
常に人の上に立っていなさい。と願いが込められて付けられた私の名前。私が1位でなければ意味を成さない名前。家へ帰ると兄と姉とまた比べられるのだ。わかっている、それでも
「おめでとう。すごいね、本当に尊敬してるよ」
って伝えてまた何でもないフリ。

題材「何でもないフリ」

12/11/2024, 10:37:57 AM