結城斗永

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1/3/2026, 7:15:52 AM

二つの未練と二つの決意

ゴールは見えていたはずなのに
道の途中でその姿がかすんでいた
頭重な構想が一人歩きして
肝心の足は露も動かない

少し進めば矛盾を感じ
後ろを向いたまま立ち止まる
手元の地図は靄のように曖昧で
引き返しては彷徨っていた

不格好でもいいから
足を上げて一歩でも前に進みたい
ひとつでもいいから
ゴールに辿り着けたと喜びたい



興味と関心が降り積もる山は
登れば登るほど高くなっていく
登るのをやめても積み上がる山は
途方もなく高くなっていった

半ばに目印を立てたまま
忘れられた道の多いことよ
山が高くなるのはいいことだ
だがせめて手が届く高さに

できる範囲でいいから
腕を伸ばして高く旗を掲げたい
山の中腹でもいいから
ここまで登ってきたぞと叫びたい



終わらないものに囲まれながら
終わらせることを放棄してきた
今年こそはと心に決める

さぁ 思い立ったが何とやら
一文でもいい 筆を動かすんだ
一枚でもいい 頁をめくるんだ


#今年の抱負
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

【あとがき】
 今年の抱負。
 私生活の抱負はひとまず脇において、『文章』という点で考えてみたら、

・中途半端で投げ出した短編を終わらせること
・積みすぎた積読本を少しでも読み進めること

 の二つでした。
 少しずつでも手を動かしながら、個人的には具体的な目標を立てて進めていきたいと思います。
 できることからコツコツと。

1/2/2026, 1:03:25 AM

『初夢のメモ』

※昨日の夜に見た初夢の内容です。
脈絡はあるようでないようで、何か意味を見出そうとすれば無理やりにでも、物語は作れそうな夢。ひとまず覚えているうちに内容をそのまましたためます。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

私は役目を終えた古い小学校の壁をよじ登っていた。校舎の端の非常階段は灯台のような細長い円錐台の形。
かつて通っていた学び舎ではないが、どこか懐かしい。
地域のボランティアが労いと感謝の気持を込めて掃除をする中、子どもたちは校舎の壁に太く長い竹のはしごをかけて屋上を目指している。齢の頃は十に満たないくらいだろうか。必死さはなく、遊びの延長のような気軽さがある。
私も彼らと一緒に屋上に向かう。自分の歳は分からないが、恐らく彼らよりは少し大人だ。

屋上に着くと、先に着いていた子どもたちが木組みの櫓を作っていた。櫓と言っても切妻の屋根組だけを取り出したような作りをしている。
屋根の斜面に座る子ども、切妻の下で追いかけっこをする子ども、太い丸太を肩に担いで運ぶ子ども。

ふと場面が変わって、バスの中で揺られている。
扉側の一番前、私が最も落ち着く席。
足元には十本ほどのビニール傘の束。そのなかの一本だけが真っ赤だった。そう言えば抱えて乗ってきた気がする。これまでどこかに忘れてきてしまったものだろうか。
降りる時になって整理券を取っていないことに気づく。
どうやって降りたのかは定かじゃないが、降りるときにはまた傘を忘れてきた。あの赤い傘も。

気づけば近代的な施設。自然光が入り込んできてとても明るい。パステルカラーの色調と、屋根に開いたまん丸のガラス窓。
どうやらショッピングモールの中層階のようで、吹き抜けを見渡しながら行き交う人混みのなかで立ち止まっている。
階下には地下鉄の駅があり、上の方には図書館がある。
私は上を目指さなければと本能的に感じた。

人混みをパルクールのようにすり抜ける。
すれ違いざまに誰かから白い皿を受け取る。
皿にはスライスされた青りんごが数枚に、溢れんばかりの果汁が湧く。
この果汁をこぼさないようにと、体をくねらせ宙を舞う。

大人の頭上を飛び越えて、最上階の図書館にたどり着く。
そこには児童書のコーナーしかなく、まるで幼稚園の一室のような空間で幼い子どもたちが絵本を読んでいる。
リンゴの汁はまだ湧き続けている。
零れなくて良かったと安堵する。

そこで途切れた私の初夢。
意味を見出せそうだが、それは野暮な話。

#新年

12/31/2025, 10:34:43 AM

日々、私の拙い投稿をみていただきありがとうございます🙇

気づけばあっという間に今年が終わろうとしています。

投稿を始めたのが今年の8月中旬。

時折くじけそうになった時も、書けなくなった時期もありました。

それでも投稿を始めてからというもの、世界を見る目が少しだけ変わり、毎日が新しい刺激に溢れていたように思います。

♡や皆様の紡ぐ投稿に助けられながら、こうして年の境を迎えられることに、感謝でいっぱいです。
いつも本当にありがとうございます✨️

年が変わっても何が変わるということはありませんが、気持ちを新たに物語を届けていければと思います。
これからも応援いただけると嬉しいです。

昨日投稿した『時の狭間の預かり所』が年内最後の物語となりました。

過去の自分を振り返り、すべてを肯定し、未来につながるお話です。
自分に自信が持てなくなった時には、一度手のひらを眺めてみてください。

確実に大きく成長している自分の手には、これまで触れてきたもの、愛してきたもの、愛してくれた人の思い出がたくさん乗っているはずです。
なかには苦労や苦悩、泣きたい夜もあったでしょう。しかし、それも手のひらにはしっかりと乗っています。
あなたを成長させてくれた重みのひとつです。

皆様の迎える年が幸多き一年になりますように。まだまだ寒い日は続きます。お体温かくして、よいお年をお迎えください🎍

それではまた来年お会いしましょう🙇

2025.12.31 結城斗永

#よいお年を

12/30/2025, 11:54:38 PM

※この物語はフィクションです。登場する人物および団体は、実在のものとは一切関係ありません。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
タイトル『時の狭間の預かり所』

​ 二〇二五年、最後の夜。小さなデザイン会社に勤める僕は、ようやく最後の仕事を終えて帰路についていた。ここのところ、起きている時間のほとんどを事務所で過ごしている気がする。もうしばらく帰省もできていない。
 街一番の繁華街は、帰宅を急ぐ者や、新年を待ち侘びる若者たちの熱気で溢れかえっている。巨大な街頭ビジョンにはカウントダウンの文字が踊り、ネオンと電飾に彩られた街はまるで星粒のように煌めいている。
 だが、僕にはその光景が、つい先程入稿を終えたパチンコ屋の派手なチラシのように見えて頭が痛くなる。

 入社して四年。期待していたようなクリエイティブはなく、ただ用意されたフォーマットのうえに、クライアントの要望という名のアクリル絵の具を塗りたくるような仕事。尽く上塗りされた絵の具に、自分の地色はとうに見えなくなっていた。

 ショーウインドウに、僕がこの業界に憧れたきっかけになったハイブランドの広告を見つける。細部に目を凝らせば凝らすほど、洗練されたこだわりが見えてくる。
「こんなはずじゃなかったのにな……」
​ 僕は自分の手をまじまじと見つめる。何も掴めていない空っぽの手はとても小さく見えた。

 喧騒から逃げるように裏路地へ身を潜めると、辺りは急に薄暗く、静かになった。
​ ふと、雑居ビルの影に淡い光がぼんやりと浮かんでいるのが見えた。足が自然と吸い寄せられていく。
 光の正体は簡素な露店だった。雑多に品物が並ぶ中に質素な格好をした老人がひとりだけ座っている。
​「いらっしゃい。忘れ物を取りに来たのかい?」
 老人の言葉に僕は首を傾げる。
「……忘れ物?」
 顔を上げると軒先の看板には『時の狭間の預かり所』とあった。
「人は気づかないうちに、思い出やら理想みたいなものを落っことしちまうのさ。俺はそんなのを拾っては、こうして持ち主が現れるのを待ってる……」
​ そう言って老人が取り出したのは、深い紺碧の生地に光の粒が瞬く一枚のストールだった。
​「あんたの落とし物はこれかな……」
 そのストールに見覚えはなかったが、自然と手を伸ばしたくなるような感覚があった。
「預かり期限は今年いっぱいだ。あんたが持ち主だと分かれば、俺も快くお返しするよ。ただね――」
 老人が不敵な笑みを浮かべながらギロリと僕の顔を覗き込む。
「心の底から望まなきゃ、こいつも星の彼方に消えちまうだろうさ」
​ その時、低い鐘の音が遠くから聞こえてきた。どうやら除夜の鐘が鳴り始めたらしい。
 
​ 僕はストールに手を伸ばす。その瞬間、生地に触れた指先から、幼い頃の記憶が流れ込んでくる。画用紙いっぱいに走るクレヨンの線。道端でキレイな石を見つけては拾っていた頃の高揚感。
 十回、二十回と鐘の音が響くたび、忘れていた思い出や抱いていた夢が蘇り、心臓の奥で小さく音が弾ける。
 ストールも呼応するようにキラキラと輝き始める。その姿はまるで夜空の星のようだった。

 それぞれの思い出はとても美しいはずなのに、混ざり込んでくる現実がそれらを掻き消していく。
 自分の考えなんて捨てろ。フォーマットに従えばいい。納期を守れ。時間とコストはできるだけ削れ。
 鐘は容赦なくなり続ける。そのたびに低い震動が夜の空気を伝い、僕の胸を揺らす。
 
 表通りが騒がしくなる。年明け三十秒前のカウントダウンが始まった。
「あんたが手放すってんなら、それでも構わんよ……」
 老人がまた口元を大きく歪めて笑みを浮かべる。
​ カウントダウンの数字が減るほどに、通りの賑わいが勢いを増していく。手のひらにじっとりと汗が滲む。

 その時、ふと言葉が舞い込んだ。
 ――あんたの手、いつの間にこんなに大きくなったのかしら。
 何年か前、帰省した時に母に言われた言葉だった。
 クレヨン、石ころ、絵筆に色鉛筆、ペンタブの感触。これまで積み重ねてきたものが、次々と手のひらに集まっていく。
 ――このまま終わりたくない。

​「もう一度夢を見たい!」
 夜の静寂に声は思いのほか響いた。老人の眉がピクリと動く。
「僕の魂が美しいと信じるものを、もう一度この手で形にしたい!」
​ 叫んだ瞬間、ストールが夜の闇に溶けるように透き通り、僕の肩へと舞い上がった。僕はそれを両手で受け止め深く纏った。

 百八回目の鐘が鳴る。街の賑わいは最高潮に達した。
 お祭り騒ぎの中で、僕だけはまるで星空に包まれるように穏やかな気分だった。深く息を吸い込むと、夜の澄んだ空気が肺を満たし、心の底から希望が溢れてくる。

 遠くで上がる新年の花火が、冬の空を彩る。
 もう、迷いはなかった。
 僕はカバンからスケッチブックを取り出し、冷たいコンクリートの上に座り込んだ。
 まだ誰も見ていない新年の光を捕まえるように鉛筆を走らせる。僕にしか描けない世界をこの真っ白なページに残していくように。

#星に包まれて

12/29/2025, 1:44:20 PM

タイトル『広すぎる余白』

​静かな終わりとは、必ずしも静かな始まりを意味しない。かといって、騒がしいわけでもない。

書類ひとつなくきれいに片付いたデスクを前に、私はこの会社で勤めた三十余年を振り返っていた。
さほど大きな仕事を成し遂げてきたわけではないが、こうして定年まで勤めることができたことは誇らしく思えた。
​「みんな、ちょっと手を休めて」
​年下の上司である佐々木が二度軽く手を叩き、同僚の注意を惹くように高く通る声を響かせた。
​キーボードを叩く音が疎らに途切れ、数十脚の事務椅子が軋む。
​佐々木が私に向かって手招きをする。まるで進捗報告を怠って呼ばれる時と同じ表情だった。
私は心の中で言葉を整理しながら、課長のデスクの前まで歩みを進める。私が同僚の方を向き直ると、佐々木が私の肩を叩きながら言葉を発する。
​「えぇ、本日をもって、渡辺さんが定年退職を迎えます」
​入れ替わりの激しい営業の現場には、私が入社したころの話など知るものは誰もいない。ほとんど定型のような挨拶を短く済ませ、感謝の言葉は最小限に、思い出話は一切混ぜなかった。
​「お疲れ様でした」
​佐々木から手渡された花束は、春の香りがした。一斉に沸き起こる拍手に送り出されるように、部署を後にする。
​エレベーターホールへ向かう背中に、誰かが電話を取る声が聞こえ、キーボードを叩く乾いた音が再開される。
振り返る理由もなかった。

​会社を出ると、冬の冷たい風が頬をなでた。
まだ夕方には少し早い、午後四時過ぎ。
帰宅ラッシュにはまだ間があり、地下鉄のホームに滑り込んできた電車には空席が目立っていた。
​いつもならドアの脇に立ち、吊革を握ってスマホの画面を眺める時間だ。だが私は、吸い込まれるようにシートの中ほどに腰を下ろした。座面から伝わる微かな振動に、膝の上に乗せた花束の包装紙がカサカサと音を立てる。
​ふと顔を上げると、目の前の吊り広告が目に入った。
『第二の人生、自分らしく』
『定年後の資産運用相談会』
文字が大きく、やけにくっきりとして見えた。
 ――第二の人生……か……。

家の​最寄り駅を降りると、居酒屋の看板はまだ消えたまま。近くのカフェはパソコンを開く学生や若者でごった返し、どうにも入りづらい雰囲気だった。
​酒を飲むにしても、茶を飲むにしても、そこで何をして時間を潰せばいいのか分からなかった。

​「ただいま」
​玄関の扉を開けると、甘い醤油の煮える香りが漂ってきた。
​「お帰りなさい。お疲れ様でした」
​キッチンから顔を出した妻の和子は、いつも通りのエプロン姿だった。食卓にはいつもより豪華な出前の寿司と一緒に、私の好物である肉じゃがが並んでいた。
​「お父さん、お疲れ様」
​大学を卒業して以来、自宅で公務員試験の浪人生活を送っている娘の美咲が、厚手の参考書を膝に乗せ、リビングのソファから小さく顔を上げた。
​「……ああ。美咲、就活は順調か?」
​私が不器用に問いかけると、美咲のページをめくる手が一瞬だけ止まった。冷蔵庫の音がリビングに低く響く。
​「大丈夫。ちゃんとやってるから」
美咲は小さく笑いながら​それだけ言って、視線を参考書に戻した。和子が「ほら、冷めないうちに食べましょう」と割って入る。

食卓での​話題は、明日からの天気の崩れや、さっきテレビでやっていた健康番組の内容へと流れていった。
箸が進み、寿司桶の底が広くなっていく。咀嚼する音と、テレビから聞こえる声だけが、広いとは言えない部屋を満たしていた。

​食事が終わる頃、美咲がふと顔を上げた。
​「明日からゆっくりしてね」
和子も、労うように頷いている。
私は、自分の中に澱のように溜まった『何か』を言葉にしようとして、結局、喉の奥で飲み込んだ。
​「そうだな」
​食器を片付けようと立ち上がると、和子に「あなたは座ってて」と制された。

​湯船の中で自分の手足を見つめながら、明日、この身体をどこへ運ぼうかと考える。
考えるほど、視界は立ち上る湯気のように、白い靄に包まれていく。

​布団に入って天井をただただ見つめる。
仕事のことを考えなくていい夜は、静かになるはずだった。しかし、空っぽの頭を血液が流れていく音が、耳鳴りのように響き渡る。
耐えかねて、​枕元に置いたスケジュール帳を開く。
昨日までのペン跡でざらついた質感は、今日を境につるんと平坦に変わる。

明日から、この広すぎる余白に何を書き込めばいいのか。
公園の散歩か、図書館か、あるいは……。
考えがまとまらず​手帳を閉じ、電気を消す。

美咲が参考書をめくる音も静かに止んだ。
隣では、和子が先に寝息を立てている。
私も静かに、瞼を閉じることにした。

#静かな終わり

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