ノーネーム

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9/21/2022, 6:01:43 AM

自分の中にある大事にしたいもの

それを守る為に
捨ててきたもの、諦めたもの、

頭を下げて、恥もかいて、嘘もついて、
それでも足りないなら命まで懸けて、

もう、無理かもしれない
そう思っても
辛い、と口にしてしまえば
涙が止まらない事を知っているから

大丈夫、とせめて強がって
震える一歩を今日もなんとか前に出して


どうかそんな日々を
いつか笑って話せる時がきますようにと

9/7/2022, 6:03:23 AM


時を告げるはずの時計の針は
いつまでも止まったまま
ただそこにあった

明日取り壊される家の中、ただ静かに

この場所が好きだった
古い日本家屋、縁側に寝そべる野良猫
畳の匂い、いつも綺麗な仏壇と兵隊さんの写真
風に揺れる風鈴、頭を撫でるしわくちゃな手
そして、あの時計

苦労してきたんだなって思った
あまりに顔をくしゃくしゃにして笑うから
あまり字を書けない人だったけど
器用で、料理上手で、とにかく世話好きで

優しい人だった、僕は皺一つない
ほんと愛想悪いガキだったのにさ
いい子だね、なんて

救われてたんだ、なのに


僕はあの人を救えなかった


都合よくしょうがないと呟いた奴も
一緒に連れてってと思ってしまった僕自身も
ますます嫌いになった


少しだけ皺が増えた僕は
今も願い続けている

神様も天国も信じてないけど
どうか、どうか
報われますようにと

9/5/2022, 12:27:15 AM


絶え間なく降り注いでいた
夢とか希望とかきらめきめいたものが

音を奏で、きらきらと

それは誰の為でもなく
僕の為だけにと疑わなかった日々が懐かしい

目一杯浴びて
びしょ濡れになったって嬉しくって

小説家になりたかった、表現は苦手だけど
天才になりたかった、努力は嫌いだけど
みんな幸せにしたかった、
僕は幸せじゃないけど

それが叶わないと知っていても
画用紙からはみ出ても構わず描いた

それを見て笑ってくれる大人がいて
はしゃいでいた、楽しかったんだ

現実逃避だったのかもしれない
でも僕にはそれで丁度良かった



そのまま居れたら良かったよな

何も知らないまま



8/27/2022, 3:25:57 PM


街灯も届かない、雨の音しか聞こえない
路地裏のような場所で

建物の隙間から漏れる繁華街の灯りを
ただぼーっと眺めては雨に佇む影が一つ

闇に紛れるように黒いフードをかぶり
薄っぺらい本を一冊、傘代わりに開いていた

それは心の中そのものを書き溜めたある男の物語
名作とは程遠い、所詮自己満足の殴り書き

それでも一番大事だった

ページをめくるたび、
濡れて、破れて、溶けて排水溝に流されていく

誰にも知られる事もなく、誰の記憶に残る事もなく
この体も一緒に溶けて流れてしまえと思った

濡れに濡れて冷えてそれでも
雨はこの体を弾いていく
熱を作ろうと震える鼓動が雨の音よりうるさくて

もういいよ もういいからと
握りつぶしてしまいたかった

生きようとするこの体が
うっとおしい
綺麗に流れていった心が
羨ましい

でも、
どうせ諦めても消えないなら
どうせいつでも流せるなら

せっかく雨に流したのに
ほら、また元通りだ
空っぽになったはずの心の中が
また疼きだす

一つ書きたい物語ができてしまった

次は誰かの心に残るような綺麗な物語を


8/17/2022, 2:58:32 PM


案外あっさりと捨てられる性格だった
昔からそう、綺麗好きじゃないけど

嫌になって、忘れたくて捨てた訳じゃない
役割を終えただけ、愛着もそこそこに、と

だから後悔はなかった
何を捨てたのかももう覚えてないほどに

目に見えるから手に取って
感触があるからくしゃくしゃに丸めて

そうして気付いた
物なら簡単だっただけの話しだって事


いつまでも捨てられないものなんて
僕の心の中にはごちゃごちゃ溢れているよ

目にも見えない、感触もない、
こんなに捨ててしまいたいと思うのに

たまに愛着なんてものも
混ざってくるもんだから

どうしようもないよね、ほんと

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