時を告げるはずの時計の針は
いつまでも止まったまま
ただそこにあった
明日取り壊される家の中、ただ静かに
この場所が好きだった
古い日本家屋、縁側に寝そべる野良猫
畳の匂い、いつも綺麗な仏壇と兵隊さんの写真
風に揺れる風鈴、頭を撫でるしわくちゃな手
そして、あの時計
苦労してきたんだなって思った
あまりに顔をくしゃくしゃにして笑うから
あまり字を書けない人だったけど
器用で、料理上手で、とにかく世話好きで
優しい人だった、僕は皺一つない
ほんと愛想悪いガキだったのにさ
いい子だね、なんて
救われてたんだ、なのに
僕はあの人を救えなかった
都合よくしょうがないと呟いた奴も
一緒に連れてってと思ってしまった僕自身も
ますます嫌いになった
少しだけ皺が増えた僕は
今も願い続けている
神様も天国も信じてないけど
どうか、どうか
報われますようにと
9/7/2022, 6:03:23 AM