街の明かりに誘われて羽虫が一匹飛んでいた
闇と光の間をゆらゆらと
彷徨っているのか強がってるのか
それでも器用に飛んでいた
ここは自由な世界だよ
行きたい所で生きていいのだと
教えられた記憶がある
そんな世界で
誰かは自分の正義の為だけに銃口を向け
誰かは涙を流し花を手向け
誰かはアレのせいだと怒りをぶちまけ
誰かは何も出来ずたらればで嘆き
誰かは見えない所で薄ら笑い
誰かは変わらず日常に身を置く
さて 僕はどれだろうか
それとも どれでもないのだろうか
街の明かりが消えて 空が静かに目を覚ます頃
結局僕は分からないまま
空はいつもと変わらないまま
今日もまた一日が始まる
七夕飾りになれなかった笹が
カサカサ乾いた音で揺れていた
どんよりと曇った日暮れ時
どうやら今年もあの二人は会えないらしい
それでも変わらず
お互いを愛し、待ち続けるんだろう
そんな事思う僕の側を
知らない二人が通り過ぎた
手を繋いだ後ろ姿 楽しそうな声
君と僕には無理だったね
君の耳飾りは短冊のように揺れていて
流れた涙は天の川のように綺麗で
でも見ないふりした
ずっと愛せる程僕は強くなかったし
待ち続けられる程君は僕を愛せなかった
お互い様だよ
憂いているのはあの笹と僕くらいで
後ろ姿を見送りながら
ただ僕は色も無い空にあの日を映した
一瞬だけ二つの星が見えた気がした
ごめんね、あんま思い出せないんだ
今じゃ声も、顔も、一緒に見ただろう景色も
きっとたくさん傷付けて
きっとたくさん助けてくれたんだろうに
友だちと呼んでいたあの人達は
その思い出の中に
僕を今も残してくれているんだろうか
思い出せないくせに忘れないで欲しいとか
なんて自分勝手だろうって自分でも思うけど
確かあの頃は
刻む季節の隣にはいつも友だちが居て
一緒に背伸びしてくれるから
夢とか希望を真っ直ぐに信じてた
今の僕の中には綺麗なまま残しておけないから
せめて友だちの思い出の中に居させて欲しいなんて
どうやら僕は
大人になっても弱虫に変わりはないらしい
今も昔も誰かにもたれかかってばかりだ
叶わなかった願い事は
今もこの星空の中彷徨っているのだろうか
数え切れない程願っていたから
それが本当に願い事だったのかも
ただのわがままだったのかも
もう忘れてしまったよ
もうすぐ七夕らしいから
「会えたらいいよな」
なんて見上げながら
らしくない事考えたりして
吐いた息が淀んでいたのは煙草のせいにして
滲んだ視界は星空が眩しいせいにした
あわよくば今も彷徨う僕の願い事達が
いつか誰かが星空を見て願う時
どうか側で綺麗に流れてくれますようにと
どうせすぐ忘れてしまうわがままを
どうしようもなく虚しい一人の夜
また願ってしまった
神様だけが知っているのは
この世界の始まりと地球が終わる日
生きる意味と死ぬ理由
星の数程ある理論と深海より深い哲学
ほんと人間じゃ敵わないものばかり
でもあなたは知らないでしょう?
僕だけが知ってる神様を
その神様を守る為ならほんとに僕
死んでもいいなんて本気で思ってるよ
笑えるだろ?
所詮人間は馬鹿だよ
あなたが一番良く知ってると思うけど
でもその馬鹿を創ったのもまたあなただ
あなたがどれだけ歪んだ正論を押し付けたって
ほら 振り払えるほど世界は美しい