ん?こんな曲も聴くんだ?
サブスク契約している音楽配信アプリ。
フォローしている友達が聴いている曲がおすすめされる項目で、普段その欄に並んでいるのとはジャンルが異なる曲が目に止まった。
これ、彼女がカラオケで歌ってたな。
映画館に一緒に行ったんだっけ。
目を閉じた時にだけ
会えるなんて信じない
あいたい
はなればなれの君へ
そうそう、こんな曲だった。
間奏がすごく長くて曲の途中までしか配信されてないから、この後が歌いたいのにって拗ねてたなぁ笑
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遠くへ引っ越してしまった友達。
物理的にも心理的にも、おそらくもう会うことはないであろう距離の友達。
彼との思い出を撫でたくなる日が定期的に訪れる。
連絡先は持っているけど、
突然メッセージを送っても変に思われるだろうなあ。
音楽アプリでたまたま見かけ、
タイトルに惹かれて再生した曲。
普段とは違う毛色の曲もたまには聴いてみるものだ。
再生履歴に追加されるとなんだかそわそわしたのは、
アニメーションのジャケットが見慣れないから
だけではないはず。
俺は君のアカウントに飛んでわざわざ再生履歴を見に行くけど、きっと君はそんなことはしていない。
歌よ翔べ〜
……君の心にちょっと届く程度に
はなればなれの君へ
Belle
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6:08 -1:53
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猫が怖い
今まで誰にも言って来なかった
初めて触ったときのあたたかさ
皮膚を1枚挟んだすぐ向こうに血が巡っているという感覚
SNSで流れてくるかわいい子猫の動画には癒される
いいねやブックマークだってすることもある
しかしいざ目の前にすると
その小さな体に収まる生命に恐怖を抱いてしまう
猫=かわいいを定義付けられない自分が非情に思えてしまい
想像上の猫にひっかかれた経験を思い描いて
トラウマがあるからちょっと苦手
ということにしている
たしかに猫はかわいい
しかしそれ以上に
怖いのだ
猫を飼っている親友もいる
彼女に懐く猫もまた
甘えん坊でかわいいと思えている
しかし
猫と共に暮らすのはおろか
自分が猫を愛でているイメージすら全く湧かないのである
私にとっての猫は
遠くから眺めるいきもの
画面越しでだけ
誰かの腕の中にいるときだけ
そのかわいい姿を近くで見せて
<気象庁は13日、東京地方で木枯らし1号が吹いたと発表しました。2020年以来、3年ぶりとなります>
2020年。もう3年も経つか。
季節が秋から冬に変わろうとしている、
祖母が死んだのはそんな時期だった。
当時の情勢の影響で最期を看取ることはできなかったし、
葬儀もずいぶんと簡素なものだった。
小さい頃、両親の墓参りの度に祖母と2人で歩いていた道。
1人で歩くのは気が滅入って、私の足は遠のいていた。
「風っていう漢字の中が虫みたいなのじゃなくて木……
これなんて読むの?」
「凩、こがらし。木枯らしとも書くのよ」
木枯らし1号という風の存在を教えてくれたのも祖母だった。
秋風と冬風の間で吹く風。
時期は10月半ば〜11月末。その他に気圧配置、風向き、風速が定められていて、その規定内の風が初めて吹くと木枯らし
1号とみなされる。
そんなに明確に条件を定めるなんて趣がないね
と言う僕に対し祖母は、
秋の終わりがはっきりわかるから好きなのよ
ずっと秋でいてほしいけど、秋風だと思ってたのが実は冬風でした、なんて一番悲しいもの
と言っていたのを思い出す。
3年ぶり。祖母がいなくなって初めて、秋の終わりを感じ取れた気がする。
祖母に今年の秋の話をしよう。
一緒に冬を迎える準備をしよう。
あそこのお花屋、まだ開いてるかな。
「また会いましょう、だって。めっちゃ距離感じるよなあ」
『3年間まともに目も合わせられなかった高嶺の花と最後に話せただけ良しとしとけよ』
「A組いったらもう長蛇の列できててさ。アイドルの握手会かと思ったわ」
『そのアイドルのファンの1人にしかなれなかったお前は、認知もされず卒業後の進路も聞けずに退散してきたってわけね』
「来年から何するんだろ〇〇ちゃん。都内でキラキラJDになっちゃうのかな」
『俺と同じ大学っていう可能性もあるよな』
「来週だっけ?引越し」
『そう、日曜。早い方が見積もり低く出せるって言うから』
「…………。でも〇〇ちゃんも地元に残るならまた会える可能性もあるよな。"また"会いましょうってことは、向こうも会う気はあるだろうから、」
『いやないね』
「おい」
『高校卒業っていう結構大きな分岐点で"また会いましょう"なんて抜かすやつは、もしまた会ったとしても"また会いましたね"で済ませるんだよ』
「えー、だったら"また"とか言って期待させんなよぉ」
『いいか?放課後に帰るとき、毎日顔をあわせるクラスメイトには何て言う?』
「……また明日?」
『毎年恒例のお正月特番の終わりの挨拶は?』
「また来年!」
『そういうこと。"また"が本来の意味を成すのは次の予定が決まってるときだけ。それ以外の挨拶ではただの常套句なんだよ』
『お前と高嶺の花子ちゃんはそれまでの関係ってことだ』
「じゃあ、来月から社会人になる俺と、大学生になるお前は、」
『何だと思う?』
「……また会いましょう」
『来週の日曜日に俺の家でまた会いましょう、だ』
(やっぱ寂しかったんだ〜!)
(お前絶対に新居荒らすなよ!?)
玉ねぎを粗いみじん切り、鶏もも肉を一口大にカット
鍋を中火で熱したら、油をひいて肉を炒める
焼き色がついたらお皿に移し、次は玉ねぎを飴色に
さっきのお肉とトマト缶
今日は酸味が欲しいから、トマト缶はイタリア産を選んだ
ニンニクと生姜でコクを
ヨーグルトでまろやかさを
ここまで来たらいよいよお楽しみの時間
クミンにカルダモン
色付けにはターメリック
チリペッパー、多めに入れてみようかな
私が感じるスリルなんか、
新しい味つけに挑戦したときくらいでじゅうぶん
かなう見込みのない恋心を煮込まなくてもよかったのにね
中火のまま20分
鶏肉の中に火が通るまで
ここはスリルを求めちゃだめ
お気に入りのお皿に盛り付けたらできあがり
いいにおい
2日目のカレーも美味しいけれど、
今回はすべて今日中に食べ終えてしまおう
酸いも辛いも、今日のうちに