「また会いましょう、だって。めっちゃ距離感じるよなあ」
『3年間まともに目も合わせられなかった高嶺の花と最後に話せただけ良しとしとけよ』
「A組いったらもう長蛇の列できててさ。アイドルの握手会かと思ったわ」
『そのアイドルのファンの1人にしかなれなかったお前は、認知もされず卒業後の進路も聞けずに退散してきたってわけね』
「来年から何するんだろ〇〇ちゃん。都内でキラキラJDになっちゃうのかな」
『俺と同じ大学っていう可能性もあるよな』
「来週だっけ?引越し」
『そう、日曜。早い方が見積もり低く出せるって言うから』
「…………。でも〇〇ちゃんも地元に残るならまた会える可能性もあるよな。"また"会いましょうってことは、向こうも会う気はあるだろうから、」
『いやないね』
「おい」
『高校卒業っていう結構大きな分岐点で"また会いましょう"なんて抜かすやつは、もしまた会ったとしても"また会いましたね"で済ませるんだよ』
「えー、だったら"また"とか言って期待させんなよぉ」
『いいか?放課後に帰るとき、毎日顔をあわせるクラスメイトには何て言う?』
「……また明日?」
『毎年恒例のお正月特番の終わりの挨拶は?』
「また来年!」
『そういうこと。"また"が本来の意味を成すのは次の予定が決まってるときだけ。それ以外の挨拶ではただの常套句なんだよ』
『お前と高嶺の花子ちゃんはそれまでの関係ってことだ』
「じゃあ、来月から社会人になる俺と、大学生になるお前は、」
『何だと思う?』
「……また会いましょう」
『来週の日曜日に俺の家でまた会いましょう、だ』
(やっぱ寂しかったんだ〜!)
(お前絶対に新居荒らすなよ!?)
11/14/2023, 9:42:43 AM