日差し
カーテンの向こう側
日差しが強く現れる
その光はまるでスポットライトのようで
照らされた人々はそれぞれ主をやどしている
ようだった
雲が光を遮った
眩しくて目が痛かったけど
微かに見える光をみた
雲の上は光の耐えない楽園のようで
晴れ女の生き神様が舞いを舞っているような
気がした
雲が通りすぎる
今度は僕の番だと言わんばかりに光りは
僕を見つめる
新しい物語が始まったような
そんな、日差しがただ僕を見つめてる
窓越しに見えるのは
限りなく灰色に染まる空からは冷たい
雫が降り注ぐ
窓越しに見えるのは暗い空
終わりなく続きそう
耳を澄ますと聴こえる
祭りで賑わう人の声
こんな灰色の元で愉快に宴をいそしんでいる
窓越しに見えるのは
窓の向こうに映る孤独な私
透けてかすんだその姿
まるで雨に飲み込まれたかのよう
久しぶりに故郷へ戻ったのに
また壁に閉じ込められた
限りなく灰色へそまる窓越しに見えたあの景色
私と空は一心同体
すなわち心の天気現している――
赤い糸
私の小指締め付ける赤い糸
ピンと張る糸 この先にはいったい
誰がいるのだろう 深紅の糸が心も縛る呪い
を呼び寄せるのならば共に幸せが訪れよう
呪いの名前は恋と言う
赤い糸のその先は恋の宮古
僕の小指に絡み付く赤い糸
足るんだ糸 この糸は私の身体を
ひくように運命の方へと連れてゆく
小指と小指の触れ合うその時
深紅の糸がミサンガの如く爆ぜたようだった
爆ぜた糸は恋を知る私の心同様で
そしてまた糸の如く
共に生きる約束結びつける
入道雲
【お盆】
今日はおじいちゃんのお墓参りに行く日。
ガタガタと揺れる車はまるで黄泉の世界に
向かっているかのようだ。
窓の外には大きな入道雲と眩しい太陽が
そこにいた。毎日変わらない空を見ると
飽き飽きする。
――――――――――――――――――――――
皆が真剣な顔で手を合わせる。そんな顔をされ
たらおじいちゃんも困るだろうに。
「みゆきちゃん。手を合わせなさい。」
蝉に負ける小さな声でおばあちゃんは私に
そう伝える。なんでお盆なんてあるんだろう。
空気の重さと枯れ際の花が目にはいる。
――――――――――――――――――――――
「おばあちゃん。なんでお盆は夏にあるの。」
「え?」
「夏なんてむしっとした上にみんなの暗い気持ちが空気に化けて重くなる。花だって太陽に
負けて消えてしまう。なんで夏なの?」
「具体的な理由ならあるけれどあなたが求めて
いるのはそういうことじゃないわよね。
あれをみて。」
眩しい空を指差して入道雲に手を伸ばす。
「大きな入道雲でしょう?この雲は夏だけしか
現れないわよね。この入道雲はご先祖様を
この世まで送ってくれているのよ。そこから
馬にのって私たちのところへ来てくれる。
入道雲は私たちを会わせてくれる神様の雲
なのよ。おばあちゃんが勝手に考えた幻だけ
どね。失うと幻に縋りたくなるものなのよ――」
そう言ったおばあちゃんの横顔はひまわりの
隣で静かに狂い咲くキキョウのようだった。
邪魔でしかなかった入道雲は今となっては
とても美しく映る。私の心が静かに満たされて
いくような気がした。
そんな幻を見ていた、
入道雲に揺られながら――
夏
初夏の訪れを窓越しに感じる。
聡明なアジサイも今ではただの汚れもの。
どんよりと思い空気を晴らす夏はあと少しで
やってくる。終春はやっとのこと背を向け始め
新たな世界に春を灯す。
驟雨も霧雨も見飽きた今は、
退屈を物言う同じ口でそっと歌う。
初夏を彩る天ノ川
織姫の心 彦星の思い 今宵の初夏には
伝わるだろうか。
霧雨がそれを邪魔し
驟雨が二人の思いを現すような
そんな未来が見えてくる。
夏の訪れ
梅雨の終わり
新しい景色が移される