最後の声
「……生きて…頑張って生きてね」
彼女の最期の声が僕の心を縛り付ける。
生きる呪いをかけられ、僕は独りになった。
「死にたい!彼女に…会いたい。」
そう苦し紛れに叫んでも彼女の呪いが
今日も僕を生かしている。
なんて残酷な呪いだろう。
辛いって一言だけで辛さを表せない時。
死にたいと言う一言でしか辛さを表せない。
だから僕は毎日死にたいと叫んだ。
でも心はどこか違っているようで、
「生きたい…君と生きたい!」そう叫んでいた。
そんな心が1本の糸を切った。
辛いって一言だけで辛さを表せない時。
死にたいと言う一言でしか辛さを表せない時。
そしてもう限界が来た時。最後の声が轟いた。
「君と…生きたかった。」
呪いを解く魔法の言葉―――
もしも君が
もしも君が生きていたなら
私は君のためになんだってできた
「…だから生き返らせろと?」
現実はそう私の心を突き刺すように聞いてきた。
あぁそうだ。返してくれ。
喉が枯れるほどそう叫んだ。
でも「もしも」なんて叶わない時に使うもの
なのだと知った。静まり返った彼女の胸は、
もう鼓動を知らなくて。再び目を開けることは
無かった。
もしも君が…
叶わないなら無駄か...
どうしてこの世界は
どうしてこの世界は薄汚く愚かな人ばかり
なのに、生きたいと思わせることができるのだろ
この世界のことは「恨んでる」なんて4文字で
表しきれない程大嫌いだ
でもなぜか惹き付けられてしまう
この世界を離れた者、旅立った者
やっと醜いこの世界からでることができたのに
祝福することができない。むしろ可哀想に感じた
もしこの世界から引き離されそうになったとき
私は迷わず「生きたい」と願うだろう
どうしてこの世界は
私を虜にするのだろう――
約束だよ
「ずっと一緒にいようね!約束だよ!」
こんな分かりやすい綺麗事を私はどうして
信じてしまったんだろう…
いつ破られるかも分からない約束
「1人じゃないから」と糧にした
その約束が果たされないものになったとき
どれ程の苦痛と呪いを追うのかも知らずに
「ずっとなんて…軽はずみに言わないでよ、」
約束が果たせなくなった時、その嘘を信じた
自分を恨むことはできなかった。私に夢を見せた誰かのせいにしたかった。
「約束だよ」
そんな言葉はまるで呪いみたいに頭に残る。
心を蝕み不信を誘う悪魔の呪い。約束だといった君はこれから先私を1人にしたいのだろうか。
でももう1人じゃない
私は破れた約束をまた結んでみせる
ずっと一緒にいようね…約束だよ――
傘の中の秘密
冷たい針が降り注ぐ梅雨時の帰り道。
傘の上で弾き踊る雨粒がポツポツと音を立てる。
雨の振らない傘の下で1粒情熱を帯びた雨が降る。
誰にも見られないように傘をしっかり握りしめて
現実から目を背ける様に俯いて大雨を降らせる。
伝い落ちるこの情熱は周囲には秘密にした。
強がって、諦めたなんて未熟な結末は誰にも
知られないようにそっと涙に込めて沈めた。
傘の中の孤独な秘密。雨に飲まれ消えてゆく
のに、まだ私の中で燃えている。
いつか燃え尽きる灰だけを求めて、
私は私に秘密を約束した――
傘の中の秘密