元気かな
自己紹介で賑わう新しいクラス。まだその賑やかさには慣れない。私はふと窓のそとを眺めて、
舞う桜と青い空の向こう側に君の姿を思い出した
少し前の君のまま、再開の日を妄想して
「もしその日を恋というならば…」なんて考えて
1人机にうずくまった。でもまた直ぐ四角い空を
見上げて君の事を想う。
心はまるで舞う桜と同じ色
そんな痛いポエムを脳裏に巡らせて思った
「元気かな...会いたいな」
空に向かって
「綺麗…」
私の黒い瞳の奥には君がいた。
ステージの上で輝いている君。
辛い日々を生き抜いて、諦めそうになっても
光を目指して空に向かって羽ばたいている君。
そんな君を見て私は憧れた。
そんな君を見る私は涙した。
ほんの少し前の出来事。私がステージに立った
ところで誰1人見向きしてくれなかった。仲間達
よりもっと主演より人一倍頑張って稽古したはずなのに。誰も私を見つけてくれなかった。
(君は私とは違うんだね…)
そう思っていた時、憧れていた君に、大好きな君に4万人という沢山のファンがいるなかで私を見つけてくれた。私の暗がる目を見て手を振った。
君が私を見つけてくれた。
まるで「よく頑張ったね」と言ってくれたように
優しい目で見つめてくれた。
「うん、私頑張ったんだよ。3ヶ月前に君と
会った時から凄く頑張ったんだ。本当に1人だった人生を変えたんだよ、仲間もできたんだ。
だから…」
今度は君みたいに皆を魅了する舞台を作りたい。
部活が続く5年間で絶対君みたいに観客を楽しませてみせるよ。
もしそれを達成して私が空に向かって羽ばたける
力を手に入れた時はまた君が私を見つけね。あの時とは違う私を見せてみせるから。その時まで、
さようなら――すとぷり――
はじめまして
「はじめまして」
軽く頭を下げながら私は言った。
顔を上げて君の目を見つめる。
夢に溢れた希望の眼差しはとても煌めいていた。
君は私
新しい私
何にでもなれる私
やっと辛い思い出が過去になり後遺症は“勇気”と
言えるだろう。初詣で引いた大吉は現実となって現れて私の心も少しの余裕を取り戻した。おかげで今では「生きよう」と思える理由も見つける事ができた。
「今から幸せになる私。辛さを乗り越えた私。
今、どんな夢を見ていますか?君の瞳にはどんな未来が映っていますか?」
今叶える。夢の中、草原の上で話した夢を。
不安は全て消し去った訳じゃない。でもその不安を隠す程温かい世界を見つけたんだ。そうあの日
君と夢見た世界だよ。夢にまでみた幸せの世界!
頬をつねってごらん、痛いけど今が現実だって
わかるから。さぁ世界に語り掛けて!
君が夢にみた世界にやって来た事を伝えるんだ!
「はじめまして!」
またね!
淡く霞む朝焼け空。いつもより早く目覚めた朝に窓の外を見つめた。少し前までは、帰りの遅い
太陽を凍えながら待ち望んでいた。
「今日は随分と帰りが早いのね」
私は丸い光に囁いた。
「今日は随分と出掛けるのが早いわね」
私はもう見えない月にそう告げた。
窓を開けて少し冷たい空気に冬の背中を感じな
がら温かい日差しを浴びた。
(もう春が来たのね。)
私は溢れ出る沢山の冬にまたねと呟いた。
「温かいセーター、重いコート。小さなカイロ。
霧の朝に暗い帰り道。またね、また1年後私に
寒さを伝えて別れと出会いの準備を手伝って
ください。また寒い中私を温めてください」
春を迎え、桜舞う中で別れに涙して、
夏の盛り、冬の肌寒さを恋しく想い、
秋が訪れ、冬の面影を日々見かける。
その先でまた出会いましょう。
「またね!」
春風とともに
いつも歩く通りに春風が吹き抜ける
心地よい風が吹く度桜が舞っていた
ひらひらと舞い落ちる花弁は紙吹雪のようで
出会い別れを噛み締める者達を祝福していた
私は1本の桜の木の枝を握り締めた
大切な人から貰った凄く大切な宝物
枝の咲きにはいくつか桜が咲いてた
そんな小さな桜が春風とともに飛んでゆく
でも優しい春風は私が背負っている重荷を
飛ばす程の強さを知らなくて季節が巡る中
私は何一つ変わらないままだった
春風とともに飛んでゆきたい
私が知らないところまで
私を知らないところまで
そしたら、そのさきで
何か変われる気がする
生き直せる気がする。
だから春風ともに遠く離れた空の向こうで
消え去りたい――