クリスタル
海辺に転がる水晶玉は日の光に照らされて
虹色に光っている。私は水晶玉を拾い上げて、
手の内で転がす。
右から見ると青々とした光が、
左から見ると黄金色が煌めく。
その青さに海の潮風を感じて
その黄金にひまわりが咲く。
ひとときの夏を閉じ込めた水晶玉。
葉月を彩る真夏のクリスタルだ――
最後の声
「……生きて…頑張って生きてね」
彼女の最期の声が僕の心を縛り付ける。
生きる呪いをかけられ、僕は独りになった。
「死にたい!彼女に…会いたい。」
そう苦し紛れに叫んでも彼女の呪いが
今日も僕を生かしている。
なんて残酷な呪いだろう。
辛いって一言だけで辛さを表せない時。
死にたいと言う一言でしか辛さを表せない。
だから僕は毎日死にたいと叫んだ。
でも心はどこか違っているようで、
「生きたい…君と生きたい!」そう叫んでいた。
そんな心が1本の糸を切った。
辛いって一言だけで辛さを表せない時。
死にたいと言う一言でしか辛さを表せない時。
そしてもう限界が来た時。最後の声が轟いた。
「君と…生きたかった。」
呪いを解く魔法の言葉―――
もしも君が
もしも君が生きていたなら
私は君のためになんだってできた
「…だから生き返らせろと?」
現実はそう私の心を突き刺すように聞いてきた。
あぁそうだ。返してくれ。
喉が枯れるほどそう叫んだ。
でも「もしも」なんて叶わない時に使うもの
なのだと知った。静まり返った彼女の胸は、
もう鼓動を知らなくて。再び目を開けることは
無かった。
もしも君が…
叶わないなら無駄か...
どうしてこの世界は
どうしてこの世界は薄汚く愚かな人ばかり
なのに、生きたいと思わせることができるのだろ
この世界のことは「恨んでる」なんて4文字で
表しきれない程大嫌いだ
でもなぜか惹き付けられてしまう
この世界を離れた者、旅立った者
やっと醜いこの世界からでることができたのに
祝福することができない。むしろ可哀想に感じた
もしこの世界から引き離されそうになったとき
私は迷わず「生きたい」と願うだろう
どうしてこの世界は
私を虜にするのだろう――
約束だよ
「ずっと一緒にいようね!約束だよ!」
こんな分かりやすい綺麗事を私はどうして
信じてしまったんだろう…
いつ破られるかも分からない約束
「1人じゃないから」と糧にした
その約束が果たされないものになったとき
どれ程の苦痛と呪いを追うのかも知らずに
「ずっとなんて…軽はずみに言わないでよ、」
約束が果たせなくなった時、その嘘を信じた
自分を恨むことはできなかった。私に夢を見せた誰かのせいにしたかった。
「約束だよ」
そんな言葉はまるで呪いみたいに頭に残る。
心を蝕み不信を誘う悪魔の呪い。約束だといった君はこれから先私を1人にしたいのだろうか。
でももう1人じゃない
私は破れた約束をまた結んでみせる
ずっと一緒にいようね…約束だよ――