頭空っぽにして読め

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8/8/2023, 2:32:37 PM


とある国の、とある県の、とある地域に、一輪の花が咲いていました。その花はずっと、ずっと周りから、花なのならば花らしくあれ、と言われ続けていました。花はそれを信じ、花らしくありました。
しかし花が花らしくあったとしても、周りは花を否定しました。
花は疲れてしまいました。
花は自身を枯らしてしまおうとしました。しかし、止められてしまいました。
花はまた、花らしくあろうとしました。
暑い夏がやってきました。
花は誰もいない静かな場所で、一人話始めました。

「僕は僕らしくしていたいのねにね。世間体ばかり気にしてるから僕の異変に気づけねえのさ」

花は自身を枯らそうと、首を絞めました。
だんだん耳に空気が詰まり、音が遠くで聞こえるような気がしました。だんだん口周りが痺れてきました。だんだんあたまがぼーとしてきました。
そこに、ちょうはあらわれました。
驚いた花は紐を首から外し、隠しました。

「あ、いやごめんね。そんなに怖がらないで。」

蝶は怖がられたと思い、優しく言いました。
花は首の痕を隠しました。
それに気づかないで、蝶は話し続けます。
しかし、花はその話を聞いていません。

見られた?聞かれた?通報される?怖い。

「ね!友達!友達からでさ!私と交際を前提にお友達になろう!」

花は驚きました。咄嗟にいいえといっていました。

「じゃあ、普通の友達!お願いっ!」

花は訳も分からず、それならばと了承しました。
それから、花と蝶は仲良く過ごしましたとさ。






蝶は花を見つけました。その花は堂々としていました。

「僕は僕らしくしていたいのねにね。世間体ばかり気にしてるから僕の異変に気づけねえのさ」

蝶は惹かれました。
花であるはずの彼女は自身を僕と呼んだのです。
蝶は、花でした。花であるのに、恋愛対象は花でした。
蝶は自身を僕と呼ぶ花になら、受け入れて貰えるような気がしました。
蝶は花に惹かれてしまいました。

8/1/2023, 1:32:32 PM

「明日、もし晴れたらさピクニックにでも行かない?」

そう提案すると、彼女はスマホを取り出した。

「おー、明日晴れるってさ」

「雰囲気ぶち壊しやがった」

便利な時代を恨め、そう言うと彼女は明日の予定を詳しく決めだした。

7/28/2023, 2:44:43 PM

辺りを見渡せば、狐の面や兎の面、ひょっとこなどの面をつけた人が行き交っていた。

「今年も賑やかねえ」

「そーやね。ところで君はなんでお面3つも付けてんの?」

隣を見れば、着物姿の4つ顔、お面3つに顔1つの友人がいた。

「初めて会った時を再現しようかなと思いましてね」

「そんなら着物なんはなんでなん?」

これは君の気を惹くためさっ!と元気よく言う友人から、今すぐにでも離れたい。
とても目立っているのだ。お面を3つも付けて、女物の着物を着たイケメン。これはとても目立つ。
友人は一応、生物学上は女なのだがあまりにも顔がイケメン過ぎる故に、こういう服を着ると女装のように見えてしまう。

「僕、目立つの苦手なんだケド」

「目立ちたくないなら一人称変えたら?その一人称も結構目立つよ。」

彼女が指摘する。
一応僕も、生物学上は女だ。しかし、僕は私、と言うよりも僕と言っている方が落ち着く。仕方ないよね?

「誰もそこは気にしないと思うよう。髪型だってほぼ男だし、気づかねえっしょ」

「……初めて会った時はもっと女子してて可愛かったのに」

頬を膨らませる友人はとてもじゃないが、可愛いとは言えない。どちらかと言えばやはり、格好いい。イケメン面にあわない表情をするものだ。

「今の僕は嫌い?」

「いーや!前よりも我を通していてすっごくキレイだよ!大好き!ファンサしてー!」

「そりゃ良かった。ほら、投げキッスだ受け取れ」











オチはない!仕方がない!だってオチは休暇中!

7/26/2023, 3:22:46 PM

「ね、お願い。最後に、さ私のわがまま聞いてくれる?」

「ん、いーよー。僕ちょうど暇だったし」

「あの、ね。この近くにさ、孤児院があるでしょう。そこにね、私の遺産ぜーんぶ寄付しておいて、くれる?お願い、」

「いーよ。ワガママってえのはそれだけ?」

訊いてみても返事はない。
もう二度と動かない、彼女だったモノがあるだけ。

「いやあ。本当にいい人だったよ。初対面だけど。よくあるんだよねえ。初対面の人に昔からの友人だって思われること。」

けたけた笑いながら一人で喋る。

「で、なんだっけか。寄付か、そっかそっか。」

そう言うと彼女は、この家の地下へと向かった。

「んー!サイアクな空気ー!」

地下の金庫にそっと近づくと、ガコンと音を立てて扉を外した。
金庫の中には沢山の金。

「彼女ねえ、誰かのためになるなら私死んでもいいわって言ってた、らしい。頭のおかしい彼女にしちゃ、なんか良いこと?いってたね」

こちらを見ながら語り出す。

「余命残りわずかって宣言されたからってさ、すげーのよ?自分の内臓ぽぽいのぽい!換金しちゃいましたあ」

阿呆かあ!と叫ぶと彼女は、金庫の中の金に火をつけた

「いやー!物凄い阿呆!本当に死ぬんかーい!例えやないんかーい!生きろやあ!」

何処から取り出したのか、消化器で火を消す。
地下からでると、死体に向かって叫ぶ。

「起きんかあ!阿呆!頭ほんっとうにおかしいなあ!書き替えたる!テメエの人生書き替えたるわ!」

そう言うと紙とペンを取り出し、なにかを書き始めた。

「……焦げ臭い。」

「起きたな?!テメエ起きたな?!燃やしたからな!金!全部!」

「全部?!内臓売った意味は?!」

「ナッシングじゃ!生きろ!」

「余命残りわずかだけど?!後2日だけど?!」

「あー!話が長え!オチがねえ!とりあえずテメエは生きる!あと50年は生きる!それ以上生きるかもだけど!生きる!」

ポカンとしている死体だった彼女から視線を外し、こちらを向くとまた彼女は叫ぶ。

「この話はオチがない!オチが!ない!(大事だから2回いうよ)とりま、誰かのためになるならーで命投げ出すなあ!分かったか!内臓換金少女!」



『誰かのためになるならば』
本当にオチがねえのよ

7/25/2023, 2:24:38 PM

白い鳥かごを眺めていると、声をかけられた。

おや、また会いましたね。
確か、17作前にお会いしたきりでしたね。お久しぶりです。おや、素敵な鳥さんですね。 

相手は、鳥かごを覗くとそう言った。
なにも入っていない鳥かごを見て。そう言った。
かごを開けると、何かが飛び立つ音がした。

……もったいないですね。折角、あなたのために用意されたモノだったのに。

カラになった、いや元からカラだったはずの鳥かごを相手に渡す。
すると、相手は鳥かごの中から無数の鳥を羽ばたかせて見せた。

私はこの鳥さん達と歩いてきますね、それでは。また、何処かでお会いしましょう。

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