「ね、お願い。最後に、さ私のわがまま聞いてくれる?」
「ん、いーよー。僕ちょうど暇だったし」
「あの、ね。この近くにさ、孤児院があるでしょう。そこにね、私の遺産ぜーんぶ寄付しておいて、くれる?お願い、」
「いーよ。ワガママってえのはそれだけ?」
訊いてみても返事はない。
もう二度と動かない、彼女だったモノがあるだけ。
「いやあ。本当にいい人だったよ。初対面だけど。よくあるんだよねえ。初対面の人に昔からの友人だって思われること。」
けたけた笑いながら一人で喋る。
「で、なんだっけか。寄付か、そっかそっか。」
そう言うと彼女は、この家の地下へと向かった。
「んー!サイアクな空気ー!」
地下の金庫にそっと近づくと、ガコンと音を立てて扉を外した。
金庫の中には沢山の金。
「彼女ねえ、誰かのためになるなら私死んでもいいわって言ってた、らしい。頭のおかしい彼女にしちゃ、なんか良いこと?いってたね」
こちらを見ながら語り出す。
「余命残りわずかって宣言されたからってさ、すげーのよ?自分の内臓ぽぽいのぽい!換金しちゃいましたあ」
阿呆かあ!と叫ぶと彼女は、金庫の中の金に火をつけた
「いやー!物凄い阿呆!本当に死ぬんかーい!例えやないんかーい!生きろやあ!」
何処から取り出したのか、消化器で火を消す。
地下からでると、死体に向かって叫ぶ。
「起きんかあ!阿呆!頭ほんっとうにおかしいなあ!書き替えたる!テメエの人生書き替えたるわ!」
そう言うと紙とペンを取り出し、なにかを書き始めた。
「……焦げ臭い。」
「起きたな?!テメエ起きたな?!燃やしたからな!金!全部!」
「全部?!内臓売った意味は?!」
「ナッシングじゃ!生きろ!」
「余命残りわずかだけど?!後2日だけど?!」
「あー!話が長え!オチがねえ!とりあえずテメエは生きる!あと50年は生きる!それ以上生きるかもだけど!生きる!」
ポカンとしている死体だった彼女から視線を外し、こちらを向くとまた彼女は叫ぶ。
「この話はオチがない!オチが!ない!(大事だから2回いうよ)とりま、誰かのためになるならーで命投げ出すなあ!分かったか!内臓換金少女!」
『誰かのためになるならば』
本当にオチがねえのよ
7/26/2023, 3:22:46 PM