永身未来

Open App
7/18/2025, 3:57:47 PM

そう、これは、俺が学生だった頃の話だ。その頃はちょうど夏休みに入ったあたりで、夏の日差しが眩しかった。その日は一段と暑くて、空は青くどこまでも澄んでいて、入道雲が大きくあった。太陽の光は俺の肌を突き刺し、地面からは陽炎が。そんな中、俺は外出していた。ちょうど、好きな作家さんの本の発売日だったのだ。だから俺は、普段から乗っている錆だらけの自転車にまたがり、本屋へ向かっていた。
本屋へ行く途中、俺は奇妙なものを見た。ビー玉のような、水玉のような、無色透明なガラス玉。それは野球ボールほどのサイズがあり、なんと、宙に浮いていたのだ。俺は、不思議に思って好奇心で近づいた。近くで見ると、若干、赤紫のような、赤黒いような、そんな色が混ざっていた。太陽の反射がそのガラス玉をキラキラと輝かせていた。俺は、あまりにもそのガラス玉が綺麗で、綺麗で、無意識にそのガラス玉に向かって手を伸ばしていた。だが、あと少しでガラス玉に届きそうなところで、待ったが入った。
『待って。それは触らないほうがいい。』
そう言われ、声の聞こえた方向に顔を向けると、1人の男がいた。その男はこちらに近づいてきて、俺の、もう少しでガラス玉に触れそうになっている手を掴み、引っ込ませた。そうすると、彼は優しさを漂わせた胡散臭い笑顔でこう続けた。
『これに触ったら地獄に墜っこちてしまうからね。』
高身長で茶髪、牛乳顔負けの色白肌。包帯がところどころに巻かれているが、砂色の外套と瑠璃色のブローチのついたループタイをつけている。甘くて、優しい声色をし、笑顔をその整った顔に貼り付けた彼。不気味だった。だが、それと同時に綺麗だった。全体的に透明感が強い彼が、太陽の光であらわになり、はっきりと、俺の目に存在を焼き付けている。神々しさまである彼に、俺は目が離せなくなった。俺が何にも言えず、ただ突っ立って彼を見ていると、彼はそのガラス玉に触った。そして、そこにそっと、口付けをした。チュ、とかわいいリップ音がした後、そのガラス玉は割れた。太陽の光を乱反射させ、彼の顔を無作為に照らす。美しかった。その場の視界に映る全てが。全てが、彼を引き立て、彼の本当の美しさを引き出していた。
『今度からは、怪しい物には近づかないように。』
彼は俺の口に人差し指を当て、去っていった。俺は、何もかもを忘れ、ただ、呆然と立っていた。

7/6/2025, 1:11:32 AM

海は、どうしてこうも青く澄んでいるのか。水色の空に、大きくある入道雲。砂浜に押し寄せる小さな波。その小さな波に、私の足は、少し浸かる。私の足は裸足で、靴と靴下は浜辺のパラソルの下。私は、波の音をききながら、遠くの、青く光っている海を見ていた。足の爪の間に、少し違和感があって、それでも、絶えず吹き続ける、心地の良い風。でも、潮風が、喉を焦がす。
私が、そうやって海の様子を見守っていると、後ろの方から、声をかけられた。
「どうした?こんなところで。」
声の方向を向くと、私の親友である、中也が立っていた。
『……。別に。少し、海が恋しくなったのさ。』
私はそのまま、私の靴と靴下のあるパラソルの下へ行った。そして中也も、そのパラソルまで来てくれた。足を動かすたび、不安定な地面に転びそうになる。
「……タオルは貸してやんねぇかんな?」
私の足は、砂と落ちていた木の皮がびっしりと、海に浸かっていた部分だけ並んでいた。私は、中也のそんな宣言を無視して、中也にそのまま抱きついた。同い年なのに、中也の方が遥かに小さいから、覆いかぶさるようになってしまった。
『本当にどうした?』
中也の、困惑したかのような声が耳元から聞こえる。それでも、中也は私の背中に手をそえて、抱き返してくれた。中也の髪が、頬に当たってくすぐったい。
「中也は、僕のこと、置いて逝かないでね?」
つい、意識的に変えていた一人称が戻ってしまった。でも、中也は驚くでもなく、指摘するでもなく、ただ、私の弱った心を包み込むようにして、優しく言った。
『…‥ああ。大丈夫だ。もし逝くとしたら、そん時は治も一緒だろうなぁ。』
治っていうのは、私の名前。つい先日、私の友人が死んだのだ。事故死だった。工事現場の鉄骨が、友人の頭上に降ってきたんだ。
私は、その友人が街を歩いているところを偶然、見つけた。友人は私の少し前の方にいて、私は友人に話しかけるべく、友人の背中を追った。でも、私は体力がなくて、すぐに足が動かなくなった。私は、友人を呼び止めようと声をかけた。かけようとした。そしたら、目の前で、友人の頭上に、鉄骨があるのが見えた。友人のいた場所に鉄骨が落ちていて、鉄骨の下には、人が倒れていて、血が飛び散っていて。
今でも鮮明に、思い出すことのできる記憶。それを、中也は知っているのか、定かではないが、中也が、あんまりにも温かく私の頭を撫でるから、安心してしまった。目から涙がこぼれ落ちる。手足が震え、中也を抱き締める力が強くなる。頭を、中也の肩にぐりぐりと押しつける。中也の服は、私の涙でぐちゃぐちゃになった。そんなことになっても、中也は、ずっと、私の頭を撫で続けてくれる。私の口から、小さな嗚咽が漏れる。だが、すぐに声を抑えるのが難しくなって、そのまま、私は中也に縋り泣いた。声が枯れるまで叫んでも、手足に力が入らなくなっても、涙は止まらないし、中也の温もりも消えない。安心しきって、私は周りのことも気にせずに泣いた。ただ、親友の体温に、言葉に、安心した。ただそれだけだった。

涙もようやく枯れて、波の音が戻ってきた。私の目尻には、いまだ少し、涙が溜まっているけれど。

「中也と私は、ずうっと、いっしょ、だったら、いいなぁ。」

そんな私の願いが、波音に、さらわれないように。私は、もう一度、中也をしっかりと、抱きしめた。

6/28/2025, 9:13:39 AM

日々増え続ける痣が、どうしようもなく悲しくて。あの手が、私に触れるたびに、悪寒がして。信じたくなくて。あの手が、かつて、僕の頭を優しく撫でてくれて、ぎゅっと、抱きしめてくれた、実の母親のものだなんて。考えたくも、なかった。
「早く飯出せよッッ!!」
そう言って、また、僕の母は金切り声をあげる。拳を振り上げる。薄暗くて、日の光のない部屋。唯一の明かりは、うるさく笑っているテレビの明かりだけだった。ゴミが散乱して、そこら中にゴキブリがいて。母の拳がおでこに当たって、尻餅をついた。手から、足から、蟻やゴキブリ、蜘蛛がよじのぼってきて。頭から、血が垂れてきて。
『ご、ごめんなさい。母さま。いま、今作りますから、、どうか、!』
僕は膝の上にいる蜘蛛や蟻、太ももらへんにいるゴキブリの感触を感じながら、必死に謝った。頭がくらくらする。
「ごめんじゃねぇよッ!早く作れやこんの、のろまッッッ」
さらに頬を殴られ、地面に頭を打つ。腹を何度も蹴られ、腕や肩を殴られる。終いには、僕に馬乗りになって、顔を何度でもぶたれる。
『ごめんなさいッ、ごめんなさいッ…!』
僕はひたすらに謝って、腕で顔を覆った。そんな僕にムカついたのか、母は私の腕を、一層強く殴った。左腕から、"バキッ"と音がしたかと思えば、激痛がはしった。
『ぅ"……あ"…ぁ"…?』
声も出せない。見てみると、心なしか、人間の体の構造上、曲がるはずのない部分が曲がっていた。素人でもわかる。骨折していた。
「チッ」
その様子を見ていた母は、面倒臭くなったのか、私の髪の毛を掴んで、引きずった。ベランダに放り投げ込まれ、左腕がベランダの壁に当たる。
『あ""""が"""ッッッッッ"!?』
放り出された物理的な衝撃よりも、折れた左腕がベランダの壁に当たったことによる衝撃の方が、何億倍と痛かった。僕は左腕を包むようにしてうずくまり、痛みに耐えた。ふと、ベランダと部屋を繋げている窓が見えた。鍵が閉められていて、カーテンで部屋の様子が見えなかった。ベランダには、雪が薄く、積もっていた。このままでは死んでしまうと、私は折れてない方の腕に繋がっている手で、ベランダの窓を叩き、必死に訴えた。母には聞こえるはずのない僕自身の声で。
『ごめんなさいッッッ!ごめんなさいッッッ!お願いッッッッッ!ここから出してよッッッッッ!!!寒い!!寒いよう!!!!』
部屋からは、物音ひとつもしなかった。
『母さま、出かけたんだ、。』
僕はもう何度も感じてきた絶望よりも、なんだかもっと悲しいような、切ないような気がした。でも、その後すぐに、パキッて、音がして。そしたら、随分と、心が軽くなって。馬鹿馬鹿しくなって。ベランダにあった、昔よく母さまが座っていた椅子が、物悲しく光っていた。私は、その椅子に導かれるように向かい、ベランダの柵の近くに置いた。そして、椅子によじ登って、ベランダの柵から、下を見た。下には、楽しそうに笑っている家族がいた。僕と、そんなに年の離れていないだろう、そんな男の子が、両親と手を繋いで、笑っていた。その家族は、みんなあったかそうで、首に、マフラーを巻いていた。赤くて、幸せそうな色。僕は、途端に涙が出てきて、雪の積もるベランダの柵を濡らした。僕の母さまは、もう、昔の優しい頃とは比べ物にならないくらいの人になっていて。僕に手をあげるような母さまじゃなかったのに。僕の、僕達の幸せは、とうの昔に壊れてしまっていて。それもこれも、全部父さまが死んでしまったせいで。柵の下にいる、あの家族が、どうしようもなく、羨ましくて。
『もう、いいや。』
どうせ、僕がいたって、何にも変わらない。痣は増え続け、太陽の温もりが、恋しくなるだけだから。僕が死のうが、生きようが、母さまはきっと、もう僕のことなんてどうでもいいから。だから、もう、

終わらせよう。

僕は柵の上に座った。不思議と、折れた左腕は痛みが引いていた。両手の指先は、赤くなっていて、小刻みに震えていた。

『ありがとう。母さま。母さまだって、辛かったよね。あんなに父さまのこと、大好きだったもんね。だから、僕の顔がより一層、嫌いになったんだよね?僕の顔が、父さまにあまりにも似過ぎていたから。でも、もうだいじょうぶ。もう、父さまを思い出すことも無くなるし、お金を圧迫してた僕だっていなくなる。もう、母さまは、自由だ。』
僕は、柵から飛び降りた。重力に従って、僕の体は下へ、下へ、落ちていく。ふと、見えた空は、快晴だった。
『僕、母さまの役に立てたかな?』
体も心も中に舞って、何だか、軽くなった。

昔、母さまに聞いた事があった。死後、良いことをしたのなら天国へ、悪いことをしたのなら地獄へ行くと。もし、その天国と地獄があったのなら、きっと僕は、地獄行きだ。

ぐちゃりと、鈍い音がした。雪は、だいぶんと薄く積もっていたから、コンクリートの上に落ちたのとほぼ同じだった。でも、真っ白い雪は、僕の血で染まって、キラキラと、太陽の光を反射していた。

僕が次にいる世界は、地獄なのだろう。どんな罰があるのかな。母さまが言っていた事が本当なら、ちょっぴり、

怖いなぁ。

6/15/2025, 10:27:44 AM

私は、今、片思い中なんだ。中也っていう、大学生の男の人に。中也はね、なんでもできるの。料理、家事、お仕事、運動、勉強。なんでもできる。顔だってカッコいいし、性格だって素敵。身長は小さいけれどね。(160センチくらいかな?)そんな人と一体何処で出会ったかというとね、私が道に迷っている時だったの。その時は、スマホの充電が切れて、地図もなくて、公園で1人泣いていた。そんな時に、中也が、
「大丈夫か?」
って、声をかけてくれたの!顔を覗き込んでくれて、上目遣いになってて、とっても可愛いかった!その時は中也に目的地まで案内してもらったのだけど、物凄く紳士で惚れ惚れしちゃった。そこから、中也とは連絡先を交換して、そこで、私と同じ大学に通っている事がわかったんだ。たびたびデートに行ったりもした。デートでもやっぱり、カッコよかった。
でもね、私、今とっても悲しいんだ。中也はどうやら別のオンナが好きみたい。私がどれだけアタックしても、中也は友達としてしか接してくれない。友達として、でしか愛してくれない。私が欲しいのは、中也の"カノジョ"としての愛。どうやって中也の頭から私を離れなくさせようか、色々考えてやってみたはいいものの、中也からはストーカーと勘違いされちゃった。ただ、ポストに恋文を入れて、ちょっとしたプレゼントを入れたりしただけなのに。酷い。
だから、ね?私、思いついちゃった。中也の頭に、強烈に取り付く方法を。それはね?中也の好きなオンナをとるコトだった。気持ち悪かったけど、仕方ないよね?だから、今回だけじゃなくて、私は何回も、中也が好きなオンナをとった。私がオンナをとったら、中也ってば、私に失恋したって泣きついてくるの。毎回、私が中也の好きなオンナをとったコト、中也には言ってなかったから。だからね、私、中也をいっぱいに抱きしめて、慰めてあげるんだ。それでね、中也が泣き疲れて眠って仕舞えば、私のお家に連れてって、お泊まり会を開いたの。何回も何回も。そしたら、中也ってば、私のこと、
「お前だけだよ!俺の親友は。」
って。親友だって。中也の唯一になれたのは嬉しかったけど、親友だって。中也ってば、乙女の恋心を抉るの、上手だよね。お泊まり会が終わった後は、とりあえずとったオンナたちはそそのかして、違法薬物に手を出させた。それからまるっきり、そのオンナ達は見なくなるんだ。兎に角、これでしばらくは恋敵を排除できた。でも、また、中也をそそのかすオンナが現れた。今度は、そのオンナが中也の事を好いているらしい。そのオンナは中也に猛アタック。中也も、そのオンナに気持ちが傾いてきていた。私がこれでもかとアタックしても、なびきもしなかったくせに。だから、また、お掃除しなくちゃいけなくなった。今度は中也とそのオンナが付き合うのを見守った。正直心苦しかったけど、我慢した。ようやく付き合ったかと思えば、中也からもわざわざその事を報告された。やっぱり、改めて言われると苦しくて、平然を装う事が難しかった。でも、大丈夫。これからあのオンナは地獄を見るから。中也がいない隙に、オンナと密会をした。そしてオンナにとある写真を見せた。その写真は私が作った、合成写真で、別のオンナと手を繋いでいる写真だった。そのオンナはショックを受けたのか、泣いた後、怒り狂って、何処かへ行ってしまった。よく見れば合成だとわかるこの写真も、私の顔に見惚れているオンナには本物に見えたのかな。それからしばらくすると、中也は私のところにきた。そして、あのオンナと別れた事を告げた。勝手に浮気と決めつけられ、喧嘩になり、そのまま別れる。そんな流れらしかった。中也はそこで、私にポツリと嘆いた。
「最近、好きな奴が全員俺の元からいなくなっちまうんだ。俺がいけねぇのか?」
中也はどうやら、精神的にくると、自分を責めてしまうタイプらしい。そこで、初めて知った。ようやく、弱みを、見せてくれた。私は中也に、すかさずこう言った。
「そんな事ないよ?中也はみんなに優しいじゃないか。」
すると中也は腑に落ちないのか、こう続けた。
「んー。でもおかしいんだ。俺が好きになった奴、全員だぞ?流石に誰か仕組んでんじゃねぇのか?」
「……。その仕組んでるのって、一体誰なんだい?」
つい、聞いてしまった。中也が誰を怪しんでいるのかを聞き出すために。もしかしたら、中也が真実に辿り着いてしまうかもしれないのに。
「あー。そうだなぁ。俺の事をよく知っていて、俺に気づかれないように手を回せるくらいの頭の切れた奴、そんで、女をうまく操れるほどの心理学に詳しい奴……。ん?あれ、これ全部お前に当てはm「中也。」
私は中也に気づいてほしくない。だから、考えを放棄させなければならない。
「連続で失恋してるからって、私を疑わないでくれる?」
私は、中也を怖がらせないように笑顔で言った。でも中也は止まらなかった。
「いや、でも、この前俺が好きになった奴、彼氏ができたっていうもんだから聞いてみたんだが、茶髪で、高身長って言ってたぞ…?そんなのお前しかいないだろ?」
「考えすぎだよ?中也。そんな人、世の中に五万と、「それだけじゃない!その前も、そのずっと前も、今回も、ありえねぇんだよ!?だって、あいつらみんな、口揃えてお前に当てはまる特徴言ってたんだからな!?当時は単語だけだったり、気が動転してたのもあってなんも思わなかったが、今考えればおかしいだろ!?」
中也が叫びながら、私から距離をとる。嗚呼、最悪だ。中也に、バレてしまった。敵と、見なされてしまった。
「なんで、、、なんでそんなひでぇことしたんだよ!、手前ぇ!?ずっと、ずっと…お前だけが"親友"で…!」
私ももう。限界だった。数多の中也の恋敵。叶うはずのない恋。もう、いいや。
「……その親友が嫌なの。」
私は呟いた。
「は?」
私は、大きな声で、中也にぶつけた。
「その親友が嫌なのッ!!!!」
中也は私の声量に驚き、黙った。
「いままでずっっっっと我慢してきたのだよ!?中也があんまりにも目移りしちゃうから!!!頑張って私がアピールしても、中也ってば私のこと見向きもしないくせに、他のオンナがちょっと優しくしたらすぐになびくんだからッ!!!!だから他のオンナに取られないように策を練りに練って、中也に勘付かれないように、中也が傷つかないように中也がとられないように一っ生懸命動いてきたのにッ!!!!!なのに何?なが酷いだッ!!!中也の方がよっぽど酷い癖にッッッ!!!!!」
私がそう、怒り任せに怒鳴ると、中也は引き気味に、呆気にとられたかのように、思わずポロッと、私の一番恐れていた言葉を口にした。

「何言ってんだよ…俺ら"男同士"だぞ…?」

「ぁ、」
この、思わず出た、私の声は、きっと、誰にも聞こえない。私の耳に、ガラガラと、何かが崩れ落ちる音がする。視界が、真っ暗になる。まるで世界が停止したかのように思えた。ずっと、ずっと恐れていた。中也から、その言葉が出るのを。でも、出てしまった。ぷちっと、音がした。するとどうだろう。もう、中也があんまりにも遠くにいるような気がして。神様が、怒っているような気がして。

それから、中也とは疎遠になってしまった。いまだあるこの場違いな恋心は、私の胸を貫いている。先日、中也にカノジョができたそうだ。風の噂で知った。でも、もういい。もう、この恋が、叶う事がないのは、身をもって、深く知ったから。もういい。中也が幸せなら、それでいいの。でも、未だに考えてしまう。夢見てしまう。もし、中也、君が私を一番に好きでいてくれて、深く愛してくれたのなら。もし、中也が私に一目惚れをしてくれて、両思いだったのなら。もし、もし私が、

女に生まれていたのなら。