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3/5/2023, 2:27:22 AM

キミが居なくなってから、寂しさに気づいた。いつもの日常に隠れていたあの色を。優しいあの色。
あんなに当たり前だと思っていたのに、居なくなってから気づくなんて、余りにも遅過ぎただろうか。

キミはいつも私を笑顔にしてくれた。
いつも色んな形で驚かせてくれた。
そんなキミはもう今は居ない。

愛しい、会いたい、でも会えない。
キミが遠くにいることは解っていても会うことは出来ないんだ。もうキミは高い場所に行ってしまったから。またいつか会えるよね?会いたいよ。







大好きな黄身。卵かけご飯がまた食べたい。
あの卵をかけ混ぜた瞬間の、音と黄身のとろける色。
ゆで卵も栄養効率面で非常に宜しい。いや、卵焼きも良いな。甘い出汁焼き卵が食べたい。でも、あんなに高騰化してしまうなんて。もう200円だぞ。




テーマ:大好きなキミに

3/3/2023, 3:57:37 PM

ひな祭り。かつては雛人形を飾り、女児の健康なるものを祝う祭事だったそうだ。あれから何十年過ぎただろうか。本来のひな祭りの由来である「雛流し」にヒトは着目した。「雛流し」は人形に自分の厄を代わりに移して、川に流すという祭事であった。気づけば、現代の為にその人形たちが造られた。水に溶ける特製プラスチックで環境汚染はほぼゼロ。そして、いつしかその人形にヒトの手をかざして、その手からヒトの厄や想いを川に流す。いつしか、それが現代の「雛祭り」と呼ばれるようになった。

「私、ずっと楽しみだったんだぁ。」
「はぁ?勝手に人間に殺されるようなもんだろが!」
ただ、ヒトはこの人形達が自らの意思を持っていることを知らなかった。
「だって、皆んなの役に立てるもん!」
「厄払いのためにってか?なんだそれ、最悪な駄洒落じゃんかよ。」
「最初は怖かったよ、だって知らない人のために殺されるようなものでしょ?でもね____。」
この人形達は既に川に流される準備が行われていた。

「もうすぐかぁ。もう、サイアク。ヒトなんて、最低な生き物だ!生まれ変わっても絶対ヒトになってやるものか!」
一人の人形は悪態をつく。
「私は生まれ変わったら、ヒトになってみたい。私に手をかざした子は病気の女の子だった。」
「じゃあ、病気が治りますようにってか?」
「ううん。」
もう一人の人形はゆっくりと深呼吸をする。

「『人形さんありがとう』だって。あと、みんなが幸せになりますようにって。あの子、泣いてた。」
「変わったヒトも居るもんだな。アタシなんて、『穢れ飛んでけ!』だったしなぁ。……あ、だからお前顔の一部溶けてるの?」
「うん。あの子に悪い気持ちは感じなかった。私、生まれ変わったら、あんな素敵なヒトになってみたい。」
「はぁ。それは良かったと言うべきか何というか。ん、そろそろ時間だってよ。」

二体の人形は笹で作られた船に乗せられる。幼い少女が何か泣き喚いていたように見えたが、その少女の母はただ流される人形を見届けていた。それは一種の諦めのようにも見えた。

「アタシはもう絶対生まれ変わってやんないから。」
溶けながら笑う。
「そうしたら、私達来世で出逢えないよ?」
人形達の中では、ある噂があった。それは、もし無事に役目を果たしたのならば、幸せな来世を過ごせるというものだ。
「じゃあ、人形以外ならなってやっても良い。」
「ヒトは駄目?」
「んー。ま、考えとくわ。」

静かに泡を立てながら人形達は溶けていく。二人は手を繋いで沈む。これで良いんだと思う。私達はこの為に生まれたのだから。でも、もし生まれ変われるのなら。一緒に居られますようにと、彼女達は願った。

3/2/2023, 4:13:04 PM

「どうして、蝶は羽根を持っているの?」
通りすがりの紋白蝶を見つめながら、君は呟いた。
「それは単なる進化論で____。」
「そんな、つまらない答えをまだ言うの?」
「君には敵わないな。」
「だって、それだったら鳥とは何が違うの?」

君の質問は哲学的というよりは地球平面説に対して、ひたすら問いかけるような無意味な自問自答に思えた。
「蚕は大人になったら、息が出来なくなって死んでしまうんだって。」
「それは人類の罪の一種だ。品種改良とも呼ぶ。」
「へぇ、つまんないの。」
足元に転がる小石を蹴るとコンクリートに跳ね返る。
「もし、私に翼があったら何処へ行くの?」
「それは君次第だろう?」
「行かないで、とは言ってくれないんだ。ふうん。」
「何の話をしてるのかわからなくなってきた。」
「うん、私も。」

その後、僕らはいつもの公園で別れた。君はいつもの笑顔で僕を見ていた。ただ、一瞬違和感を感じた。彼女の口がパクパクと金魚のように動いていた。その日はずっと、彼女の言葉が頭に焼き付いていた。
「私に翼があったら何処へ行くの?」
それは彼女が決めることだろう。僕は知らないふりをした。そして、彼女は居なくなった。まるで、本当に何処かへ飛んでいったようだった。彼女は何処に消えた?空を見上げると橙色の蝶の群れが飛んでいる。その中に一匹、真っ白な蝶がいた。必死に手を伸ばす。今なら、言えるんだ。どうか、行かないで。

「本当は知ってるくせに。」
脳内で聴こえる彼女の声。
「私は貴方の大切な、」
「もう辞めてくれ……!」
部屋の鏡が割れる音。両手が血まみれになった。お願いだから、消えないでくれ、僕の大切な____。そこで意識が途切れた。目覚めると白い病棟に居た。両腕が拘束されている。

「私の声が聞こえますか?」
医者のような人物が話しかけてくる。
「……ここは?」
「救急車で運ばれたんですよ。」
「誰が呼んだんですか?」
「何を言っているんですか?救急車を呼んだのは「貴方」ですよ。」
「それはどういうこと、」
「本当は知ってるくせに。」
当然、彼女の声が聞こえた。そうか、僕は。
「もう分かっていますよね?」

彼女は、君は、僕の中の大切な友達だった。たった一人の。幼い時、あのいつもの公園で出会った友達。
「どうして、蝶は飛ぶと思う?」
それが全ての始まりだった。掌を見つめる。
「そうか。もう、君は消えたのか。」
蝶を潰してしまった掌には、もう何も残っていない。

3/1/2023, 10:30:00 AM

 いつも、夢の中で夢を見る。目を覚まして、廊下を歩く。でも、それは10年前に住んでいた頃のマンションの廊下。今住んでいるボロアパートとは全く違う。
 夢の中の夢では7割程度悪夢を見る。何かから逃げる夢、知り合いから罵倒される夢、成人して既に卒業した高校やら大学をもう1度社会人受験生として、受け直す夢など。
 でも、希望的な夢もある。何処かでピアノを叩き弾いて居る私、そして歌姫のようにコンサートホールで歌う私。その時だけの幸せ。でも、夢のまた夢を掻い潜らないと見ることが出来ない。逃げながら、怯えながら、夢の底に潜り込まねばならない。
 ならば、現実は?今の私は現実に居るのだろうか。この部屋の窓から外に出ようとしたら、急に空に落ちるかもしれない。私は私なのか?そもそも、私とは何なのか、鏡に自分を問いかけるように問いかけ続ける。夢の中の蝶はいつ私になった?わからない。と、この世界の私は言っている。夢から醒めなければ、きっと____、お前は誰だ?

2/27/2023, 3:42:22 PM

今日、飼っている犬の様子がおかしくて、明日病院につれていくことになった。きっと手術案件になるだろう。でも、今は父は4度目の離職(1度目の解雇)でお無一文。母は身体が弱くて動けず、私も精神病で動けず、布団からあまり出られない。でも、お金は消える。私達は布団の横に転がるペットボトルの水で生きている。

2年前は東京で必死に働いていた。男ばかりの職場で、シンナーを素手で扱う技術職。手や作業着がボロボロだった。「作業着が汚いのは作業が下手だから」
そんなことを上司は笑いながら言っていた。でも、私は生きていた。通勤片道1時間。なんやかんやで、自分は息を出来ていると思った。他の人は出来ない作業を出来る自分が誇りだった。

でも、いつしか身体は動かなくなった。今と同じ。
まるでゴミだった。ゴミになれるだけマシだ。きちんと使われたからこそゴミになれる。でも、今の私は?笑える?話せる?生きてる?植物?ゴミですら無いのなら、何?

人は生きるために働く。
生きていたいと思わない人間の選択肢をください。
せめて、今だけでも泣かせてください。神様。
助けてなんて言わないから。

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