〝キスチョコ〟というのをはじめて見た時、コロンとしたかたち、銀紙からチョロっと出た紙がかわいくて魅力的だと思った。名前も異国の雰囲気だ。ただ、味は独特で子どもだった私にはおとなの味だった。
学生の時、おしゃれでステキな人が、いくつかの外国のチョコレートを持ってきた。見たことのないパッケージにわくわくした。その中に〝キスチョコ〟もあった。
その人が持ってきたというだけで、チョコレートが格段におしゃれに見えた。皆でいただくことになって、私は〝キスチョコ〟を選んだ。前に食べたときと同じ味だろうか。少しは変わっているかもしれない。
紙を引っ張って銀紙を外す。口元に近づけた時、あっと思う。あの懐かしい香りがした。やはり異国の味だった。でも、その時から何だかおしゃれな雰囲気をまとったチョコレートになった。
「kiss」
この世は、以外とあっというまに過ぎていく。ずっと続くと思っていたものがあっさりなくなると、すべてが永遠ではないことに気づく。
何で生きているのだろう。子どものときは純粋にそう思ったけれど、月日が流れて、また思う。
何で生きているのだろう。
きっと、この世で何かを楽しむためだと思いたい。何かをしたくて生まれてきたんだ。それなのに、そんな自分の生き方を自分で認められないと生きづらくなる。
1000年先は、わからない。もし生まれ変わるとしたら、1000年の間に何回生まれ変わっているだろうか。また、何のために生きているのかと、もんもんとしながら、生きているのだろうか。
わかるのは、この生きている今しかない。行動しよう。やっぱり自分で動いていくしかない。
「1000年先も」
花なんかまったく興味がなさそうなのに、君は「意外と花が好き」だった。中でも小さな花がたくさん咲いているところに、キュンとするそうなのだ。
「一つ一つの花は小さくても、たくさん咲くと、その辺り一面が花になるのがいい」。よく訪れた公園では、春になると一斉に勿忘草が咲いた。
「かわいいねえ」。そういいながらしゃがんで、カメラを盛んに向けていた。小さな青い花は大きくクローズアップされ、奥にはぼんやりとした薄い青の世界が広がっていた。
確かに、青い敷物をしきつめたようで、美しかった。明るい日差しの中、花が小刻みに揺れていた。一つ一つは可憐でも、集まると生命の力強さを感じた。
もうすぐ、花の季節がやってくる。勿忘草を見るたびに、君のことを思い出す。
「勿忘草」
ブランコに、座ってのんびり乗った記憶があまりない。ぶらぶら乗ったところで、いつも見ている校庭か公園だから、景色に飽き飽きしていたせいかもしれない。
乗る時は、立ち漕ぎでぐいぐいと漕いで、なかなかハードなものになっていた。隣に友達がいるとどっちが、遠くまでいけるか競い合うように漕いだ。でも、時々鎖がグニャッと斜めになったりして、ちょっと怖い思いもした。
座って、足をぶらぶらさせながらのんびり乗るなら、景色のいいところがいい。山の上の空気がいいところで、緑と空の色を見ながら、ゆっくりと揺られてみたい。
ぽーん、ぽーんとブランコと一緒に体を投げ出して、高く上がったところで空を見る。何度か繰り返すうちに、空と一つになる感じがするだろう。そんなブランコに乗ってみたい。
「ブランコ」
旅路の果てというと、断崖絶壁に来ているだろう。二時間サスペンスだったら、最後に来る場所だ。崖の上で遠くを眺める。海はずーっと続いていて、遠くに島が見えている。下は、恐ろしすぎるから見ない。
誰かに追われているわけではない。ただただ、地上の果てに行き着いて、佇んでいるだけなのだ。風が強く吹き付ける。さえぎるものが何もないから、右から左から吹き付ける。
髪の毛は舞い上がり、服がハタハタと音を出す。勇気を出して、そっと下をのぞいてみる。白い波が見える。はっと頭を後ろに戻そうとした時、少し上の崖の途中に、ゆらゆらと白いものが見えた。
もう一度のぞくと、花だった。そういえば、足元には白い花が点々と咲いている。こんなところでも咲いていたのか。不安定でも、斜めでも。
自分には無理だと思いながら、またすごすごと崖から戻っていく。いつかは、あんなところでも咲けるだろうか。
「旅路の果てに」