sunao

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10/14/2024, 6:12:27 AM

きれいな瞳だと思った。

子供のように無垢で。


見てすぐに思った。
宇宙人かなにかだって。

白銀の髪の子供のような見た目。
でも鼻がほとんどないように見える。
目はとても澄んだ青色。
あ、あっちの子は紫色だ。
こっちはエメラルドグリーン。
髪型と目の色が違うだけでおんなじ顔。

そんなことを思っているうちに、僕は縛られてしまっている。

この鳥籠のような建築物の中で。

彼らが鳥籠から去り、入り口が閉まると、鳥籠はふわりと浮いて地面から離れた。

頭上にはUFOのようなものがある。

僕は思った。

子供って、無垢な目をして悪戯で平気で虫をいたぶり殺す生き物だったなって。





「子供のように」

参考 : 7/26「鳥かご」

10/13/2024, 5:37:12 AM

運命の人に巡り会えたら。
なんて思っていたあの頃、僕はきみに逢えた。

学校祭の後夜祭。
踊りませんか?と恥ずかしそうにきみに声をかけられた。

ベランダでビールを片手に巡る星座を見つめながら、過ぎた日を想う。

あれから月日が経って、僕達は大人になった。
今は車で片道2時間。往復4時間の距離。
気安くは会いに行けない。

週末、やっと会えたきみを、力を込めて抱きしめる。めいっぱいに彼女をとり込む。
束の間の休息。
ココロオドル時間。

なのに、突然彼女が泣き出した。

涙の理由を尋ねても、泣いてばかりでなかなか話し出してくれない。

もう幕引き。静かにカーテンが下りるのを感じた。

いろいろあった楽しかった日々は終わったのだ。


僕は放課後に取り残されてるような気持ちになった。






110作突破記念
「放課後」

前回 10/2 100作目。
10作ごとぐらいにしている。
これまでのタイトルを並べて繋げたもの。
内容は続いていない。
インターバル的なもの。

10/12/2024, 12:13:22 AM

わたしが片想いしているAくんは、よく窓の外を見つめる人。
その静かな横顔もきれいで、わたしはすき。
窓の外を見ている間は気づかれにくいから、わたしも彼の顔を見つめていられる時間になる。

今日も彼は窓の外を見ている。
窓とカーテンの間に立って。

窓際の席に座るわたし。
カーテンが風をはらむと彼の姿が見える。

カーテンが風に煽られ、ひらひらと、けどゆっくりと呼吸をするように揺れる。

彼が見える。

見えなくなる。

見える。

見えなくなる。

見える。

見えなくなる。

……………


階下で悲鳴が聞こえる。


彼はどんな気持ちでいつも窓の外を見ていたのだろう。





「カーテン」

10/11/2024, 12:13:44 AM

月の上にて─


月にいるのは僕らだけじゃない。
とりあえず会ったことがあるのはレディとカニさんくらいだけど。

ある日、そのレディが大泣きして、涙でほんとに月の海ができてしまった。月の湖かな?

「わあ…」
静かに広がった水面の淵で、レディはまだ泣いている。
側でカニがうれしそうに鋏を上げて水で戯れている。

「レディさん、どうしたの?
 なんで泣いているの?」
「なんで…」
レディは抑えていた手から離れて顔を上げた。
「なんでだったのかしら…
 理由は、あったのかしら…
 わからない…
 わからないけど、…泣きたいわ!」
わっと、また泣き始めてしまった。
「…………。」
うさぎたちは顔を見合わせた。

帰り道、うさぎたちは話をした。
「女の人、むずかしいね。」
「うん。むずかしいね。」
「よく、わかんないね。」
「うん。よくわかんないね。」
「そのうち泣き止むかな。」
「うん。泣き止むよ。レディさんはいつもは素敵な笑顔なんだから。」
「湖、まだ大きくなるのかな。」
「どこまで大きくなるかな。」
「きっともう少しで止まるよ。」
「うん。そうだね。もう少しできっと止まるね。」
「………カニさん、うれしそうだったね。」

2羽は顔を見合わせて、ぷくく、と笑った。




「涙の理由」

参考 : 9/11「カレンダー」
   9/17「花畑」
   9/19「夜景」
   9/28「別れ際に」
   10/1「きっと明日も」

10/10/2024, 4:27:10 AM

わたしの片想いの相手がとてもクール、というか表情のあまりない人なので、彼の気持ちがわからなくて、思いつめながら街を歩いていた。
もしかしたら疎まれているなんてこともあるかもしれない…。

そんな時、目の前に、" おかしな駄菓子屋 " というお店があったのでなんとなく入ってみた。

そこでわたしは『ココロがわかる実』
というのを買った。

なんだか危ないからという理由で、中身は一粒だけしか入っていない。

授業の終わった教室で、彼は机に突っ伏して眠っていた。
わりとよくあることだ。
いつもはそんな彼に声をかけて起こすのがわたしなのだけど、今日は実を使ってみることにした。
粒を口に含んで、眠っている彼を見続ける。
お店の人に言われたやり方。

しばらくすると、眠っている彼の背中の辺りから、なにかが出てきた。
心臓に手足が生えたようなものが、ピョコンッ、と彼の背中に立った。

そしてわたしをじーっと見ると、
急に、タップダンスを踊り始めた。

あまりの思ってなかったことに目を丸くしているわたしの前で、彼の心臓は真剣に、必死に踊っている。

そして最後に片膝をついて、わたしに花束を差し出してきた。

驚いていると、それらはすぐにさあっと消えて見えなくなった。


すごくうれしいけど、いろいろ予想外すぎて、しばらく身動きできなかった。




「ココロオドル」

参考 : 7/24「友情」

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