愛情は恋とは随分と仲が悪い様だ。
相手がどのような形でも幸せなら愛情は嬉しく思う。相手も恋をしなければ恋は不貞腐れてしまう。そんな気難しい恋を愛情と人々が呼ぶから、愛情は恋を少し嫌悪しているのだ。恋は恋で相手を想う気持ちと献身は正しく愛情なのだからと、愛情を恋だと認めぬ分からず屋の愛情が苦手だ。
愛情は言う。「他から与えられた愛情で器を作り、そこに溜まった他の器を作るための材料が愛情なの。だからお礼はありがとうで十分なの」と。
恋は言う。「自分の想いを相手に渡すのが恋なの。だからね渡してしまった後はとても寂しいの。相手が想いを渡して来てくれたときにやっと満たされるかもしれない」と。
愛情は恋の話を聞いて、やっぱり恋とは違うじゃないかと恋に言う。でも恋は相手に心を渡す献身を愛情無しにできるかと反論して、話がまとまらない。。
愛情は恋は相手の事を考えてないと言う。恋も愛情は相手の事を考えてないと言う。
似た者同士のこの2つ。されど違いがあるから一緒になれず、出逢えば喧嘩をしている。喧嘩をするほど仲が良いと言えるものなのか?いえ、まだまだこの2つは仲が悪いようだ。いつになったらこの2つは仲良くなるんだろうか。
題「愛情」
どうすればいいの?
再起動してください と私の可愛いノートパソコンが言ったから、仕方ないと上書き保存をしてから再起動をしたのよ。ソレが2時間前。今日しか時間が無いから今日終わらせたいのに、再起動が全くもって終わらない。強制シャットダウンしようとしても、直ぐに点いて再起動が始まる。どうしちゃったの?私のノートパソコン。そしてどうやって作業をすればいいの。どうすればいいの?
放っておこう。
明日の朝まで。作業と共に
ある日私の宝物を壊された。
随分と昔の物だから古臭いのは百も承知。
それでも大事な物だから大切に大切に身につけて来たんだ。
相手も悪気が有ったわけじゃない。
ただ私を驚かせようとしただけ。
肩を押された衝撃で手から離れて行った私の宝物は地面に飛び散った。
その瞬間、思考が停止したのがわかった。
私は散って行った破片を拾い集める。
もしかしたら直るかもしれない。
「ゴメン そんなつもりはなかったんだ」
声のする方に顔を向ける。
私の落ち込んだ顔を見て更に焦った様に相手は言葉を重ねる。
「本当にゴメン 似たものを弁償するよ」
私の気分は最悪だ。晴れるものじゃない。
周りがザワザワと雑音をたてる。
「わざとじゃないんだしさ、許してあげなよ」
「ほら、新しいの買ってくれるって。それ古かったから丁度良いじゃん」
彼らは飛び散った欠片などに興味は無いようだ。
ただ大きな声でその人が故意で無かったことと、コレを弁償することを周りに訴えている。
そして未だに私が相手を許さないことも。
私が悪いように言う。
ならばトビッキリの悪役になってやろう。
「コレね。私の祖父からの頂きモノなの。赤い実を赤い瑪瑙で、葉を翡翠で南天に模した根付け。それを紐の方を少しイジってあったの。まぁ古いものだから壊れ安かったとは思うけれど。弁償してくれる?」
相手は固まった。
そして散らばった実を拾い始めた。
周りの者は散って行った。
相手は実だけ拾い集めると、さっさと帰ってしまった。
コレでいいだろ?と
翡翠の葉は未だ行方知れずのまま。
題(宝物)
あなたとわたしの間には壁がある。
あなたの言葉が分からないという壁がある。
わたしの言葉が伝わらないという壁がある。
あなたが痛そうに苦しそうにしているのに、あなたの言葉ではわたしは理解ができないの。
あなたが楽しそうに幸せそうにしているのに、あなたの言葉ではわたしは実感できないの。
あなたを大切にしたいのに。
あなたの事を知りたいのに。
あなたの言葉が理解できないの。
あなたの顔を歪めるのは、悲しさ?虚しさ?それとも怒り?
あなたの顔を綻ばせるのは、楽しさ?嬉しさ?それとも達成感?
分からないの。
わたしの言葉があなたに伝わらないの。
寂しいと言っているのに。
美味しいと言っているのに。
楽しいと言っているのに。
いつもあなたは仏頂面。
あなたとわたしの間には壁がある。
あぁ疲れた。頑張ったんだ。皆やらないから。一人で頑張ったんだ。ずっと。皆がやらないから。相手をガッカリさせたくないから。やると約束してしまったから。皆やらないから。頑張ったのに。間違えると怒られる。失敗すると怒られる。皆がやらないから一人でずっと頑張ってきたのに。やろうとするとコレは違うと言われる。やったものにもケチをつけられる。皆に喜んでほしいのに、誰も喜んでくれない。私を見ると腹立たしそうにする。分かってるんだ。分かってるよ。私が下手な事ぐらい。でも誰もやろうとしないじゃん。だから頑張ったのに。誰も私に感謝してくれない。どうして?ねぇ。私疲れちゃったよ。なんで褒めてくれないの?認めてくれないの?どうして怒るの?責めるの?何も分からない。私だけがやるから私だけが失敗する。皆やらないから皆は失敗しない。怒られない。他人の声の一つ一つが怖い。怒られそう。責められそう。ケチ付けられそう。怖い。誰か。誰か。助けて。認めて。褒めて。誰か。誰か。
「頑張ったんだね。偉いね。一人で頑張ったんだね。疲れたんだね。そうだよね。こんなに頑張ったんだから。君は優しくて責任感がある子だね。だから一人で頑張ったんだね。凄いね。休もう。疲れちゃってるんだ。休もう。」
あぁ認めてくれる人がいる。褒めてくれる人がいる。嬉しい。頑張ったかいがある。疲れたんだ。良いよね。休んでも。良いよね。優しい言葉。他人に怒られるのが怖くてビクビクしていた私に差してきた一筋の光。休んでも良いよね。あぁこの光が休もうと言っているんだ。休もう。休もう。
「あいつ、仕事来なくなったな」
「助かった!出来ないことも、やります!やります!って言って、あいつがやる仕事こっちにしわ寄せが来てたから。本当に助かった。コレで定時であがれる!」
「元から定時あがりだろ。お前」
「仕事は定時で帰るものよ。というか確実に仕事を仕上げてこそ信頼に繋がるんだよ。だから私はできるものしか出来るって言わないし、出来ないものはやりません!」
「そりゃそうだけど。そんなの詭弁だね。仕事で出来ることだけやっていても会社は回らない。多少の無茶をしないと」
「それもそうだけど。研究じゃないんだから、終わるめどが立たないものまで引き受けてたら身がもたないよ。終わるめど立ってないから結局終わらないし。私だって残業はするときはするんだよ?ただ日常的にしてないだけで。だって業務時間過ぎてやる業務って何?それを日常的にって。馬鹿だよね」
「はぁ。でも責任感と優しさが空回りしているようなやつだったな。あいつ」
「責任感がある人は出来ない事を出来るって言わないし、優しい人は出来ないことを出来ないって言う。じゃないと結局は相手に迷惑かけることになるって分かってるから。そこまで相手の事を考えるから。それをせずに、出来る出来ると馬鹿の1つ覚えのように言うのは、承認欲求が強すぎるだけなんだよ。優しさとか責任感のへったくれもねぇ」
『それなぁー!!』
「おい。言葉遣い!それより仕事しろよ仕事」
『はーい。』
題「一筋の光」