暁星

Open App
5/13/2024, 9:52:24 AM

いつからだろう……生き苦しいことに気付いたのは、みんなが見ている景色と私が見ている景色は違うのかもしれないと。

小学校の教室という世界が、私には社会の縮図に見えた。
みんなが口を揃えて、嫌いだと言う大人と何一つ変わらない、言動も行動も醜い。
だから、私はそこに囚われたくないから、誰にも邪魔をされない本の世界に逃げていた。

何故だろう……大人たちは貼り付けた笑顔でこう言う。
「子供は元気よく外で遊びましょう」
鬼ごっこも、遊具で遊ぶことも、何が楽しいのか私にはわからない……運動が得意な人が楽しいと思うだけではないのか?
なぜ、好きではない、一緒にいても楽しいとは思えない人達と過ごさないといけないのか……苦痛しかない……

クラスメイトに見つかると、遊びという名の強制連行をされてしまうので、絶対に見つからない秘密の場所に隠れる。それは、プール裏と植え込みの間にある、とても狭く小さな暖かな陽だまり。
そこから見上げる空が、私は好きだ。

いつも考えてしまうのは、生きるって何?

人は死ぬとどうなる?

死んだあとどこへ行く?

大人たちは、死ぬと魂は別になると言っていた。

じゃあ、その魂はどこへ行くの?


私がこんなことを考えてしまうのは、小さい時に亡くなった大好きな祖母が、重そうな鉄の扉に消えた棺のあと、大好きな姿がもうどこにも無く……変り果てた姿になり、祖母はもう会えない、人が死ぬとどうなるのか……強く悲しい衝撃だった。

当時は自分の感情が解らず、ただ泣きじゃくり、優しく背中を撫でてくれる父の温もりを強く感じたく、しがみついていた。

たぶん怖かったのだろう……人がいなくなるということに……


だから、私はクラスメイト達が『死』という言葉を簡単に使うから嫌いだ。

知らないから仕方ないかもしれない、でも私は許せないと思ってしまう。
それなら、一緒にいないほうが、私の心を守ってくれる。

私も何も知らなければ、みんなのように無邪気に世界が彩られているのかもしれない……



「子供のままで」

5/12/2024, 10:07:33 AM

「明日、何が食べたい?たまにはフルーツとかどう?」
私の問いかけに気怠そうに目を開けると、微かに嬉しそうに彼が微笑む。
「ありがとう……苺高いかなぁ…無理しなくていいよ、来てくれるだけで嬉しい」
ベッドの柵に置いていた、私の指先にそっと触れた。
男性としては、元々、肌も白く華奢で綺麗な手をしていた、私が大好きな優しい温もりを纏う。でも、いまは硝子のように壊れてしまいそうで、私より細く人形のような指先。
「もう少しここにいるから、安心して」
彼の頬にそっと触れる……予想より高い体温に不安になり、動揺しないように……絶対に悟られないように、いつものように笑顔の仮面を貼り付ける。
「うん……今日はね……眠るまで側にいて欲しい……何故かな……」
私の掌が冷たく気持ちが良いのか、気持ちよさそうに、嬉しそうに微笑む。そして、そのままうつらうつらと微睡み始めた。

最近、よく目にする彼の姿であるはずなのに……何故だろう、とても不安になる。
このまま揺り動かして、寝ないで!と懇願したい衝動と胸騒ぎが拭えない。
規則正しく白く曇る酸素マスクに、そっと安堵の息を漏らす。
大丈夫、絶対に大丈夫……いつも通りだよ、熱も最近よくあることだから……私が不安になってはダメだ。

無機質な白い空間に、たくさん繋がった点滴の機械が目に入り、さらに不安が増す。
昨日より点滴の種類が増えている……

「煩かったらゴメンネ……聞いてほしくて……本当は退院したときに伝えようと思っていたけど、いま伝えたくなっちゃって……いまも、これからも二人共、おじいちゃん、おばあちゃんになっても、ずっとずっと一緒にいよう、大好きだよ……結婚しよう……離れたくないから……ずっと側にいて……お願い……私は貴方がいれば何もいらない……」

壊れそうな掌をそっと私の掌で優しく優しく包み込む、この世で一番大切な宝物。



『愛を叫ぶ。』

4/17/2024, 4:54:27 PM

はらりはらりと音も無く、美しき白い雫が頭上から舞い落ちる。そして、足元には幾重にも広がり続ける、薄桃色に染まった柔らかい絨毯が敷き詰められていた。
ふと見上げると、眩いほど青過ぎる世界が果てしなく続いている。

世界から切り離された私の時間は、重たく纏わり付き、ゆっくりと悠久であり続けていた。
そっと頬を慈しむように、優しく撫で上げるような暖かな風が過ぎていく。

「心配しているなら……側にいて、嘘つき……嫌い……大嫌い……」

止め処なく溢れ続ける涙は、何年経っても枯れることはない。呪詛のように吐き出す言葉は、落ちていく花弁と共に地面に吸い込まれていく。

私にとって、この世で一番残酷な……大好きだった花を見つめ続けた。


『桜散る』

12/31/2023, 9:03:39 PM

昨年は、久し振りに音楽どっぷりの生活に浸りきっていました。ここの更新がストップするほどです。たぶん、20代前半のあの頃に近しい音の洪水を浴び続けた一年になりました。
その音楽を通じて、様々な年齢層、ジャンルの違う今まで出会わなかった人達と関わり、話をして、他愛のない会話でも、刺激を沢山心に刻まれ、ただ楽しかった。
まぁ、実際には文章を書く気力が無くなるほどのダメージも受ける出来事もありましたが、全体的には久し振りに幸せだなと振り返ることができます。

さて、新たな年も幕開けとなりました。
色々、問題は山積みで何も解決はしていないのですが、いまは1月のライブから始まり、また音楽人生を謳歌しようとおもっています。
どこまでも、ぬくぬくゆるゆると私らしく、あるがままに生きたい、そんな一年にしたいと願いを込めて、ここに認めます。


「良いお年を」

8/20/2023, 10:09:37 AM

最近、海外から日本への旅行客のインタビューで印象的なものがある。日本は空が綺麗らしい、東京の空であっても。

地方住みの私は、東京に何回か行くことがあるが、そうだろうか?と疑問を抱いてしまう。
是非、標高の高い山間の空にふわりと浮かぶ、手で掴めてしまいそうな雲。そして、空気の綺麗な田舎の海岸に広がる、水彩絵の具を滲ませた夕焼けを体験して欲しい。

『空模様』

Next