saku

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10/2/2023, 2:05:08 AM

日の入り前の黄昏時
日が昇る寸前の夜明け前

水でいっぱいの瓶を逆さにして蓋を取る
中の水が勢いよく流れて行く
底の穴から
螺旋を描いて

影絵を見る時
影を浮かび上がらせる光の存在を思い出す
そのように今、午前中の光を感じながら
夜の暗さを思い出してみようとする
昼の明るい空間の中に
黒い闇の粒々がびっしり浮かんでいる
私は床に穴を拵えて
両手に渾身の力を込めて
その栓を抜く
せーの!
するとその黒い粒々たちは
その底穴から勢いよく流れてく
二重の螺旋を描きながら

それと同時に私は見る
大量の光がなだれ込んで来るところを
部屋が光でいっぱいになり
天井ギリギリまで押し上げられ
屋根を抜けて
雲を抜けて
大気圏を抜けて
月まで
あの星の
そのまた向こうのさらに奥の奥まで
広がっていく

日の入り前の黄昏時
日が昇る寸前の夜明け前
それは
限界まで満ちたものが破裂するように抜けていく
それを思い出す
楽しいひととき

9/30/2023, 2:06:57 PM

部屋に椅子がある
白い揺り椅子
私の椅子には私が座る
今日もピッタリフィットして
揺れてる

白くて丸いラグ
月みたいなラグに影が映る
私の影が
揺れてる

揺れに合わせて私は歌う
うみはひろいなおおきいな
つきはのぼるしひはしずむ

そう
こぼれ落ちたのは
月のかけら
次の欠片
かけらに紋様が浮かんでる
この紋所が目に入らぬか
入りますよ
九つの紋が見える
それは
かつていた人たち
かつてあった大地
その名残り

揺れる椅子
行ったり来たり
まるで海に浮かぶ船のよう
まるで空に浮かぶ船のよう

風が起こす音
声が起こす波紋
寄せては返す
満ちては欠ける
慣性の法則

体の中を満たす水
ただ揺れるがままに身を任す
そうしてついには
満ちるだけ
その法則を私はもう採用しない

欠けることなくただ満ちて
ついには溢れ出す
あとからあとから
ふんだんに
次から次へ
尽きることなく
溢れ出てくる
その全部を受け止める
すべて残らず受け止める

そうしてだんだん思い出す
もうそろそろ思い出す
自分の大きさ
サイズ感
デカいなんてもんじゃない
でももう止まるのは止める
あるがままの大きさに戻るまで
揺れる
揺れ続ける








9/30/2023, 9:57:59 AM


シーーーーンとした部屋
シーーーーンと静まり返った部屋
鎮まり返った部屋。
石庭のイメージ。

私の中で誰もお喋りしない
癖で長年やってきた
茶々もツッコミも呟きも
一切無い世界

ものすごく静かで
ものすごく平和で
ものすごく自由な世界。

たまーに
小さな囁き声が聞こえる。
ずっと前から知ってたけど、
何言ってるか分からなかったから
ざわつくだけだったヒソヒソ声。
静かになったら難なく普通に聞き取れた

ずっと聞こえていた声は
「オーケーそれでいいよ」
それだけだった。



9/29/2023, 7:03:26 AM

際、端っこで、
引っ張られないこと。
いつもリラックスして自分らしくいるつもり
だけど最後の最後で引っ張られてしまうことがある
それまでぴったり一緒にいたとしても、別れる瞬間、その隙を突くようにして
フラッと魂が離れてしまうことがある。

もうフラフラしない、
どこまでも自分と共にいる、
そう固く決めたつもりでも
それは何度でもやって来る。
だってこんなん当たり前でしょ?
これが普通だよ。
長い長い人間の常識なんです。
澄ました顔して
それは何度でもやって来る。

今、誰かと別れる。
手を振る。ドアを閉める。
さようなら、お元気で
それでは後ほど…
またおいで
ではまた来世で。

その時も決して緊張しないで
一旦深呼吸して、リラックス。
別れる相手の魂とではなく、
自分の魂と一緒に居続ける。
何も言わずに
ただ一緒にいるだけでいい
ただ此処に
共にいるだけでいい
いいんです。











9/27/2023, 7:53:51 AM


秋晴れ
秋子さん
秋日和
麦秋
秋刀魚
晩秋

実家の本棚の背表紙に並んでた
文字の数々
いつのまにか
棚板は崩れ
本棚は崩れ
埃の砂漠が広がる
床に本棚が沈んでゆく
次は床が沈む
その次は柱が沈み
壁は埃の塊となって
散りゆく
家の盛り土2メートル
父が建てた大きな家
まだ若かった父の姿
希望に満ちた男の人が
何もない砂利の上に立っている
だけども風が吹くたびに
砂利は砂粒に戻り
砂粒は海水を含んで海底の泥
干拓地は江戸時代の海に戻り
石の中ですやすや眠っていた貝たちは
次々に息を吹き返す
そうして戻る
元へ戻る
縄文の海へ
生まれ直す
はじめから


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