お題「時を告げる」
ずっと、仮初のピースだけで埋めてきた。
愛してほしいを隠すために「嫌い」を嵌めて
寂しいを隠すために「一人が好き」を嵌めた。
そうやって、時が経つのを何度も待った。
そして大抵、時が経てば「平気」に変わるはず
そう思っていたけど、その''平気''も仮で、
何度もパズルがぐちゃぐちゃになって
そのたびに自分がわからなくなるほど泣いた。
何度も、家族への「嫌い」の穴を
「そんなこと思うのは悪だ」で埋めてきた。
そのたびに何故か首が締まって息ができず
「死にたい」のピースが増えていた。
もちろん「好き」のピースだってあるのに、
中には、どこにもはまらないピースもいた。
でも、少しだけわかるようになったかもしれない。
嫌いのピースは嫌いなまま、嫌いの穴へ、
好きのピースは好きのまま嵌めていい。
正しい場所に正しいピースを嵌めていいんだ。
自分の人生、自分のために生きなきゃいけない。
嵌められなかったピースは、きっと自分の迷いだ。
「嫌い」は「嫌い」「好き」は「好き」
その境界線をちゃんと分けてあげれば、
きっとパズルは完成していく。
もう、無理やりピースを変える必要はない。
自分の思ったままの気持ちに嵌めてあげていい。
そうやって自分の人生を作っていい。
きっと私にも、その権利があるはずだから。
そう信じていいと、言われているような気がした。
お題「貝殻」
砂浜に足を踏み入れたのは久しぶりでうまく歩けずにそっと砂浜に座って、寄っては返す波を
ぼんやり見つめていた。
指の間にサラリと入る砂は痛くなくて、
むしろ、何か、くすぐったさを覚える。
力を込めると固まる砂、
離すととたんにサラリと消えていく。
そんな砂の中に埋もれた、小さな貝殻を拾う。
おそらくかけてしまったであろう小さなそれは、
とてもきれいな色をしている。
ザワザワ、サーサーと波音が心地よく
優しい砂の暖かさを感じながら
そっと貝殻を持ち帰った。
飾るのもいい、ストラップにしてみようか。
たった一つの貝殻、その一つに
いろんな思い出を詰めていくように。
何もなかった。
夢中になれる好きなものも、生きがいだといえるほど熱中している何かも。
ただぼんやり、モノトーンの日常が過ぎていたある日
画面越し、楽しそうに笑うあの人を見たんだ。
自分にできないことを無邪気にやってのける。
話が面白くて、見ていて勝手に笑ってしまう。
「もっと知りたい」
直感的に心が動いて、興味のある出演作を
片っ端から見るようになった。
見れば見るほど「好き」が増して、
どんどん世界に色がついて、きらめきはじめた。
人生が、動き始めた。
お題「些細なことでも」
「先生だから」とか「友達だから」とか
「〇〇だからそういうふうに言ってくれるんだよ」
と言われることが時々ある。
そりゃ、立場上の本音と建前はあるだろう。
私自身、優しい声をかけられたとき
それは本音か建前かを疑ってしまう人間だ。
だから、そんなとこを言われたら
「そうかもしれない」と思わないわけじゃない。
けど、立場上の建前だとしても、
その頃の私にとってはすごく嬉しい言葉だったんだ。
「そんなことで?」と言われるかもしれない。
それほどまでに、人から見て「些細な言葉」が
もし建前だったとしても、私にとって泣いてしまいそうなほど嬉しいものだった。ありがたいものなんだ。
お題「心の灯火」
頭の中がいっぱいいっぱいだった。
その割に、現実の出来事に対して頭が追いつかないみたいに、別のどこかは空っぽに感じた。
それなのに、気を抜くと涙が出そうになった。
「なんで…」とさらに混乱して、
ただ泣きながら、やるべきことを続けた。
考えてしまったら負け、
そんな気持ちでただひたすら、
止まらない涙と嗚咽を無視しながら。
どうにもこうにも解消できないそれを抱えていると
友達数人が「無理しすぎるな」と釘を刺した。
苦しい、けれど無理をしている実感はない。
そうしていくうち、一人の声を聞いて焦った反面、
何かの力が抜けたような気がした。
「今言っても無理かもしれないけど、
頑張りすぎず、ゆっくり休みなよ」
笑って「頑張ってるつもりはないんだけどなぁ」と
思っていた数時間後、私は泣きそうなほど、
自分がその声に安心していたことに気がついた。
「今はそんな甘えて泣いてる場合じゃない」
そうやって自分を奮起させた。
けど確かにその一声で、私の心には「大丈夫だ」と火が付いた。
そしてその火は今も、必死な私の心の
大事な熱になっている。