題 羅針盤
私はどこへ向かえばいいのかな?
「こっちだよ」
いつもひっぱってくれるよね、あなたが。
分からなくなった時、迷った時、挫けそうな時、いつも傍にいて、抱きしめて慰めて優しくしてくれる。
言葉が柔らかくて、どこまでも解けていく布のように私の中に積もっていく。
あなたが言ってくれるから、私はあなたにありがとうっていう。
言うけど可愛くない感じで言っちゃう。
だって照れるんだもん。
私が素直になったら、あなたは私がおかしくなったんじゃないかって疑うよね。
失礼な。
私だってたまには素直になることだってあるんです。
あなたが今までいてくれたから、本当は私は救われてた。
まぁ、傷つけられたことも多々あるけど、人生ってそんなものでしょ?
傷つけられて傷つけて、それでも、笑い合えればいいよ。
今はそう思える。
ケンカしても、一緒にいられるなら、話せるなら、優しくし合える時があるなら。
素直になれない自分がたまに嫌いになるけど、あなたはどんな私も好きって言ってくれるから、だから、私は自分のこと、好きでいられるんだ。
考えてみるとあなたがいるから、私は自分を好きでいられるのかもしれない。
ありがとう。
うん、言葉に出して言うことはないかもしれないけど、とってもとっても感謝してるよ。
あなたの存在の大きさを今更ながら実感してしまうよ。
題明日に向かって歩く、でも
明日に向かって歩きたい。
あなたと一緒に。
でもあなたは全然私の方見てない。
隣にいるのに隣にいない気がする。
あなたが見てるのはいつも私以外。
だから寂しい。
でも、あなたといたい。
好きだからね。
好きな気持ちは理屈じゃないから。
だから厄介だって思う。
こんな気持ちなければさ、とっくに離れてるんだよね。
ジロっと隣で他の女の子にデレデレしてる彼を睨む。
「どっち見てるのよ?!」
「いや、なにも見てないよ、なにいっちゃってんのかな~?!」
軽い返答。
こんな感じで答えてるけどさ、何回浮気発覚したと思ってるの?
くやしい。
悔しすぎる。
なんで好きなんだろう。
私の気持ちにすらトゲトゲした気持ちを向けてしまう。
だって報われなさすぎる。
彼が私の事好きなら、思っていたら幸せなんだけど。
一方通行すぎるんだもの。
彼が見てるのはさ、私以外の女の子達なんだもの。
でも、別れられない。
⋯好きだから。
これって呪いに似てない?
全然楽しくないのに、辛いのに、やめられない。
「なぁ、これ、こないだパチンコの景品で買ってきたんだけど」
そう言いながら、思いついたように彼がポケットから私の好きなマスコットのキーホルダーを出す。
「えっ?これ、私が好きなのじゃん」
私が声を弾ませると、彼は笑う。
「だろー?俺ナイスって思ったわ、この景品見つけた時、やるよ」
「ありがと~」
どうしよう、嬉しい。
私の好きなキャラクター覚えててくれたんだ。
私の心は一気に天まで舞い上がる。
さっきよそ見してたことなんてどうでも良くなる。
⋯分かってる。分かってる、こんな感じだから私は彼から離れられないのよ。
⋯でもさ、考えてみて、恋は盲目って言うでしょ?
まさに今私は盲目状態。
いつか目が覚めるまで、こうして彼の傍にいることをやめられないのよ、きっと。
題 ただひとりの君へ
ただ1人の君へ
好きだよ、とんでもなく好きだ。
僕より君を好きな人はいないって絶対的に確信が持てる。
どうして?
だって、君のこといくら見ても飽きないしいつも可愛いと思うし、しっかりしてるようでどこか抜けてるし、そういうとこ含めて好きだなって思うから。
それにさ、年月がいくら経っても飽きないのも我ながらすごいと思う。
これだけ好き好き言ってくれる人は他にいないでしょ?
僕と結婚出来て幸せでしょ?
え?なんで呆れた顔するの?
聞き飽きた?
そんな事言わないでよ。僕にとっての君はいつまでも大好きな恋人なんだから。
だから、いつまでも好きって言うよ。
例え君が飽きてもね。
またどうしてっていうの?
そういうとこも可愛いけど。
どうしてかって言うとね、君は言葉にしないと分からないと思うからだよ。
こうして言葉にしたら、君は安心するでしょ?
僕は君を不安にさせたくないから。
え?何その顔?
言いすぎても言葉に重みがなくなるって?
言わなくて君を不安にさせたくないからいいの。
僕の想いは伝わった?
⋯頷いてくれたね、良かった。分かった分かったってその反応はちょっと気になるけどね。
まぁ、いいよ。さ、寝よっか?
今日も一日一緒にいてくれてありがとう。
おやすみ。
題 手のひらの宇宙
この手のひらに宇宙があったら面白いよなぁ
私はふと授業中に自分の左手を見つめながら考える。
もしここに宇宙があったら、私はどうするだろう。
そう、コスモ、全ての宇宙と星が私の左手にあったなら。
その中に惑星もあって、銀河系もあって、何もかもあるんだ。
手の中のミクロのナノミクロのもっともっと小さいところに地球もあるんだろう。
そして、そこに人間がいて、私がいるんだろう。
そうしたら、私は今教室に居て同時に手の中にも居るってことになる。
面白いよね。
自分が神のような存在になれるのかもしれない。
私がもしこの手のひらにあると仮定する宇宙を握り潰せば、私は自分の手に瞬時に握りつぶされてしまうんだろうか。
一瞬で死んでしまい、宇宙も滅びていくんだろうか。
こんなことありえない。
そう思うけど、ありえない?本当に?とも思う。
宇宙の先にあるものも、何もかも解明されてないのだから、誰か巨人の手のひらに、神の手のひらに宇宙があるってこともあるのかもしれない。
その手のひらの上で私たちは転がされている存在なのかもしれない。
いつ潰されるか分からない。
誰かの気まぐれに委ねられた宇宙。
それでも誰も気づかない
その事には気づかれることはない
だって、まだ解明されてないことだから
今はまだその仮定は私の頭の中にあるだけだ。
題 風のいたずら
突風が吹く。
あっ!!!
私の被ってる帽子をふわりとさらっていくと、そのまま帽子は下に落ちてコロコロと道路を転がっていく。
まってっ!
私は読んでいた本をベンチに置くと咄嗟に立ち上がって逃げていく帽子を追いかけていく。
ふわり、少し風が緩んで帽子の転がる速度が下がったかと思うと、私が手で掴もうとするとヒュルーンとまたしても強めの風が帽子をさらっていく。
私と風の帽子追いかけっこをしているようだ。
しかも坂道の傾斜もあいまって、帽子はどんどん転がっていってしまう。
「まって~~~!!!」
私の声に風も帽子も応えてくれるはずもなく、どんどん先へ先へと行ってしまう。
このまま先に転がると大通りに到達してしまう。
そしたら帽子が車道に転がって車に潰されるし、交通量多いから取りに行くのが困難になってしまう。
「わーーー待って待って!」
思わず口に出た言葉。
私はそう言いながら走るスピードを早める。
運良く少し風が緩くなる。
よしっ!私は走るスピードを限界まで早めて、何とかハシッと帽子の端っこを握った。
良かった。
あと少しで車道に転がり落ちる所だった。
私は手の中の無事な姿の帽子をみて安堵のため息をつく。
そして、帽子をしっかり被り直すと元きた道を引返す。
あれ?何か忘れてるような…。
あ、本っ!
不意に思い出す。
ベンチに置きっぱなしだった。回収に向かわねば。
そう決意すると、走って坂を登って今度は向かい風と戦いながら本の元へと走っていったのだった。