題 風のいたずら
突風が吹く。
あっ!!!
私の被ってる帽子をふわりとさらっていくと、そのまま帽子は下に落ちてコロコロと道路を転がっていく。
まってっ!
私は読んでいた本をベンチに置くと咄嗟に立ち上がって逃げていく帽子を追いかけていく。
ふわり、少し風が緩んで帽子の転がる速度が下がったかと思うと、私が手で掴もうとするとヒュルーンとまたしても強めの風が帽子をさらっていく。
私と風の帽子追いかけっこをしているようだ。
しかも坂道の傾斜もあいまって、帽子はどんどん転がっていってしまう。
「まって~~~!!!」
私の声に風も帽子も応えてくれるはずもなく、どんどん先へ先へと行ってしまう。
このまま先に転がると大通りに到達してしまう。
そしたら帽子が車道に転がって車に潰されるし、交通量多いから取りに行くのが困難になってしまう。
「わーーー待って待って!」
思わず口に出た言葉。
私はそう言いながら走るスピードを早める。
運良く少し風が緩くなる。
よしっ!私は走るスピードを限界まで早めて、何とかハシッと帽子の端っこを握った。
良かった。
あと少しで車道に転がり落ちる所だった。
私は手の中の無事な姿の帽子をみて安堵のため息をつく。
そして、帽子をしっかり被り直すと元きた道を引返す。
あれ?何か忘れてるような…。
あ、本っ!
不意に思い出す。
ベンチに置きっぱなしだった。回収に向かわねば。
そう決意すると、走って坂を登って今度は向かい風と戦いながら本の元へと走っていったのだった。
1/17/2025, 11:22:47 AM