題 部屋の片隅で
私は部屋の片隅で膝を抱えてる。
希望がないから。
そうだよ、何も出来ないんだ。
いつも思う。
取り柄があるわけじゃない。
頭がいいわけじゃない。
何もない自分。
どうしてそれなのに生きていかなきゃいけないの?
私に何もないなら、平凡なら、突出するものがないなら・・・。
どうして、私は私に自信が持てるんだろう。
みんなイラストが上手くてさ、文章が上手くてさ、運動が上手くてさ、綺麗で、私にはないものばかり・・・。
私はずっとずっと人を羨んでいく人生なのかな。
そう考えてしまうと、どうして、どうして生きていかなきゃいけないのか。
意味があるのかって思っちゃうんだ。
イジイジモード発令中。
そう、そんな自分に嫌気しかない。
でもね、でもこうも思う。
もし、全てが与えられたら?
全てがあったら、もう何も成長出来ないんじゃないかって。
全てがないから、成長出来るんじゃないかって。
私、ゲームだってレベル99にあげたらなにも出来ないもん。やることないもん。
今そうじゃないから、成長できるんじゃないかって。
成長出来るって幸せなことなんじゃないかって。
諦めさえしなければきっと、私はレベル1個ずつ、1ミリずつ上げて行けて、明日は昨日の私よりも1ミリ、レベルが上がっていけてるんじゃないかって。
しかも、1ミリの成長じゃ毎日成長してるかわからないじゃん。
きっとね、沢山の時が経って振り返ったら、私は沢山持てて成長しているんだ。
ほら、イジイジモード終了
こうして、発想の転換をするとイジイジモードは終了する。
うーん、そーいえば、私って発想の転換の才能はあるのかも!
題 逆さま
今私だけ逆さまの世界になったとしたらどうなるんだろう。
私は教室の天井を見てたまに思うの。
あの天井を歩いて、電気とかもヒョイって乗り越えて、それからみんなが逆さじゃないなら、私だけ忍者ごっこ出来るよね?
仰向けに天井に寝るだけで、みんなにびっくりされちゃう!
それは楽しいかも、なんてフッて笑みをこぼす。
意外とドアは遠いかも。天井から離れたとこに設置されてる。
ドアまで頑張ってジャンプして外に出なきゃ行けないかな。
あ、そうそう、外に出たらどうなるのかな。
どこまで引力でひっぱられるのかな?
どこまでも上に空に宇宙に落ちていってしまうなら・・・。
それなら、ヒモで結んでいてもらわないと。
落ちないように外に出たら地面がないからね。
そしたら寝るのも天井なのかな?
家の天井、寝るの大変そう・・・。
寝心地凄い悪いんだろうな・・・。
・・・待って、私だけ重力に反してるなら、ご飯は?
ご飯届けてもらうの大変すぎない?味噌汁は?飲めない気がする。
こ、困る、それは、というか、友達ともよく考えたら遊べないし、全然便利じゃない、逆さまの世界って不便すぎ、考えるのや~めたっ。
なんて、私の思考が天井を歩けたらごっこから戻ると、苦手な数学の授業の、更に苦手とする証明問題の解説だった・・・。
うわぁ、地獄。
この世界でこうして重力通りに生きるのも大変だよね。
私は1つ重いため息をついた。
題 眠れないほど
題 夢と現実
ねぇ、オトナになったら何になる?
そうだなぁ、ケーキ屋さんかお嫁さん!!
そんなセリフ幼稚園で言ってたっけ。
可愛かったなぁ。
大学の講義の帰りにクスリと一人で笑う。
広々としたキャンパスと青い空を見て思う。
私は今、あの夢ってどうしたんだろう。
ケーキ屋さんなんてなったとしても時給低いし、お嫁さんなんて、それこそ収入安定しないと、子供だって作れないし、結婚なんてまだまだ先だ。
夢になんて出来ないと思う。
こんなに現実的思考になってしまった自分に一つ小さいため息をつく。
もっと自由に生きられたら、私、ケーキ屋さんになってたかな?
ショートケーキやスポンジケーキ作るパティシエの専門学校に行って、今、目を輝かせてお菓子作りしてたかな。
それとも、付き合ってる彼氏と結婚のことを話して、何年後には結婚したいね、なんて情報誌見ながら話してたかな。
私、今は経済学部で勉強してる。
親がケーキ屋さんなんてだめだって専門学校行かせてくれなかった。
結婚だって・・・今彼氏がいない私にとっては夢の夢物語だ。
はぁぁ。
大きなため息が出る。
経済の勉強はためになるんだろう。
そうだね、現実を生きるならそれが正解なんだろう。
でもね、私は必ずしも正解を求めてはいなかったんだよ。
親の正解のまま生きていたかったわけじゃないんだよ。
私の夢は宙ぶらりんなままだ。
分岐した道にはもう戻れないのかもしれないけど・・・だけど、確かにそこにあった選択肢。
選べなかった未来を思ってもう一度大きなため息をつくと、私は大学の門をくぐって帰路へとついた。
題 さよならは言わないで
「ごめん、もう別れよう」
私が彼氏とデートしている時に急に言われた言葉。
「え?嘘だよね」
一緒にこれまで普通に話してて、急に言われた。
それってデートの最初に言うべきじゃないの?
何で一緒に映画行って、感想言い合って、カフェに入って一息ついてる時に言われなきゃいけないの?
完全にタイミング違うよね?
という気持ちとともに、嘘であってほしいという気持ちもある。
付き合って2年たって、そりゃ、マンネリ感なきにしもあらずだけど、別れるなんて・・・そんなの、急に気持ちの整理がつかない。
「えっと・・・嘘、でしょ?」
彼の深刻な表情を見て多分本当のことなんだろうな、と思いながらも再度問う。
彼は私を真剣な眼差しで見つめる。
「他の人好きになっちゃったから」
「それは・・・きついかも」
聴いた瞬間こぼれてしまう言葉。
聞きたくなかった。
ドラマみたいなセリフを耳にしながら、私はどこか他人事のように聞いていた。
「ごめん・・・」
「いや、謝られても」
としか言いようがない。
謝ってもこの事実は変わらないんだから。
私がどうしようと、もう相手が決めたことなんだから。
・・・仕方ないよね。
「分かった、今までありがとう」
って言うと、相手が焦った顔をする。
・・・ん?なぜ?
「どうして?別れるんだぞ?」
「うん、だから今までありがとうって・・・」
「じゃなくて、待ってとか、嫌だとかないのか?」
「え・・・」
その発想はなかった。
・・・というかさー。
「私がすがって、あなたは気持ち変えるの?私の方選ぶの?そうはならないよね。なら、そんなことしたって仕方ないじゃない。あなたはもう他の人を選んじゃったんだから」
・・・自分の心が冷静なことが自分で怖い。
恐ろしく冷静でいる自分。
目の前の彼に心が動かない。
「あっそ、ほんっとお前って可愛くないよな。じゃあな」
彼はそう言い捨てると、そのまま会計もせずカフェから出ていってしまう。
そっか、こんな終わり方なんだ。
今までたくさんデートしたのに。
沢山好きって言ってくれて、一緒に笑い合ったのにさ。
別れるときってこんなにあっさりしてるんだね。
あなたこそ、私に対して、そんなに気持ちなんてなかったんじゃない。
なのに私を責めるの?
気づくと、手にしたコーヒーカップにポトリと涙が一滴落ちていた。
冷静なんて嘘だ。
嘘だよ。心を一時的に殺したんだ。
別れたくなんてなかった。もっと一緒にいたかった。
でも、そんなみっともないこと言えなかった。
今さらこんなに悲しいなんて、苦しいなんて・・・
後から後から溢れてくる涙をハンカチで拭いながら私は思う。
さよならなんて言わないで欲しかった。
一緒にずっといたかった。
どんなにマンネリでも、私はあなたが大好きだった。
その気持ちは、溢れ出す涙とともに膨れ上がる。
拭ってもこみ上げてくる悲しみと蘇ってくる思い出。
でももう言われてしまったから。
さよならを言われる前には戻れない。
私は涙がどんどん染み込んでいくハンカチを手に、しばらくカフェの席を立つことも出来ずに彼との思い出を思い出しては悲しい涙を流していたんだ。