ミントチョコ

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10/12/2024, 12:35:16 PM

題 放課後

放課後は好きじゃない

だって、みんな部活で私はやることないし。
私は動くのが嫌いだから、1人帰宅部だ。

部活すればって友達に言われるけど、興味ないんだよね。
それに早く帰りたい。

だから、嫌いなのは、正確にはホームルームが終わってから家に着くまでの一人の時間だ。

靴箱から靴を取り出して、帰宅しようとした時、ちょうど同じクラスの竹下と一緒になった。

「あ、宮野、今帰り?」

「うん、帰りだけど・・・竹下は?部活は?」

結構体育で活躍していた印象だから、運動部なのかな、と思って聞いてみる。

「部活してないけど、帰宅部。他の友達みんな部活でさ」

「あ、竹下も?一緒だね」

私はその返答を聞いた途端親近感を覚える。

「宮野って部活してないんだ?してそうなのに」

「私もそう思ったけどね、竹下も部活してそうって」

「僕?僕は早く帰って勉強したいから」

「え?そうなの?!」

意外な返答が返ってきて、びっくりして、竹下をまじまじと見る。
私と同じ部類の人間だと思ったけど、全然違ったみたいだ。

「そうそう。東高目指しててさ、だから部活してる時間惜しくて」

「す、すごいね・・・」

超難関校の名前を聞いて、私は萎縮してしまう。 
私みたいに面倒なことしたくないっていう理由じゃないんだ。

「すごくないよ、だって僕がしたいことだから」

「いや、凄いから、私部活とか面倒だな、とか、家でゆっくりしたいなっていう理由で部活し出ないだけだもん。すごく尊敬するよ」

私がそう言うと、竹下は照れたように頭をかいた。

「ありがとう。でも、頑張っても、なかなか学力が届かなくて、部活やってたら受からないっていうのが本当の所なんだけど」

「すごいよ〜!そうやって目標にむかって頑張れるのって才能だと思う!!私もそういうこと見つかったらいいのになぁと思うよ」

「宮野はないの?目標」

私が竹下に感心していると聞き返された。

「え?う〜ん、絵を描く位かな?コミック読んで、模写したり。イラスト描くのは好きなんだ」

「そっかぁ、じゃあ美術部とかも良さそうだけどね」

「なんか違うんだよね、美術部みたいなのじゃなく、私はコミック調のイラスト描きたいんだ。そういうの描いている時は、楽しいから、家に帰りたいってのも正直ある」

私の言葉を聞いて、竹下が頷いている。

「そっか、宮野もちゃんと自分の好きなことしてるんだね。それも目標に続いてる道かもね」

いつの間にか、一緒に下校の道をたどっていた私たち。
話に夢中になって無意識に一緒に歩いていた。

「これが将来の道に続くと思う?私、自分に才能あると思えないんだ」

イラスト、ネットで見ると沢山上手な人がいて、劣等感にいつも負けそうになってしまう。
私にはできないんだ、無理なんだって。

でも、描くことは好きだから、やめてないけどね。
ひたすら絵は描き続けているけど。

「続けていれば夢に近づく確率上がるんじゃないかな。僕も、勉強毎日してるけどさ、正直無理って思う日もあるけど、でも、やらなければ確率は平行線のままだけど、やりつづければ合格率は上がると思うんだ。そうしたら頑張れるよ」

「確かに」

私は竹下の言葉を聞いて頷いた。

そうだよね、描かなければ画力も上がらないけど、小学校の頃から頑張っていた私は確実に上手くなってる。

コミュニティでも、上手いって言ってもらえる時はとても嬉しい。頑張ろうって思う。

「お互い、毎日コツコツ頑張ろうよ。そうしたらきっと、自分の夢に近づけるから」

「そうだね・・・そうだね」

私は竹下の言葉に何度も頷いた。
夢は・・・漫画家の夢はいつか叶う日が来るかもしれない。
少なくともやらないよりやりつづける毎日の先に希望はあるって思えたから。

「ありがとう、竹下」

私は竹下に笑いかけた。
こんなにウキウキする気持ちの放課後は初めてかもしれない。

「どういたしまして」

竹下は私に笑い返した。
何となくその場の空気が明るく色づいた気がした。

私達はそのまま、最寄りの駅に着くまで、お互いの夢について語り合いながら帰っていったんだ。

10/11/2024, 11:08:53 AM

題 カーテン

カーテンの隙間から柔らかい光が差し込んで来た。
朝、目覚めた私はベッドに横たわって休日の光をただ受け止めていた。

優しい光のシャワーをたボーっと浴びていると、心が癒されて行く。
日差しが体に触れるとその場所がほんのり暖かく、気持ちが幸せに溢れてこぼれだす。

幸せ・・・。
幸せな1日。

会社にも行かなくていいし。
こうしてただ何もしなくていい時を過ごせることがたまらなく幸せに感じて。

何をしようかな。

そう思えることが心をウキウキと跳ねさせる。

今日、これからの時間、何をしようかと考えていると
楽しいアイデアが次々と沸いてきた。

好きなフレーバーティを仕入れに行こうかな。
それとも近所に出来た高級なカフェに行ってケーキの味を味見しに行こうかな。

考えているだけで頭の中がピンクのふわふわしたもので満たされていくようだ。

カーテンの隙間から見える青空も空も
いつも通勤の朝に見る時は暗い色に見えるのに、今日はきらきらパステルカラーに見える。

私はしばらくそうしてまどろみながら休日のプランを考えてから、うーんと伸びをした。

さぁ、今日というかけがえのない素敵な1日をはじめていこうか!!



10/10/2024, 3:21:41 PM

涙の理由

私はキッとシンジを睨んだ。

「ねぇなんで私が怒ってるか分かってるの?!」

「え、知らないけど」

私の声に表情を変えずシンジは言葉を発する。

「何だっけ?」

くぅぅ、この男っっ

私は涙目でシンジを睨む。

「昨日、デート遅刻してきたでしょ?」

「あ、悪い悪い、寝過ごして」

「・・・その後、財布忘れてきたよね?」

「あ、まぁ、昨日は飛び起きてすぐ家でたからさ・・・」

「その上、すぐ帰ったよね?!用があるとか言って」

「用事あったからさ」

「へぇ、そーなの、遅刻して食事代おごらせてすぐ解散ってどんなデートなのよ」

一人夜に、駅前に放置された悲しみが蘇って、目尻にじわっと涙がにじんでくる。

彼氏は、私をチラッと見ると、バツが悪そうに頭をかいた。

「悪かったよ、そんなつもりじゃなかったんだ」

「そんなの全然言い訳にならない!!」

私の中の感情がヒートアップしてくる。
だって楽しみにしてたのに。
だからこそ、昨日の、デートがっかりしたんだから。

「今日さ、本当はもっと楽しいデートにしたかったんだ」

「は?」

穏やかな口調で話しかけるシンジに私は言葉の勢いを失う。

「今日、付き合って1年だろ?バイトずっと内緒で入れててさ、昨日はプレゼントも予約して、財布の位置もいつもと違う場所に入れてたし、ろくに寝ないで夜もバイトしてたから遅刻までして、悪かったよ、おまけにプレゼント受け取りに行けそうなの、昨日の夜しかなくて」

「え・・・覚えててくれてたの?」

私、絶対忘れられてると思ってたから、祝おうっていう気持ちもなかったのに。
今日会おうって彼から連絡来たんだ。

「覚えてる。というかマナが俺の携帯にちゃんと登録してる」

「あ、そっか、そうだったね・・・」

思わず笑みがこぼれる。
そんな私を優しい笑顔でみつめるシンジ。

「これ、受け取ってくれる?気にいるか分からないけど」

シンジがリボンで包まれたプレゼントを渡してくれる。

「開けてもいいの?」

私が問いかけると、静かに頷いた。

開けると、小さいダイヤモンドの可愛く繊細な雪の結晶のネックレスだった。
有名なブランドのだ。

「こんなの・・・こんなの・・・いらないよ」

私は急激に視界がゆがむのを感じながらシンジに訴えた。

予想した反応と違ったんだろう。シンジがうろたえる。

「え?!気に入らなかったか?」

「違う」

私はシンジに抱きついた。

暖かい、シンジのぬくもりに安心する。

「私はシンジがいてくれればプレゼントなんていらない。無理してくれなくてもいい」

私の言葉にシンジはハッと息をのむと、強く抱きしめ返して来た。

「そんなこと言っても大切なマナとの記念日だから、プレゼント、あげたかったんだ」

「シンジ・・・怒っちゃってごめん」

私はシンジに抱きしめられながら急激に罪悪感を感じていた。

「いいよ、俺が無理してたのが悪い。来年はもっと前から用意するから」

「もういいってば。だって私はそんなに高くない時計だよ?恥ずかしい・・・」

私がプレゼントの包みを差し出すと、シンジは受け取って微笑んだ。

「マナからもらえるなら何でもいいよ」

「私だって同じなんだからね」

涙はいつのまにか消えていた。
私は目の前の愛しい恋人の優しい気持ちを再確認して、笑顔でもう一度優しく抱きしめた。

10/9/2024, 12:11:16 PM

題 ココロオドル

弾む心

そう、だって今日は彼氏とデートだから。
嬉しくてくるくる回ってると、道行く人にジロジロ見られた。

いーんだもん。
そんなことでこの私の心の高揚は止められない。

「こーら、またくるくる踊って、迷惑だろ」

頭に手のひらの感触がすると思ったら、後ろから彼氏が呆れたように私を見つめてた。

「だってぇ」

私はそう言いながら、彼氏の手の上に私の手を重ねる。

「デート嬉しかったから、ついつい体が動いちゃって」

「うん、知ってる。初デートの時踊ってる人がいると思って、近づいたらアカリでびっくりしたのなんの」

彼氏はなぜか遠い目をしている。

「ココロオドルと、ついつい体も動きたくならない?!幸せすぎて」

「うーん、理性が勝つかな、僕の場合。というか、ほとんどの人はそうだと思うけど」

「そうなんだ」

ちょっとガッカリ。
みんな、楽しい気持ちを体で表現できたらお互いにどんな気持ちかわかり会えると思うのに。

私が落ち込んだ様子なのをみて取った彼氏は取りなすように言葉を付け足してくれる。

「ま、まぁ、でも、人が、周りにいないとこなら踊ってもいいよ。僕しか見てない所なら」

「そうなの?迷惑じゃない?」

ついつい心の赴くまま踊っちゃってたけど、実はすごく迷惑がられてたのかな?
今更ながら不安になって、私は彼氏を見上げる。

「迷惑になるほど動いてないし、正直、僕の前で踊る分には可愛いと思う」

普通にストレートに言われて、私は表情を止めてしまう。

「え・・・あ・・」

「あれ?嬉しくなかった?アカリなら、絶対に喜んで踊りまくると思ったのに、止める準備してたのにな」

「カーイートー?」

おどけたような口調で言うカイトを軽くにらむ。

「そんな私、踊り狂ったりしないもん、それに・・・そーゆうのは反則だし」

「何が?」

面白そうな顔でカイトが尋ね返す。

「だから、そーゆーストレートな表現は喜びより照れの方がきちゃうから・・・」

私がもごもごいっていると、カイトは笑顔で不敵に私を見つめる。

「なるほどね」

「な、なによ?!なるほどって」

その態度がなんとなく面白くなくて聞き返すと、

「じゃあアカリの踊りを止めたい時は、大好きって沢山言えばいいわけだ」

「カイトっ、そういうのを手段にしちゃだめだと思うの・・・」

私はからかわれてるのはわかってるのに動揺を止められない。

「うん、でも手段じゃないから。大好きだよ、アカリ・・」
「カイト〜!もうっ!!恥ずかしい〜!!!」

私は動揺のあまり手を振り回してしまう。

ガコンっ

派手な音がして、こぶしはカイトの顎にヒットした。

「いたたっっ」

カイトがうずくまって、私はあわてて駆け寄る。

「大丈夫?!」

「うん・・・なんとか・・・いや、でも、アカリはストレートな表現だと暴れ出す、と、攻略はまだまだだな」

涙目のカイトに、私は何も言えなかった・・・。

10/8/2024, 3:24:11 PM

題 束の間の休息

束の間、
ちょっとだけだから・・・

私は大きな木の下の涼しそうな木陰にチラッと目を向けるとそこへ吸い寄せられるように向かっていった。

午後の日差しが柔らかい。
まだ夏には早い、ちょうど涼しいひととき。

木陰で座っていると、不思議の国のアリスのことがふと頭をよぎった。

なんだろう

クスッと笑みがこぼれる。

木陰に座ってまどろむ私の前をうさぎが今チョッキを着て走っていったらびっくりして目が覚めるんだろうな・・・

そんなことを考えている間も、やさしい風の誘惑に抗えるわけもなく、私の瞼はどんどん下がっていく。

気持ちよいと何か思考を挟むヒマもないくらいあっという間に意識が夢の国に飛んでいってしまうんだろうな。

そう考えたのを最後に、私は意識を手放した。


ハッ

不意に目を覚ます。

「いけない!!」

辺りが暗いのが一番最初に見て取れて、私は覚醒直後勢いよく立っていた。

ああ、やってしまった・・・私のカバンに入っている図書館の本にチラと目をやる。
今日返そうと思ってたのに・・・。

仕方ない、また次に返そうか。

そう思いながらスカートをはたいて起き上がる。
今何時かな?

時計をみると、もう夜の七時だった。

なんてこと!!

時間を見て驚愕する。
束の間の休息のはずだったのに

それなのに、何時間もこんこんと眠りにふけってしまった。

それでも・・・
わたしは傍らにそびえ立つ心地よい日陰を作ってくれた木に軽く手を当てた。

それでも、とても有意義な時間だったと思う。
凄く疲れもとれたし、どうしようもなく気分もいいから。

「ありがとう」

優しい気持ちで木にお礼をいうと、私はカバンを手に持って足取りも軽く家へとハミングしながら帰宅したのだった。

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