題 束の間の休息
束の間、
ちょっとだけだから・・・
私は大きな木の下の涼しそうな木陰にチラッと目を向けるとそこへ吸い寄せられるように向かっていった。
午後の日差しが柔らかい。
まだ夏には早い、ちょうど涼しいひととき。
木陰で座っていると、不思議の国のアリスのことがふと頭をよぎった。
なんだろう
クスッと笑みがこぼれる。
木陰に座ってまどろむ私の前をうさぎが今チョッキを着て走っていったらびっくりして目が覚めるんだろうな・・・
そんなことを考えている間も、やさしい風の誘惑に抗えるわけもなく、私の瞼はどんどん下がっていく。
気持ちよいと何か思考を挟むヒマもないくらいあっという間に意識が夢の国に飛んでいってしまうんだろうな。
そう考えたのを最後に、私は意識を手放した。
ハッ
不意に目を覚ます。
「いけない!!」
辺りが暗いのが一番最初に見て取れて、私は覚醒直後勢いよく立っていた。
ああ、やってしまった・・・私のカバンに入っている図書館の本にチラと目をやる。
今日返そうと思ってたのに・・・。
仕方ない、また次に返そうか。
そう思いながらスカートをはたいて起き上がる。
今何時かな?
時計をみると、もう夜の七時だった。
なんてこと!!
時間を見て驚愕する。
束の間の休息のはずだったのに
それなのに、何時間もこんこんと眠りにふけってしまった。
それでも・・・
わたしは傍らにそびえ立つ心地よい日陰を作ってくれた木に軽く手を当てた。
それでも、とても有意義な時間だったと思う。
凄く疲れもとれたし、どうしようもなく気分もいいから。
「ありがとう」
優しい気持ちで木にお礼をいうと、私はカバンを手に持って足取りも軽く家へとハミングしながら帰宅したのだった。
10/8/2024, 3:24:11 PM