題 夜の海
静かな夜の海
無償にきたくなって。
夜の電車を乗り継いできちゃった。
他の人から見たら、危ない人かな?
若い女性一人で夜の海なんて
でも、ただ、見に来たかったんだ。
普段から海をみるのは好きなんだけど、夜の波の音をただ、聞いていたかった。
癒やされたくて。
この波の音が大好きで、癒されるから。
私が大きな岩に座って静かに波音に聞き入っていると、携帯の着信音が鳴る。
出ると、焦った彼氏の声が聞こえてきた。
「カナ?!どうしたんだよ、急に夜の海行きたいってメールしてきて、本当に夜の海行ったのか?」
「うん、今夜の海にいるよ」
私がそう言うと、彼氏の声のトーンが何段階も上がった。
「何してんの、一人で行ったら危ないでしょ?!すぐ行くからどこにいるか教えて!!」
「う〜ん」
私は満月と波音を聴きながら一瞬迷った。
今日は一人でいたい気分なんだよなぁ。
彼氏にメールなんてするんじゃなかった。
「え?どこにいるの?聞こえない」
彼氏がたたみかけるように言ってくる。
心配してくれるのも分かるけどなぁ・・・。
「じゃあ約束して、私、静かにこの海を楽しみたいから、来ても話しないで静かにしててくれる?」
「・・・カナがそうしたいならいいよ」
若干不満気な彼氏。でも、良かった。納得してくれたみたい。
「分かったよ、それじゃあ、言うね・・・」
私は海岸の名前を告げる。
そして、電話を切ると、空を見上げる。
星と月が綺麗、そしてなんと言っても夜の海の魅力。
暗い中ざぁざぁと流れる波の音が私の心に響いて、癒しに癒される。
ああいったものの、彼氏が来たら無言ってわけにはいかないだろうし、今のうちにこの静かな時を楽しもうっと。
私は心を静かに落ち着けて、波音のヒーリング効果を堪能したのだった。
題 自転車に乗って
自転車に乗ってどこまでも行けそうだ
私は毎朝考える。
登校の時、急いで駅まで自転車を走らせていると、風を感じる。
その風の勢いに私はスピードを感じる。
ペダルが軽く感じる。
まばたきをする度に風がひゅんひゅんまつ毛を通過していく。
そうしてどこかへ行ってしまいたい気持ちになる。
どこかへ?
どこかな。
どこまでも行きたいのではなくどこかへ、かな。
自分でも分からない。
ふと風を感じた時に思う。
このままペダルを漕いでどこか知らない街へ、学校ではないどこかへたどりつきたい。
毎日毎日終着点は学校で、ゆらぎがなくて変化がない。
だからこそ望んでしまうのかもしれない。
私が到達したい所へ。
進んだ先にある場所が未知の世界であってほしいと思う。
その場所に到達したら、次にどこへ行く事を望むのだろう。
私は永遠とペダルを漕ぎ続けていくのかもしれない。
自分の望む道を見つけるまで。
自分が納得する場所にたどり着くまで。
題 心の健康
元気が一番なんだよ
そうお母さんは言うけどさ。
でも、元気って、心が元気じゃないとだめだと思うんだよね。
いつもマイナス思考な友達は、元気とは程遠いから。
病気とかしてないけど、辛そうだ。
自分のこと、攻撃してる。
私はだめだ
私は落ちこぼれだ
私は何も出来ない
そんなことないよ
絵を描くの上手だよ
いろいろ出来ることあるよ
伝えても伝えても
伝えても
彼女には伝わらない
拒否されてしまう。
だって彼女の否定はもはや信仰で
彼女は自分が駄目ってことだけは信じてる。
他のことは信じることができないのに
そのことが不思議で仕方ない。
そのベクトルを変えるだけなのに
でも難しいんだね
私は諦めないよ
何度でも
何百回でも
何千回でも言い続けるよ。
だってさ、いつ心にスキができるか分からないでしょ?
少しでも緩んだ時に、私ってもしかしてすごいとこあるのかもって思った時に
響く言葉を、届けてあげたいんだ。
大切な友達だから。
だからね、心の健康をお届けするために
今日も私は彼女のいい所を届け続けるんだ
題 君の奏でる音楽
君の音楽ってなんでそんなに光をまとってるんだろう。
わからない、分からないけど惹きつけられる。
同じ楽器なのに、君がひくと軽やかで優しくてふんわりして、それでいて光を感じる。
君の弾くピアノは、まるで天使たちに祝福されたような音色に聞こえるから。
僕の心は満たされていく。
いくら欠けていても、君の音色を聴くと満たされていくんだよ。
それが、他の人にも有効で、そこが少し悔しい。
君の音色の良さを知っているのは僕だけでいいのにな、なんて変な嫉妬心を抱いてしまう。
でも、こうして音色を聴けるだけで、君の音色を聴くことを許してもらえるだけで、僕は幸せだって、いつも思い直すんだ。
僕の弾くピアノが少しでも君の心を打っているといいんだけど。
いつもコンクールで顔を合わせた時笑ってくれるけど、君がどう思っているのか分からないから。
ただ、君の演奏はいつも優勝で、僕は準優勝だ。
悔しくなんかない。君が優勝して、嬉しく思う。
それよりも、僕は君の心に僕の音色が少しでも届いていたらいいのにな、と夢想する。
君のことが好きな僕の気持ちを、込めた音色が届いていますようにって思う。
題 終点
この電車に乗って終点まで行ってしまいたいなぁ
僕は不意にそんなことを思う。
用なんてない。
だけどこのぎゅうぎゅう詰めの満員電車に乗って、家に帰宅して、暗い一人の部屋でお風呂沸かして・・・。
ゴミも捨てなきゃ、掃除もしなきゃ・・・そんな気持ち全て放棄したいんだ。
僕が電車の窓から見上げると、そこには暗い星空に瞬く星々と淡い光の月。
優しい世界は僕の気持ちととことん乖離していて・・・。
僕は家に帰りたくない。
家に帰りたくない。
どこかへ行きたい。
それが終点なら、行ってみたい。
知らない街に降り立って、静かな夜を歩いてみたい。
どうしてもそうしたくて。
僕は最寄りの駅を通り過ぎた。
通り過ぎた時、凄く爽快感を覚えた。
そうだね、しょせん逃避だって分かってるよ。
でもさ、たまには逃げることだって必要だよ。
だっていつもと変わらない日常はなにも変化がないけど、少なくともこの先に待っているのは僕にとって未知なんだから。