ミントチョコ

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8/9/2024, 10:43:43 AM

題 上手くいかなくたっていい

上手くいかなかった

何でっ

私は手にした塾のクラス分けの通知表を握りしめた。
受験まであと少しなのに。夏のこの時期に一番上のクラスに入れなくてどうするのっ。

自分を叱咤激励する。

そうだ。

塾の先生にも、学校の先生にも親にも言われた。
私は勉強が足りなかったんだ。
何もできなかったんだ。

やっても、ダメな子なんだ。

足が自然と止まる。まだ最寄りの駅まで遠い。
早く帰って、親の厳しい説教を聞くために帰らなきゃ。

私の至らなさを聞きに帰らなきゃ。

なんでこんなにだめなんだろう。
なんでこんな風に産まれちゃんだんだろう。

もっと才能が欲しかった。
もっと暗記できる頭だったら良かったのに。

目の端がうるむ。
カッコ悪い。
自分を心で目一杯叱りつける。

「どうしたの?」

後ろからの声に振り向くと、同じ塾の山下が立っていた。

「あ、別にっ」

すぐに顔をそむけた。泣きかけてる所なんて絶対に見せたくなかった。

「そう?」

そういいながら、山下はなぜか私の横に並ぶ。

「なに?」

「もう暗いし、一緒に駅まで帰ろうよ」

「・・・別にいいよ」

「まぁまぁ、この辺変質者こないだ出たって先生言ってたでしょ?」

あー、言ってたかも・・・。私は黙って歩き出した。
山下が横をあるきだす。

「名取さん、クラスで1位だったね、テスト、すごいなぁ」

「何言ってるの?!この時期に、上のクラスに行けなかったんだよ?」

私は反射的に強い口調で反論してしまう。

「ダメすぎでしょ。1点でも2点でも見直して頑張らなきゃいけなかったのに」

「でも、名取さん、頑張ったんじゃないの?やれるだけやったんじゃないの?」

山下がそう問いかける。

「少なくとも、クラスで1位なんて凄いと思うよ。そうだね、上のクラスに行くためにはもっと点数が必要だったのかも。それでも、名取さんはとても頑張って勉強したはずだし、ダメとは真逆な所にいるんじゃないかなぁ」

「だってもっと上を目指さなきゃ」

「うん。次は頑張ればいいよ。今頑張ったことは無駄じゃない。ちゃんと力になってるはずだよ。名取さんは絶対にダメじゃない。自分を責めないで」

「だって・・・」
 
私の視界はみるみるぼやけて涙があふれる。

泣いている私を見て、山下がハンカチを差し出した。
私は泣き出したら止まらなくなってしまった。

山下はじっと私が泣き終わるまで何も言わなかった。

それが、私にはありがたかったし、その沈黙がなぜか心地よかった。

ひとしきり泣くと、頭がズンズンと重くなる。

「目が、赤くなっちゃうな」

私がやっとそういうと、山下は

「家に帰ったらすぐに冷やすといいよ」

と言った。

「あと、自分は自分の味方でいてあげてね。励ましてあげて。誰に攻撃されても、自分の心を傷つける事を言わないで」

付け足すように言われた言葉に、私はギクリとする。

「・・・うん、私、完全に自分を攻撃してた」

泣いたことで素直になっている自分に驚く。

「気づけただけで偉いから」

とふわっと微笑む山下に、私は見とれる。

「すごいね、山下って」

「え、そう?」

山下がビックリしたような顔をする。

「うん、凄い、何ていうか・・・カウンセラーとか向いてるんじゃない?」

「あはは、よく言われる」

そういって笑う山下の笑顔につられて私も笑顔になっていた。

気持ちがビックリするくらい軽い。
なんだろう、この爽快感は。

とにかく、とにかく

「ありがとう」

私は山下にお礼を言った。
凄く気持ちが穏やかだ。

そうだね、怒られるかも。
これから親にも先生にも。
それでも、私はわたしの味方でいよう。

私はそう心に強く決意していたんだ。

8/8/2024, 11:15:45 AM

題 花よ蝶よ

私は生まれ持って何でも持ってるわ。
私の美しい容姿にはみんなため息をつくし、私が何かしようとすると、周りの殿方が替わりにやってくれようとするから、何もしなくていい。

お母様もお父様も私のこととても大事にしてくれているし、私が欲しいものはなんでもくれる。

友達も私の服装をいつも褒めてくれる。そんなに言うならとお下がりを上げると、凄く喜んでくれる。

勉学もクラスで一番。
そうなのよ、私には何も不足はないの。

何もかも兼ね備えてる私だけど・・・あの人だけは私にそっけない。
私が困ってても助けてくれない。

理解できない人種なの。

周りの人がなんて言っても甘やかすなって。

甘やかしって何?当然の権利じゃない。
私はその言葉を聞いて、いつもむすーっと彼を睨む。

彼は何も考えてないような涼しい顔をしている。

くやしい。
こんな人初めて出会った。

どうして私みたいな完全な人間の前で膝まづかないんだろう。
どうして。私の能力を認めて私に好かれたがらないんだろう。


「興味ないから」


ある日、どうしても知りたくて、私は彼を捕まえて考えてたことを問い詰めた。

つまり、なぜ、私のようになんでもできる人間を無視するのか、価値があると思わないのか、と。

彼はじーっと私を見てからそう言ったんだ。

「な、興味ない?!この私に」

私は衝撃で彼に聞き返す。

「うん、思いっきり興味ない。どんなに能力あろうが、成績や容姿がよかろうが、それが僕に何の関係があるの?僕は僕の力で人生をいきていくし、僕に相応しい友人も人間関係も自分で決めるから」

「は・・・?」

思わず間抜けな声が出た。

だって・・・何その考え方?
私のなかにはない。
人間って容姿とか勉強できるとか、何かあった方が良いに決まってるじゃない。

それ以外なんてないじゃない。

って伝えると、彼は呆れたような顔で私を見つめた。

「そっか、それが君の世界なんだね。頭がいい人、なにもかも持っている人、その人だけが優れてて、他の人はそうじゃないって。僕はね、僕の趣味の話し出来たり、いつも僕の心配してくれたり、助けてくれる優しい友人がいるから、それで充分なんだ。そこに、頭いいとか他の条件はないんだよ」

彼の優しい微笑みを見ながら私は声を出せなかった。
彼の考え方が理解できない、それでも、彼から目が離せなかった。
私にはない、そんなこと・・・。

考え込んでいると、彼はそれじゃあ・・・と去っていこうとする。

「待って!」

私は思わず彼の服の袖を掴んでいた。

「なに?」

怪訝そうな彼の顔に、私は自分でも何でそんな行動をしたのか分からずに止まってしまう。

・・・でも
・・・・・・でも。

「・・・なのね?」

私が言葉にしたのが聞き取れなかったらしい。
彼が私に聞き返す。

「何て言った?」

「私が、あなたにとって友達になりたいって思うような人間なら、条件なんて関係ないのよね?」

・・・何を言ってるんだろう、と思う。

彼もぽかんとした顔で私を見ていた。
でも、すぐににっこりした。

「もちろん。ま、でも、道のりは長いかもな」

「はっ、そんな、頭脳明晰な私なら、すぐにあなたが友達にしたくなるような友人になってみせるわっ」

「うーん、がんばるものでもないような、そのままでいいんだって」

「そのまま?」

彼の服を掴んだままだった事にはたと気づいて、あわてて手を離す。

「そう。何かあるからじゃなくて。何もなくても、だ、だ、その人のままでいいんだよ。君は、何かあるから好きか嫌いか決めてるだろ?そうじゃなく、何もなかったとしても、君は価値があるんだよ」

「何もなくても・・・」

「だから、そんな風に人を判断しなくなったら、いつでも君と友達になるよ」

あったかい気持ち。
おかしい。そんな気持ち初めてだ。

「あ・・・」

私は静かに頷いていた。
言葉が詰まってしまうのも初めてだ。
どうしたんだろう。自分がおかしい。

「じゃあね」

彼が去っていってしまっても、私はずっとその場を動けなかった。

衝撃と何だかあたたかい気持ち。
そのままでいい、何もなくてもいいんだって。

私、本当は頑張ってた。
勉強も、何もかも、みんながあなたならできる、あなたなら完璧だから、あなたなら美しいから。

だからこそ、その期待を裏切れなかった。
だから頑張った。

美しくあるよう、スマートな私、勉強のできる私、何でも完璧な私。

それじゃなきゃ好かれないと思ってたの。

それをあの人はそうじゃないって言ってくれた。
もしかして、そんな無理してる私のこと、最初から分かっていたのかもしれない。

私は自分の価値観が根底から揺らぐのを感じながら。それでもそれを不快どころか幸せの扉を開いたような気持ちに包まれていたんだ。

8/7/2024, 11:12:32 AM

題 最初から決まってた

最初からきまってたんだ

出会った時に分かってたんだ。
私があなたを好きになることは。
でも、あなたは気づかなかった。そうだよね、テレパシーが伝わるわけじゃないから。

仕方ないよね、仕方ないなんて思うのもおこがましいくらいだよね。

私はいつもあなたを見てる。教室の端から、前から2番目の机に座るあなたを見てる。

でも、あなたは私に気づかない。

このクラスになって、椅子に座るあなたを見た瞬間から運命を感じていたのに。

運命?そうなのかな。
自嘲して笑う。相手が同じ気持ちになってくれない運命って運命なのかなって。

そう考えると、私の独りよがりだって思う。

でも、これは恋なんだ。
それは確信できるよ。

だからあなたが友人と笑顔で話してたり、勉強してたり、ただ歩いているだけでも、見ているのが楽しいよ。

幸せだよ。

ありがとう。

私の心はそう考えるとそんな気持ちに満たされる。

ありがとう、私は知らなかった。

あなたに会うまでこんな幸せな心は知らなかったから。

たまに切ないのはスパイスだよね。

運命じゃなかったとしても抗えない気持ちは運命的。

大好きだよ。
見つめさせてね。
まだ気持ちは伝えられないけど。
私はあなたをいつでも暖かく想っているよ。

8/6/2024, 11:30:09 AM

題 太陽

あなたは太陽だよ。
そんなこと言ったらどう反応するかな?
笑うかな?呆れるかな?嬉しい?はたまた戸惑う?

大好きなあなたが隣にいるのをチラッと確認してしまう私。

だって好きなんだもん。
こうしてデートできるだけで本当に天にも昇る想いで。

あなたと出会えたこと、あなたと恋していること、あなたと恋人になれたことにいつも感謝してる。

私にとってあなたは太陽。

う〜ん、笑われてしまいそう、その可能性もあるかも。

でも、太陽ならそんな反応こそ実は相応しいのかも。

私がふふっと笑うと、あなたは不思議そうな顔をして私を見た。

「何で笑ってるの?」

「あなたって太陽みたいだなぁって思って」

「え?太陽みたい?何言ってるの、君でしょ、それは。君こそ太陽みたいだよ、いつも明るくて、優しくて、可愛くて、見てて楽しくて、今も太陽みたいとか意味不明なこと言ってるし」

「あ・・・えっ、そ、そんな・・・」

意味不明という言葉にツッコミを入れる前に、まさかの褒め殺しの言葉に照れてしまう。

うう、予想してなかった反応・・・。
でも、素直に嬉しい。

と思ってると頭を撫でられる。

「!」

ビックリして彼氏を見ると彼氏は首を傾げて私を見ていた。

「可愛い」

「・・・もういいから、私の負けたから」

「え〜!どういうこと?相変わらず君って面白い」

彼氏の爆笑が太陽の笑顔みたいで眩しい。

こんな彼氏といられて、私は改めて幸せを噛み締めていた。

どっちが太陽でもいいんだ。
あなたがいてくれれば私は何だっていいんだから。

8/5/2024, 12:33:50 PM

題 鐘の音

鐘の音がなる。

切ない気持ちで私は結婚式の2人を見つめた。

幸せそう。そうだよね。あなたたちは出会った時からすぐに惹かれ合ってあっという間にスピード結婚したもんね。

私は、その前からずっと好きだったのに。
その前から、食事とか誘ってたのに。

話せただけで舞い上がってたのに。

何も通じてなかったんだね。

あの子と出会ったあなたの頭の中はあの子の事ばかりで。

話してても上の空。視線はあの子を追ってて、話してても切ないだけだった。

食事はいつもあの子との先約。

あなたがそんなに動く人だって思いもしなかった。

いつもあなたの行動には、言葉には、思考にはあの子がいて・・・たまらなかった。

私の今までの気持ち全てないがしろにされたみたいで。

家に帰ったら涙が止まらなかった。

それなのに追い打ちをかけるように、あなたは結婚してしまった。

私は今、これが現実なのか考えてるよ。

今まで頑張った私は。恋してた私は。
どこへ行けばいいのかな。この抱えきれない気持ちは、どうしたらいいの・・・。

私は笑顔を貼り付けておめでとうと拷問のような言葉を放つ。

ねえ、幸せになってほしくないのに、あなたの笑顔が凄く幸せそうで見たこともなくて。

そんな姿を見られるのが嬉しいとどこかで感じてしまってる。

だから・・・もう少し時間がたったら・・・あなたの幸せを願えるように頑張るから・・・。

今日は、まだ複雑な相反する気持ちを抱いてる私を許してね。

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