ミントチョコ

Open App
6/5/2024, 11:36:05 AM

題 誰にも言えない秘密

私には秘密がある。
でも、絶対にだれにも言わない。

だって絶対に困ったことになる。
だから、黙ってる。

「ナツミ」

名前を呼ばれて振り返る。

「リンカ」

ニコッと笑う友達のリンカ。
小テストを手にしてる。

「ねぇ、英語のテストどうだった?」

「あ〜、一応昨日勉強したし、満点だったけど」

私が答えると、リンカが手を叩いて目を輝かせる。

「さすがだね!ナツミ。親友として誇らしいよ」

(はぁ?なんでいつもナツミばっかりいつも満点なのよ、私だって一問間違えなだけなのにっ、悔しいっ)

リンカのセリフと共に心の声が聞こえてくる。

そうなんだ。私の誰にも言えない秘密は心の声が聞こえることだ。

小さい頃お母さんに心の声が聞こえることを言ったら絶対に人にその事を伝えたらダメだと言われた。
怖がられるからって。
人は、未知のものに恐怖を抱くし、自分の心を読まれるのを恐れるからって。

だから、私は心の声を聞こえないふりをしてる。

・・・でも聞こえてるんだ。
だからこそ、傷つくことが多い。

だって、みんな、心と表面の声が違うから。
だから、私は完全に人を信用していない。

心の声が聞こえてくるのは仕方ないから、それでも笑顔で対応するしかない。
聞こえないふりをするしかないから。

「そんなことないよ、リンカもいつもいい点取ってるじゃない」

私が笑顔で言うと、リンカも私に笑顔で返す。

「そんなことないって〜!ナツミには叶わないよ、自慢の親友だなっ」

(何嫌味言ってくれてるの?うっとおしい。どうせ見下してるくせに)

私はふぅとため息をついた。リンカといると疲れる。

「あ、サヤカ、何点だった〜?テスト」

リンカは新たな獲物を見つけて行ってしまった。
私は内心ホッとした。

「大変だったね」

その声にホッとして振り返る。
そこには友達のタカコが立ってた。

落ち着いてて、口数少ないけど、私はタカコが好きだ。
だって・・・。

「あれって自慢したかっただけたもんね」

(いつも大変だな、ナツミ。それでも笑顔で対応してて偉いな)

タカコの心の声はいつも穏やかで、私を肯定してくれる。

「あはは、そうなのかな?」

いつもありがとうと思うけど、心の声には応えられないから、私はタカコのセリフに答える。

「そうだよ、ナツミは頑張ったんだから、満点取ったのは当然の結果だよ」

心の声も同じことを言っている。

「ありがとう」

私は心からのありがとうをタカコに伝える。

秘密だから。絶対に。

でも・・・でも、許されるなら、いつか、もっとタカコに心を開けたら・・・私はタカコにだけは私の秘密を打ち明けたいって思っているんだ。

いつも私の気分を穏やかに、救ってくれるタカコにだけは。

6/4/2024, 11:24:17 AM

題 狭い部屋

ここは狭い。
だってワンルームしかない。

実家から引っ越してきたばかりだから、凄く狭く見える。

でも、遊びに来た友人に言わせると、それでも良い方だったりするらしい。

もっと過酷な環境で暮らしている人もいるって聞いた。
お風呂共同とか。

・・・それは勘弁かなぁ。

私は、部屋を見回した。
実家から持ってきたものはわずかしかない。

この狭い部屋に入り切らなかったから、泣く泣く置いてきたものが沢山ある。

ピンポーン

チャイムがなる。

「はーい、入ってよ、開けといたから」

大学に入って出来た彼氏だ。

「おじゃまします。へぇ、きれいだね!カヤらしいナチュラルな部屋だね。居心地いい」

「本当?嬉しいな、さ、座って、狭いけど」

「うん」

彼氏が座る場所を迷っている。だって、座れる所が床かベッドしかない。

「ベッドに座ってて」

「あ、うん・・・」

彼氏が戸惑いながらベッドに座る。
何となくきまづさを感じながら私はインスタントコーヒーを作ると、彼氏に手渡す。

「どうぞ」

「・・・あ、ありがとう・・・・」

「ごめんね、まだ机買ってなくて、また小さいの、買うよ。ベッドで座ったまま飲んでくれる?」

「そうなの?じゃあ今度一緒に家具屋さん見に行こうか?」

私の言葉を聞いて、彼氏が提案してくれる。
デートだ!

「本当?もちろん!!行こうよ」

「じゃあ、次の休日ね」

さっきの緊張感がほどけて、私も彼氏も笑顔になる。

「ちょっと、机買ったら残念だけどね」

冗談めかして彼氏が私には言う。

「だって、カヤとこうして近くで座れなくなるから」

「あっ、もう、フミヤってば」

私は照れて赤くなってしまう。

「今日は部屋に招いてくれてありがとう」

私を見てフミヤは微笑む。

柔らかい笑み。好きだなぁと思って私も微笑み返す。
私が困ってるから話題変えてくれたんだ、きっと。

「うん、どういたしまして」

2人で笑顔でコーヒーを飲む。
午後のひとときがとてもとても幸福だ、と感じながら。

6/2/2024, 11:15:33 AM

題 正直

正直、私はこの人と付き合うことになると思ってなかった。

ひどいかな?

だって、告白された時も認識なんてしてなかったから。

急に好きだから付き合ってって言われて。
良く知らないからって言ったら、じゃあ、知っていけばいいから、それで嫌だったら別れていいからって言われて。

押しに弱い私は負けてしまった。

デートを、繰り返して、一緒に話した。
メールを繰り返して、通話をたくさんした。

相手の事を知れば知るほど、ちょっとだけ嬉しくなったんだ。

相手の好意も嬉しかったし、一緒に話してるのが案外楽しかった。
後は、沈黙でいてもあまり気にならなかった。

落ち着く。
それが激しい恋なのかと言われると違うのかもしれないけど、私はとても居心地がいい場所ができた事で、安心感があった。

私という人間だけを見てくれる人。
私も相手を見て話してる。

その状態が居心地良かった。

だから、もう1年が経とうとしているけど、まだ別れていない。

というか、今別れると言われたら、私は絶望するだろう。

全然続くと思っていなかったこの関係に、私はいつの間にかどっぷりとはまって・・・彼氏のことが大好きになっていたんだ。

正直、こんなに好きになるなんて思っていなかったよ。

あの時私に告白してくれてありがとうといつも心で思っている。

まだ口には出せてないから、いつか言えたらいいな。

6/1/2024, 12:34:53 PM

題 梅雨

ムシムシムシムシ・・・
蒸し暑い、蒸し暑い

私は休日、家でソファーでスマホをいじりながらイライラしていた。

季節は6月の梅雨真っ只中。
ジメジメにも程があるほどジメジメしている。

部屋にきのこが生えてくるんじゃないかと思う程の蒸し暑さ。
かといって、この位でエアコンをつけていたら、電気代が恐ろしい。

「はぁー、梅雨なんて嫌いだ!」

せっかく仕事休みの土日なのに、ここで座っているだけで不快指数120%だ。
頬をツゥっと汗が伝う。
うっとおしい。
どうしたら快適になるだろう。

私は立ち上がると洗面台でタオルを取って顔を拭く。
ついでに顔を洗った。

はぁ、少しはマシになった。

でも、全身の不快感は取れない。


そうだ!
私は冷蔵庫からレモンを取り出して、むくと実をミキサーに入れる。レモンの皮も少しだけ。

ミキサーに入れて攪拌すると、レモン汁ができる。

大きなピッチャーに、サイダーとレモンを混ぜる。
飲んでみて味を調整する。

うん、爽やか〜!
レモネード♪

こんな時期は爽やかさで全てを吹き飛ばすに限る。

私は出来立てのレモネードをコップに注いでソファーへ戻ると一口口に含む。

酸味のある爽やかさが癒やしを与えてくれる。
爽やかな一抹の風が私の周りに吹いているようだ。

ふぅ〜!

私は先程とは違う、満足感一杯のため息をつくと、携帯をまた取り出して、ゆったりとソファーに座ったのだった。

5/31/2024, 11:46:59 AM

題 無垢

「ねぇ、私にはなんでいつもソウキが付いてまわってるの?」

私は、常に後ろにいるソウキに問いかけた。
近所に住むソウキは、私といつも登校している。
別のクラスになっても、ずっと朝も帰りも待っててくれて、一緒に帰ってる。

他の人たちにからかわれても気にしないで、ずっと私のこと守ってるみたいに・・・。

だから・・・。
だから、私は窮屈で仕方ない!!!

何でこんなに私のこと監視するみたいに側にいつづけるの?

何で私はソウキと別に何でもないのに周りの人に夫婦とか、カレカノとかからかわれなきゃいけないんだろう。

いい加減嫌なんだけどな。

「それは、ミホが無垢すぎるからだろ!」

「は?」

私はソウキの、解答に?マークを浮かべた。
私が無垢?ムク・・・純粋ってこと?

「そんなことないよっ、私だって性格悪いとこあるし!」

現に今、ソウキのこと邪魔って思ったばっかだ。

「俺は、ミホに変な虫がついてほしくないんだ!だから監視してる」

「・・・堂々と監視とか言わないでよ。こっちはそんなにずっと一緒にいられたら息がつまるの。私は大丈夫だから、一人で登校できるから」

「ミホ・・・そんな事言うのか・・・」

ソウキがショックを受けたように2、3歩下がる。

「・・・だって、ずっと一緒だと夫婦とかからかわれるじゃない!やだよ」

私はいままで散々からかわれたことを思い出して思い切り抗議する。

「え?いいじゃん。むしろ褒め言葉だろ。仲いいっていう」

「え・・・」

ニコニコして私に笑いかけるソウキに、私は言葉を失う。
嫌じゃないのかな、ソウキは。

「と、とにかく、もういいから!ソウキから卒業するから!ついてこないで!!」

私は猛ダッシュで駆け出す。

「待てよ、ミホ!俺は納得してないから!ミホの無垢は俺が守ってやるから〜」

「いらないのよ!追いかけてこないで!!」

いつまでも追いかけられながら私は天を仰ぐ。
ソウキを納得させるにはどうしたらいいのか。

もちろん、天の神様も、綺麗な夕日も何も答えてはくれなかった。
どうも明日も私はソウキに付きまとわれる人生な気がする。

Next