ミントチョコ

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5/30/2024, 11:38:08 AM

題 終わりなき旅

終わらない旅、どこまで行けば休めるんだろう。
僕は休息の地を見つけたい。

探している。
僕は生まれ持って不死の身体だった。

大事な人も、家族も、知っている人は全員いなくなってしまった。
その後で出来た大事な人もみんないなくなってしまう。
みんな天に召されてしまう。

どうしてだ?
どうして僕だけこんな身体で産まれてしまったんだ。

僕は頭を抱える。そして、幾度となく天に抗議をした。
でも返事は来ない。僕の悲しみの時間は永遠に続きそうだ。

不死とばれないように転々とする日々。
人の猜疑心に満ちた視線が怖い。
臆病になってしまった。
この世界に生きていることがいびつに感じる。

早く・・・早く
何処かにたどり着きたい。

いつしか願うようになってしまった。
僕がいていい場所に、休める場所に。

すべてを終わらせられる場所に。
疲れた。
もう疲れたよ。
休息が欲しいんだ。

もう再び目を開けなくていいように。

そのまま目を閉じれば
特別な場所へと連れて行ってはもらえないだろうか?

僕の心から願っていた場所に到達はしないだろうか?
永遠の安らぎという特別な場所に・・・。

5/28/2024, 9:27:09 AM

題 天国と地獄

ここは天国の門の前。
誰もいない。

どうしてだ?ぼくはキョロキョロとあたりを見回す。
周りには何人か戸惑った様子で辺りを見回している人々。

門番もいない、どうしたらいいのか分からないでいると、下からザワザワと声が聞こえてきた。

雲の上にある天国の門。
その雲は巨大で真ん中に穴が空いている。
そこから声は聞こえてきているようだった。

行って覗き込んでみる。
下には天国とは比べ物にならないくらいの人々。

わいわいと門の前に並んでいる。
地獄、と門には書いてあるように見える。

何でこんなに地獄に・・・みんな悪人ってことか?

僕は呆然としていると、下の地獄行きの人の会話が耳に入ってくる。

「ねえ、地獄って現実世界とほぼ一緒の世界なんでしょ?」

「そうそう、しかもさ、噂では、お仕置きしてくる鬼を狩ったりするイベント開催中だって」

「え?リアルで鬼を狩れるの?凄っ」

「人間が多すぎて、鬼の勢力も落ちてるんだって。だからやりたい放題、現実世界より楽しいらしいよ」

「オススメしてくれてありがとう!ここに並んで良かったわ」

同じように天国から会話を聞いていた人たちが次々と下の地獄の階に降りていく。

みんな、現実に近いほうがいいらしい。
天国は、どうやら、食欲もなく、常に幸福で何もせずにぼーっとしていられるらしいけど・・・。

僕は考えた末、雲の穴を下に降りた。
何もしなくていいなんて退屈すぎる!
やっぱり僕は刺激が強い世界が好きなんだな。

そして、常時、天国の門の前には誰もいない閑散とした景色が続いていくのだった。

5/26/2024, 1:01:12 AM

題 降り止まない雨

雨が降ってる
私は大木の下でぼーっと思う。
降ってきたなって。
小雨だと思っていたらバーっといきなりやってきた。

ザアザアと降る雨が葉っぱに跳ねてパラパラと音がする。
空を見ていたんだ。
この木の下で空を見るのが好きだから。

何かあるたびにここに来ていたんだ。
嫌なこと、辛いこと、幸せな時。
どうして・・・?
どうしてなんだろう。

分からないんだけど、家から割と遠いこの木の下へ引き寄せられるように来てしまう。

今日は天気予報で雨なんて言ってなかったのにな。
降り止まない空を見上げながら小さくため息をついた。

どうしようか・・・。
携帯は、よりによって家に忘れてきてしまった。
雨が木の間から垂れてきて、私の髪を濡らしつつあった。

「あれ、人がいる」

そこへ声がかかる。
見ると男の子が黒い傘をさして木の側に立っていた。

「どうしたの?傘忘れた?」

ニコッと聞いてくる気さくな印象の子だ。
同い年位・・・?
私は頷く。

「そっか、じゃあ、入っていってよ」

男の子は私の頭の上に傘を掲げてくれた。

「・・・ありがと」

私は素直にその傘に入った。普段だったら人見知りだし、そんな行動取らないのに。不思議だなって思った。

「何してたの?木のところで」

「空を見てたの」

「空?好きなの?」

「うん・・・」

「色んな空の色があるから面白いよね、僕も良く見る」

「うん、色んな色があるし雲の形とか見てると飽きないの」

「そうだよね、あの雲はカメに見えるとか、星に見えるとかね、考えるの楽しいよね」

不思議。なんだか・・・。話しやすい。
こんなに話しやすい男の子、初めて。

少しだけ沈黙が続いた後、男の子は、私の顔をジッと見た。

「会ったことある気がするな、君と。小さい頃、この辺に住んでなかった?」

「え?」

確かに、小さい頃は引っ越ししたことある。
今の前の家、この辺だったのかな?覚えてない・・・。

「覚えてない」

私は素直に言う。

「多分君だよ。あの木の下で一緒に良く遊んでいた子じゃない?ある日突然来なくなって、会えなくなってたから、もう一度会いたいって思ってたんだ」

「そ、なの?」

記憶を思い返す。幼い頃の記憶は蘇ってこない。

「うん、一緒に良く空見てたよ、雲の形をこの木の下で飽きずにずーっと言ってた。気になっててさ、ふと思い立ったらここに来るんだ。君にはもう会えないとは思ってたけど、もしかしたらって」

あ・・・
木の下で2人で地面に座って手を繋いで・・・青い空を見て、指を指して、笑い合う光景が・・・。

その言葉で急に蘇ってきた。

「ソウ・・・くん?」

その時のセリフも思い出す。ソウくんってよんでた。

「うん、ミキちゃん」

私は名前を呼ばれて頷く。

「また会えて嬉しい。今度またあの木の下で一緒に話そうよ」

ソウくんが笑う。急に懐かしいっていう思いが急激に込み上げてくる。

「うん、話したい」

私の口は無意識に開いていた。

「決まりだね」

ソウくんと2人、雨の中、黒い傘をさして歩いていく。

私、あの場所に行ってよかった。

きっとソウくんと会うためにあの木の下へと無意識に引き寄せられていたんだ。

雨が降り止まなくて良かった。

ソウくんに見つけてもらえたから。

私は込み上げてくる多幸感にとまどいながら、ソウくんと次にいつあの木の下で待ち合わせるか話していた。

5/24/2024, 2:42:59 PM

題 あの頃の私へ

幼かったなあの頃
私はふと思う。

隣りにいる彼氏に恥じらって
大好きって恋い焦がれてたんだ。
話せるだけで幸せで、見つめられるだけで鼓動が持たなくて、火照る頬を両手で覆った記憶が蘇る。

「何?」

彼氏が私を見る。

「んーん、別に」

私はカフェで注文したラテに口をつけた。
今は隣りにいるのが当たり前でときめきもあの頃みたいにはない。
好きだけど、どちらかといえば安心感かな。
一緒にいると落ち着く。

好きな気持ちが減ったわけじゃないと思うけど、あの頃のパワーを時々懐かしく思い返す。

大好きな人を心から好きだと毎日頭がそのことばかりで一喜一憂していた日々を。

「どうしたの?ボーッとしてるじゃん」

彼氏が私を覗き込んでくる。
ラテに口をつけたまま私を怪訝に思ったのかもしれない。

「うん、付き合う前のことを思い出してたんだ」

私は素直に打ち明けた。

「あの時何であんなにマモルのこと好きだったのかなって」

「なんだよ、ひどくないか?」

マモルの抗議に私は首をかしげる。

「だってね、あの頃はマモルが世界の中心だったんだよ。マモルがいなくなったら、私は生きていられなかったかもしれない」

その言葉に、マモルは嬉しそうな表情を浮かべた。

「そ、そうか・・・?」

「だから、あの頃の私に会ったら言いたいのよ。あなたの大好きな人は、将来ずっと隣にいてくれるよって」

私の言葉にマモルは微笑んで頷いた。

「それは確定の未来だから教えてあげたいな。でも・・・俺のことを恋い焦がれていてほしい気持ちもあるな」

「マモルってば」

私はマモルの言葉に思わず笑顔になる。

今も大事な人だよ。
あなたの寝ても覚めても愛しく思った彼は、いつでもあなたのことを想って一緒にいてくれるんだよ。

だからもう少し頑張ってね。
私はそっと目を閉じると、過去の自分にエールを送った。

5/23/2024, 1:45:06 AM

題 また明日

「また明日ね」
そう言えればどんなにいいか。
私は隣の家にはもういないトオルを思ってため息をついた。

信じられない。昨日までは横にいたのに。
昨日の午後、一家で引っ越してしまった。
家の都合で、トオルの祖父母の家に住むことになったんだって。

ずっと隣りにいたから。
抜け殻のような心。

またな 
じゃあまた!
バイバイ、明日ね
今度何しようか?

そう言えてた頃が懐かしくて
気軽に全然会えなくなって

悲しいを通り越して虚無。
私の心の中はポッカリと穴が空いてしまってた。

別に好きだった訳じゃない。
好きな人ならいたし、トオルとはそんな関係でもなかった。

でも・・・
こんなにも近くでいて、存在に支えられていたんだって。
いなくなって初めて気づいてしまった。

私の心の大分多くの部分をトオルに支えられていたんだ。

今日不意にカーテンを開けて隣の家のカーテンも撤去されカラッポになったトオルの家を見て、襲ってきた喪失感。

私はその場でベッドに力なく座り込む。
電話をすれば、メールをすればまた明日ねって言えるけど・・・。

会って言えないのは本当に悲しいよ。

トオル・・・
また明日って気軽に言えた日々は
本当に幸せだったんだね

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