題 あの頃の私へ
幼かったなあの頃
私はふと思う。
隣りにいる彼氏に恥じらって
大好きって恋い焦がれてたんだ。
話せるだけで幸せで、見つめられるだけで鼓動が持たなくて、火照る頬を両手で覆った記憶が蘇る。
「何?」
彼氏が私を見る。
「んーん、別に」
私はカフェで注文したラテに口をつけた。
今は隣りにいるのが当たり前でときめきもあの頃みたいにはない。
好きだけど、どちらかといえば安心感かな。
一緒にいると落ち着く。
好きな気持ちが減ったわけじゃないと思うけど、あの頃のパワーを時々懐かしく思い返す。
大好きな人を心から好きだと毎日頭がそのことばかりで一喜一憂していた日々を。
「どうしたの?ボーッとしてるじゃん」
彼氏が私を覗き込んでくる。
ラテに口をつけたまま私を怪訝に思ったのかもしれない。
「うん、付き合う前のことを思い出してたんだ」
私は素直に打ち明けた。
「あの時何であんなにマモルのこと好きだったのかなって」
「なんだよ、ひどくないか?」
マモルの抗議に私は首をかしげる。
「だってね、あの頃はマモルが世界の中心だったんだよ。マモルがいなくなったら、私は生きていられなかったかもしれない」
その言葉に、マモルは嬉しそうな表情を浮かべた。
「そ、そうか・・・?」
「だから、あの頃の私に会ったら言いたいのよ。あなたの大好きな人は、将来ずっと隣にいてくれるよって」
私の言葉にマモルは微笑んで頷いた。
「それは確定の未来だから教えてあげたいな。でも・・・俺のことを恋い焦がれていてほしい気持ちもあるな」
「マモルってば」
私はマモルの言葉に思わず笑顔になる。
今も大事な人だよ。
あなたの寝ても覚めても愛しく思った彼は、いつでもあなたのことを想って一緒にいてくれるんだよ。
だからもう少し頑張ってね。
私はそっと目を閉じると、過去の自分にエールを送った。
5/24/2024, 2:42:59 PM