ミントチョコ

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題 降り止まない雨

雨が降ってる
私は大木の下でぼーっと思う。
降ってきたなって。
小雨だと思っていたらバーっといきなりやってきた。

ザアザアと降る雨が葉っぱに跳ねてパラパラと音がする。
空を見ていたんだ。
この木の下で空を見るのが好きだから。

何かあるたびにここに来ていたんだ。
嫌なこと、辛いこと、幸せな時。
どうして・・・?
どうしてなんだろう。

分からないんだけど、家から割と遠いこの木の下へ引き寄せられるように来てしまう。

今日は天気予報で雨なんて言ってなかったのにな。
降り止まない空を見上げながら小さくため息をついた。

どうしようか・・・。
携帯は、よりによって家に忘れてきてしまった。
雨が木の間から垂れてきて、私の髪を濡らしつつあった。

「あれ、人がいる」

そこへ声がかかる。
見ると男の子が黒い傘をさして木の側に立っていた。

「どうしたの?傘忘れた?」

ニコッと聞いてくる気さくな印象の子だ。
同い年位・・・?
私は頷く。

「そっか、じゃあ、入っていってよ」

男の子は私の頭の上に傘を掲げてくれた。

「・・・ありがと」

私は素直にその傘に入った。普段だったら人見知りだし、そんな行動取らないのに。不思議だなって思った。

「何してたの?木のところで」

「空を見てたの」

「空?好きなの?」

「うん・・・」

「色んな空の色があるから面白いよね、僕も良く見る」

「うん、色んな色があるし雲の形とか見てると飽きないの」

「そうだよね、あの雲はカメに見えるとか、星に見えるとかね、考えるの楽しいよね」

不思議。なんだか・・・。話しやすい。
こんなに話しやすい男の子、初めて。

少しだけ沈黙が続いた後、男の子は、私の顔をジッと見た。

「会ったことある気がするな、君と。小さい頃、この辺に住んでなかった?」

「え?」

確かに、小さい頃は引っ越ししたことある。
今の前の家、この辺だったのかな?覚えてない・・・。

「覚えてない」

私は素直に言う。

「多分君だよ。あの木の下で一緒に良く遊んでいた子じゃない?ある日突然来なくなって、会えなくなってたから、もう一度会いたいって思ってたんだ」

「そ、なの?」

記憶を思い返す。幼い頃の記憶は蘇ってこない。

「うん、一緒に良く空見てたよ、雲の形をこの木の下で飽きずにずーっと言ってた。気になっててさ、ふと思い立ったらここに来るんだ。君にはもう会えないとは思ってたけど、もしかしたらって」

あ・・・
木の下で2人で地面に座って手を繋いで・・・青い空を見て、指を指して、笑い合う光景が・・・。

その言葉で急に蘇ってきた。

「ソウ・・・くん?」

その時のセリフも思い出す。ソウくんってよんでた。

「うん、ミキちゃん」

私は名前を呼ばれて頷く。

「また会えて嬉しい。今度またあの木の下で一緒に話そうよ」

ソウくんが笑う。急に懐かしいっていう思いが急激に込み上げてくる。

「うん、話したい」

私の口は無意識に開いていた。

「決まりだね」

ソウくんと2人、雨の中、黒い傘をさして歩いていく。

私、あの場所に行ってよかった。

きっとソウくんと会うためにあの木の下へと無意識に引き寄せられていたんだ。

雨が降り止まなくて良かった。

ソウくんに見つけてもらえたから。

私は込み上げてくる多幸感にとまどいながら、ソウくんと次にいつあの木の下で待ち合わせるか話していた。

5/26/2024, 1:01:12 AM