繋がり、それは最優先するもの。
吾が家では、そう教わる。
吾が家を揶揄するのなら、こう言えるに違いない。
汝、恩を忘するるな。と。
代々、そうだった。
吾が家は、実力で登用された事は一度も無い。
全てては、繋がりが吾が家を名門にしたのだ。
だから、吾が家は言う。
繋がりとは、縁。
縁とは、吾が家の礎にして、最も後世へ伝えるべきものだと。
妻は、時より手紙を綴っている。
此処には居ない、最愛の人に向けて。
私には、それが最も辛かった。
しかし、尊重したい。
だから、知らぬふりをした。
妻は、恐らく、魔性の人。
私をこんなにも苦しめながら、私にこんなにも愛を注がせるのだから。
本気で思う。
私は、あの人に魅せられていると。
恋い焦がれ、正気を失っていると。
でも、私はどうしようも出来ないのだ。
あの人を前にすると、全てが色褪せ、全てが風前の塵のようなのだ。
それほどまでに、私はあの人に惹き寄せられている。
それほどまでに、私は、あの人が欲しいのだ。
あの人と話していると、思い知らせる。
私は、本当の意味であの人と視界を共有出来ないという事実に。
私は、あの人に相応しく無い可能性が高いという事実に。
しかし、もう戻れないのだ。
もう、離れられないのだ。
あの人の側が心地よくて、あの人の側が忘れられないのだ。
あの人を前にすると、思うのだ。
私はなんと、矮小な存在かと。
私は、なんと無知な存在なのかと。
きっと、だからこそ、私はあの人を想う。
そして、私は誰よりも、あの人を愛していられるのだろう。
夫は、言う。
『貴女は、人の本当に見て欲しい内面を見てしまう。
僕も又、それ故、貴女に惹かれ続ける人間の一人だ。』
私には、そんなつもりは更々無い。
唯、見えているだけだもの。
しかし、夫の目には違うように映るみたい。
『僕より優れた人間に貴女を取られてしまう。』
私には、その働く心理が分からない。
しかし、尊重するようにしている。
護衛を付けられ、侍女を付けられ、家から出る際は必ず自家用車。
もしかすると、結婚したのは資産故だと思っているのかもしれない。
それも又、夫と結婚した要因の一つでは在るが、それだけでは無い。
夫は、素晴らしい人だ。
私には、勿体ないくらいに聡明で、理知的な人だ。
しかし、自信が無く、繊細な儚さがある。
それが、今の貴男だと私は思う。
そして、それも又、良いのだ。
妻は、言う。
『優しき人。』だと。
私は、違う。
誰かに貴女を奪われるのが、怖いのだ。
貴女の友人は、男も多い。
そして、その男は貴女を慕い、時には思いを寄せる。
貴女は、いつも華麗に男の手を交わす。
しかし、それすら、魅力的なのだ。
蝋梅(ろうばい)は、良い。
黄みがかった、僅かに透けるような花弁。
上品な仄かな甘い香りは、風に運ばれ、辺りを癒す。
花言葉は沢山在る。
その中でも私は、先見という花言葉が最も好ましい。
今では余り見かけ無いが、本当に美しい。
機会が有れば、ぜひ、立ち止まって見て欲しい。
寒中に咲く姿は、言葉では語れない。
それほど迄に、私には美しいと感じたのだ。