kiliu yoa

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4/22/2024, 7:48:04 AM

妻の愉しそうな声が、庭の方から聞こえてくる。

そして、妻と楽しそうに話している、彼の声が聞こえてくる。



一筋の冷たい液体が、私の頬を伝い落ちた。

何故だろう。

私は、あわててハンカチを取り出して、

ハンカチを見て、また、目から冷たい液体が頬を伝う。

このハンカチは、妻が初めて刺繍したものだった。

落ち着こうと、コーヒーを淹れても、

冷たい液体は、目から一滴ずつ流れてくる。


気が付くと、リビングのソファに横になっていた。

どうやら、泣きつかれて、眠ってしまったらしい。

目の前に、暖かい紅茶が置かれた。

「貴男。」

妻の優しく澄んだ、いつもの声がした。

「はい。」

何だが、泣き顔を見られるのが恥ずかしくて、

妻と目を合わせられなかった。

すると突然、妻は私を抱きしめた。

「ごめんなさい。わたしは、貴男に甘え過ぎてしまっていた。」

視界がぼやけて、涙が溢れた。

「こちらこそ、ごめん……。彼を招いて良いよって、言ったのに。」

「良いの。貴男のおかげで彼と再会することが叶った、本当にありがとう。」

「私を尊重してくれて、ありがとう。」

私は、妻を抱きしめた。





4/13/2024, 1:29:21 PM

櫻の散り際の見事な花吹雪。

この散り際の美しさに敵う花など無いように、私は思う。

それほどまでに、美しい。

そして、その美しさには、晴れ渡る青い空が欠かせない。

晴れ渡る春の空があってこそ、櫻の花吹雪は美しさは際立つように感じた。



4/10/2024, 4:25:39 PM

わたしは、むかしから恋愛がよく分からなかった。

自分自身の気持ちを聞かれることも、苦手だった。

考えや思ったことは有るのだが、それに感情が乗らないのだと思う。

だからか、『浮気とか不倫は、いや!絶対に無理!』

だと言っている人間の気持ちが、よく分からなかった。

人間は、ゴリラとチンパンジーの間の生物で

ゴリラは一夫多妻制、チンパンジーは乱婚、と、わたしは聞いた。

ならば、不倫や浮気は仕方ない。と、わたしは思う。


そんな常識外れのわたしの夫は、とんでもなく女遊びが好きだった。

お見合いの席で、

「結婚後も、あなた以外の女の人と遊んで良い?」

と、言う程に……。

そんな彼に、わたしはこう返した。

「別に良いよ。わたしは、むかしから恋愛感情が分からないから。

 わたしを束縛しないなら、不倫や浮気も大歓迎する。

 でも、約束して欲しいことがあるの。」

彼は首を傾げて、微笑んだ。

「どんなこと?」

わたしは、応えた。

「わたしも、相手の女の人も、大切にすること。約束できる?」

彼は、先程と異なり、真剣な表情と声で言った。

「うん、約束するよ。あなたも、他の女の人も、大切にする。」


あれから色々あったけど、夫との関係は良好で、

ずっと約束を守ってくれている。

わたしは、今も幸せな生活を送っています。

こんな幸せな人生を歩ませてくれた夫には、感謝しかない。

改めて、今日は夫に感謝を伝えてみようと思う。











4/8/2024, 12:22:57 PM

過ぎれば、どんなに長い月日も……本当にあっと言う間だ。

私の家は、彼の家に仕えて、もう2245年目になるように。

そして、私の家は今尚、家を、一族を保ち続けている。

正直、今の時代には家や一族など必要無い。

貴族制は廃れた上、この国では、みな等しく同じ教育が受ける権利がある。

身分問わず、好きな職に就く権利が保証されている。

だから、正直、家は必要無い。


では、何故、家や一族を保ち続けているのだろう。

と、疑問に思うだろう。

それは、簡単だ。

唯、昔話がしたいからだ。

家を保ち続けるのも、

古くからの友人を亡くしてしまうようで、寂しいからだ。

過去を忘れられてしまったら、それはもう無かったことになってしまう。

それが、何よりも恐ろしく、怖いのだ。


あの時、共に乗り越えた困難の記憶も、

あの時、共に分かち合った記憶も、

忘れ去られてしまったら、もう元には戻れなくなる。


だから、私の家は時を紡ぐ。

私にとっての時を紡ぐとは、先祖代々の記憶を語り継ぐこと。

忘れてしまわぬように、無かったことにならぬように、

長年、紡いできた糸を解けてしまわぬように、

私の家と彼の家、他の縁ある家々は、

今日も又、家を保ち続ける為、互いに助け合い、努めている。





4/8/2024, 7:28:31 AM

「もう、貴方とはお別れです。」

そう、彼女から告げられた。

私は、その言葉に何も思わなかった。

私自身、薄々感じていたから。

「そうですか。分かりました。今迄、有難う御座いました。」

私は、彼女に頭を下げた。


「こちらこそ、今まで、ありがとうございました。」

そう言って、彼女も頭を下げた。

「私自身、もう別れだと感じていましたから。」

微笑もうとしたけど、少しぎこちなくなった。

「では、さようなら。」

そう言って、彼女は私に背を向け、去っていった。

最後の最後まで彼女は、涙の一滴も見せず、颯爽としていた。

きっと、こういう彼女の姿に……私は惚れ込んだのだろう。


一筋の涙が流れる、私を見ぬように夕日は……もう沈んでいた。






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