妻の愉しそうな声が、庭の方から聞こえてくる。
そして、妻と楽しそうに話している、彼の声が聞こえてくる。
一筋の冷たい液体が、私の頬を伝い落ちた。
何故だろう。
私は、あわててハンカチを取り出して、
ハンカチを見て、また、目から冷たい液体が頬を伝う。
このハンカチは、妻が初めて刺繍したものだった。
落ち着こうと、コーヒーを淹れても、
冷たい液体は、目から一滴ずつ流れてくる。
気が付くと、リビングのソファに横になっていた。
どうやら、泣きつかれて、眠ってしまったらしい。
目の前に、暖かい紅茶が置かれた。
「貴男。」
妻の優しく澄んだ、いつもの声がした。
「はい。」
何だが、泣き顔を見られるのが恥ずかしくて、
妻と目を合わせられなかった。
すると突然、妻は私を抱きしめた。
「ごめんなさい。わたしは、貴男に甘え過ぎてしまっていた。」
視界がぼやけて、涙が溢れた。
「こちらこそ、ごめん……。彼を招いて良いよって、言ったのに。」
「良いの。貴男のおかげで彼と再会することが叶った、本当にありがとう。」
「私を尊重してくれて、ありがとう。」
私は、妻を抱きしめた。
4/22/2024, 7:48:04 AM