kiliu yoa

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12/14/2023, 3:33:39 PM

街を歩くと、至る所に色とりどりの電灯が灯る。

其れは、冬の日の短さを逆手に取った発明。

この時期、其れは本当に美しく、心奪われる。

寒さの中、だからこそ映える灯たち。

多くの人々の心を明るくする、灯たち。

やはり、いつの時代も灯は…人の心を照らしてくれる。

ふふふ、この感動を…なんと言い表そう。

私には、到底表せそうにない感動だ。

皆は、灯をどう捉える。

あなたにとって、灯とは、どんなものだろうか。








12/11/2023, 3:22:10 PM

「もう一度、申してみよ。」

上司の静かな怒りが籠もった、低く声が響き渡る。

「申し訳、御座居ませんでした。」

両手を正面にハの字に置き、土下座をする。

必死に声の震えを抑えたが、やはり少し声が震えていた。

心臓を握られているような感覚がする。

「面を上げよ。」

主君の声が響く。

「はい。」

震えながら、面を上げる。

「そう怯えるでない。大丈夫だ。今は、吾が居る。

 決して、刀を抜かせぬ故、安心するが良い。」

主君の明瞭な声が響く。

「いくら貴殿が部下に厳しかろうとも、吾の顔に泥を塗る行為は出来ぬ。」

主君は、諌めるように上司に釘を刺した。

「はい。主君の命ならば、致し方或りません。」

先ほどの感情は嘘のように、上司は平然と応えた。

「任務が達せられ無かったことは、致し方無い。

 やはり、どれだけ経験を積もうとも一定数、対応出来ぬことは或る。

 何故、任務を達せられなかったのか、

 それを皆で内省し、分析し、共有し合い、次に活かすことが重要である。」

主君の、優しい声が響き渡った。

「寛大な御判断、心より感謝申し上げます。」

無意識に頭を下げた。

今にも、涙が溢れそうだった。

「良いか、よく聴け。

 この度の件、確かに任務は達せられ無かった。

 しかし、幸い、貴様ら任務に当たった者は少数だが帰還した。

 其れは、正しく貴様の、率いる者としての功だ。

 これからも、精進すると良い。」

主君の声が近くで聞こえ、一瞬だが私の肩に手を置かれたのだった。

私は、頭を上げた。

そして、主君の目を見た。

「以後、精進して参ります。」

私は深く頭を下げ、誓った。

生涯、この方に忠誠を誓おうと。






12/10/2023, 1:50:37 PM

「もう、こんな仕事やめてやる。」

酒瓶を片手に愚痴る男が居た。

「おい、大丈夫か。酔っ払い。」

私は、この男を昔から知っている。

「五月蝿い。俺は酔ってない。」

その口調は、完全に酔いが回っていた。

「いや、完全に酔ってる。一人称、変わってる。」

そして、この男は酔いが回ると、一人称が俺に変わる。昔のように…。

「五月蝿い!おまえに何が分かる。」

一従者たる私には、あなたの苦労は到底…分かりかねない。

「どんなに嘆こうとも、この仕事は辞められないって。

 どうしても辞めたいなら、僕、自ら殺してやろうか。」

昔のように冗談を言ってみる。

「嗚呼、頼む。もう、私は全て終いにしたい。」

頭が真っ白に成った。

「いつ、酔いから覚めた。」

何故なら、その声にその口調はシラフの彼の口調だったから。

「僕、自ら殺してやろうか。って、ところから。」

バシッ「ふざけるな!」

思いっきり頬を引っ叩いて、大声を上げて、あいつの胸ぐらを掴んでいた。

「其れだけは、絶対言うな!其れだけは、言わぬ約束だろう!」

私は激情に駆られ、怒鳴ってしまった。

分かっている、今のは私が悪い。

誰だって、たまには弱音を吐きたくなるし、死にたくなるものだ。

でも、あの日、あの時、誓ったことを忘れていた、彼が許せなかった。

彼は、ひどく驚いた表情をして、安堵したような表情に成った。

「嗚呼、そうだったな。昔、誓ったのだったな。すまない。」

「こちらこそ、大人気なく感情的になってしまい、すみませんでした。」

あっ、彼の顔付きが変わった。

憑き物が落ちた、晴々とした表情に変わっていた。





12/9/2023, 12:42:48 PM

『ルネさん』

『ルネさま』

『ルネ』

『あなた』

『お母さま』

『母上』

『母さま』


ハッ、ハーハァ、ハーハァ、スゥーッ、ハアー。

びっくりした…。

何で何度も、誰かに呼ばれた。

ハッハッハ…、何だ…夢か。

此れが俗に言う、走馬灯なのか?

右手を上げようと、ふと、右手を見た。

お母さまに右手を握られ、上げられなかった。

辺りを見回して、分かった。

此処は、病室だった。

嗚呼、なるほど。

だから、たくさん呼ばれたのか。

「お母さま、おはようございます。」

「お母さま、」

「ふふふ、起きてますよ。おはよう、ルネ。」

「おはようございます。」

嬉しくて思わず、頬が上がる。

「先ほど、たくさん、私が呼ばれる夢を見ました。」

「ああ…それは、此処に駆け付けた方々の声じゃないかしら。」

「そういうことでしたか。」

私の中で、納得した。

「ええ、あなたは生死を彷徨っていましたから。

 本当に良かった。あなたの声をもう一度、聞けて。」

お母さまの声は、どこか安堵した声だった。

「ごめんなさい、心配をお掛けしました。」

「もう、謝らないの。家族にくらい、心配かけて良いの!」

「ありがとう。お母さま。」

「良いのよ…それくらい。わたしも謝らないといけないの。」

お母さまは、どこか申し訳なさそうな表情をした。

「あのね、あなたの家族のことなのだけど…。」

「どうしたの?」

「あなたを心配して、三日三晩ずっと…あなたのそばを離れなかったから、

あなたの容態が安定した時に、半ば強引に家に返したの。ごめんなさいね。」

「ううん、ありがとう。寧ろ、助かったよ。」

「久しぶりにあなたの手を繋いだわ。」

「あの時、以来ですね。」

「あなたが私の娘に成ってくれた日、以来ね。」

「はい。」

穏やかな時間が流れた。

「あっ、いけない。早く、あなたの目が覚めたことを皆に知らせないと。」

私は、幸せ者だな。そう、改めて思えた日でした。

 








12/8/2023, 5:10:50 PM

あっ、死ぬかもしれない。

肩から横腹まで、斜めに斬られた。

幸い、予想してたより痛くない。

でも、もう無理かもしれない。

相手がおおきく振りかぶった。

『どうか、お気お付けて。ご武運を祈っております。』

凛とした、覚悟を決めた、妻の表情が蘇る。

一瞬の走馬灯。

もう、身体が動かない。

貴女と人生を共に過ごせて、歩めて、本当に幸せだった。

之まで、ありがとう。

そして、約束を果てせなくて、ごめん。














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