『ルネさん』
『ルネさま』
『ルネ』
『あなた』
『お母さま』
『母上』
『母さま』
ハッ、ハーハァ、ハーハァ、スゥーッ、ハアー。
びっくりした…。
何で何度も、誰かに呼ばれた。
ハッハッハ…、何だ…夢か。
此れが俗に言う、走馬灯なのか?
右手を上げようと、ふと、右手を見た。
お母さまに右手を握られ、上げられなかった。
辺りを見回して、分かった。
此処は、病室だった。
嗚呼、なるほど。
だから、たくさん呼ばれたのか。
「お母さま、おはようございます。」
「お母さま、」
「ふふふ、起きてますよ。おはよう、ルネ。」
「おはようございます。」
嬉しくて思わず、頬が上がる。
「先ほど、たくさん、私が呼ばれる夢を見ました。」
「ああ…それは、此処に駆け付けた方々の声じゃないかしら。」
「そういうことでしたか。」
私の中で、納得した。
「ええ、あなたは生死を彷徨っていましたから。
本当に良かった。あなたの声をもう一度、聞けて。」
お母さまの声は、どこか安堵した声だった。
「ごめんなさい、心配をお掛けしました。」
「もう、謝らないの。家族にくらい、心配かけて良いの!」
「ありがとう。お母さま。」
「良いのよ…それくらい。わたしも謝らないといけないの。」
お母さまは、どこか申し訳なさそうな表情をした。
「あのね、あなたの家族のことなのだけど…。」
「どうしたの?」
「あなたを心配して、三日三晩ずっと…あなたのそばを離れなかったから、
あなたの容態が安定した時に、半ば強引に家に返したの。ごめんなさいね。」
「ううん、ありがとう。寧ろ、助かったよ。」
「久しぶりにあなたの手を繋いだわ。」
「あの時、以来ですね。」
「あなたが私の娘に成ってくれた日、以来ね。」
「はい。」
穏やかな時間が流れた。
「あっ、いけない。早く、あなたの目が覚めたことを皆に知らせないと。」
私は、幸せ者だな。そう、改めて思えた日でした。
12/9/2023, 12:42:48 PM