kiliu yoa

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9/30/2023, 11:48:53 AM

 人生は、退屈だ。

 物語の主人公たちのような優れた才能も、悪に対抗するほどの志しも、

 和多志は持っておらず、周囲に流され、生きてきた。

 和多志は、凡人。

 其れは、兄様や弟たちを見ていて、幼いながらに感じた。

 兄様のような聡明さも、弟たちのような優れた身体能力も、

 和多志は持ち合わせて居なかった。

 だからと言って、不幸では無かった。

 若き時は、兄弟たちの持つ天賦の才が羨ましくて……堪らなかった。

 幼き頃、兄弟の中で……和多志にだけ、優れた才が無いことに苦しんだ。

 大人になり、気がついた。

 優れた才が無いからと言って、人の価値が決まらぬことに……。

 だから、理想の自分に成れないことを、恥じなくて良いことに……。

 例え、理想の人生を歩めなかったとしても、それを恥じなくて良い。

 一日一日を精一杯…生き抜くことは、決して…容易なことでは無い。

 苦しくとも…辛くとも…生きてきた和多志や貴方を、何よりも誇って良い。
 
 苦しみを生き抜いてきた、和多志や貴方なら……。

 きっと、大丈夫。 

 和多志や貴方の生きる明日は…、未来は…きっと明るい。

 和多志は、そう信じてる。

9/29/2023, 4:42:22 PM

 壁一面の本棚には、ぎっしりとすみずみ迄、本が隙間なく詰められている。

 一人しか座れぬほどの大きさの座卓は、窓に面していた。

 当時には、珍しく…畳ではなく、板が敷き詰められていた。

 障子越しに通る光は、僅かで薄暗かった。

 座卓近くに、高く書物が積まれていた。

 しかし、決して乱れては居らず、むしろ整頓された印象を受けた。

 住人の匂いは無く、僅かにイグサの香りと鉄の香りがした。

 極めて清潔で、洗練された部屋だった。

 この部屋の住人は、かつて…拷問を生業にしていたと、誰が思うだろう。

 彼は、かつて『かがち』と呼ばれていた。

 幼少の時より、拷問を仕込まれ、童の頃から才の片鱗を見せていた。

 ひどく大人び、冷酷に淡々と仕事をこなす子どもの姿は、なんとも異様で、

 恐ろしかったと云う。

 だから、人々は口を揃えて…こう呼んだ。

 『輝血(かがち)』と。

 八岐の大蛇の目のように、赤く染まり輝く…鬼灯の実のようだと。

 そして、彼は若君と出会う。

 若君は、全くと言っていいほどに、彼を恐れなかった。

 彼を気に入り、人間として、友人として、信を置く側近として扱った。

 しだいに、彼は無表情だが感情が豊かになり、人間みを取り戻していった。

 やがて、彼は多くの部下から持ち、信頼され、尊敬される人間と成った。

 若君には、慇懃無礼な態度だったが、そこが気に入られていたと云う。

 生涯に通し、若君に忠を尽くした彼。

 この部屋は、彼が若君から最初に与えられ部屋だった。

 その後、様々な功績から屋敷を与えられた。

 しかし、生前の彼は、この部屋を手放すことは無かったと云う。


 

9/28/2023, 10:27:24 AM

 最愛の人は、今日も此処を後にする。

 「またね、あなた。」と、私の耳元で透明感のある…優しい声が囁く。

 今日も貴女は、私を深く抱きしめる。

 「ああ、また。」と、私は今日も云う。

 「身体に気を付けね。」

 「ああ。気を付ける。」

  
 今日も又、貴女は家族のもとへ帰る。 
    
   もう少し…私のそばに居てほしい。

   もう少し…私に振り向いてほしい。

   もう少しだけ…、私を愛してほしい。 

  わかっている、私の願いは、叶わない。

      でも、愛して欲しかった。

    
       唯一、心から愛する貴女に。

 

      

9/27/2023, 1:06:12 PM

   天から、雫が落ちてくる。

   まだ雨足は弱く…傘を差すのを、ちと…躊躇った。

   土は多くの水を含み、道が泥々していた。

   卸したての靴には、多くの水気を含んだ…砂利と泥がへばり付く。

   高値を叩いた靴に傷が付き、汚れると思うと…何気に落ち込んだ。

   水は、大地を潤し…豊かにする。

   大地が豊かに成れば、戦は起きにくい。

   戦が起きなければ、その地の住人は…故郷を追われない。

   土地を追われ無ければ、物盗りに成らずとも…生活することが出来る。

   物盗りが減れば、その地は…治安が良く為る。

   治安が良くなれば、その地は経済的に豊かになる。
 
   経済的に豊かに成れば、その地は発展する。

 だから、少し靴や裾が泥で汚れたぐらいで、機嫌を悪くしたくないものだ。

   まあ、それは…もう少し先のことに成りそうだ。

   どうやら、和多志が大人になれるのは、もう少し先らしい。

   いつかは、ちょっとした災難も笑い飛ばせたらなと思った。

  

   



   
   

9/25/2023, 10:21:04 AM

 鳥のように成りたい。
 
 自由に、大空を統べる鳥のように。

 賢く、力強く、優雅に羽ばたく、鳥のように。

 鳥だったら、足枷が在ろうとも、遠くへ行ける。

 鳥だったら、なにものにも、縛られない。

 

 鳥には、鳥の世界が在る。

 きっと、私の思うような世界では……無いのだろうな。

 正直、羨ましい。

 何よりも、自由で居られることが……。

 浅ましいことは、わかっている。

 自由とは、それだけ多くを背負う。

 だから、身軽とは訳が違う。

 

 もし、生き方を選べたなら………。

 一度だけ、鳥のように………自由で美しく、鮮烈に生きたいものである。

 


 

 

 
 

 

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