kiliu yoa

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8/11/2023, 1:46:48 PM

 それは、昔、まだ身を隠して生きてきた頃の思い出。

 ある老夫婦に、お世話になっていた。その年は、いつもより暑い夏で、小さなため池は干上がるほどの暑さだった。

 その日は、一段と暑い日で、早朝には暑さで目が覚めた。いつものように、水差しから桶に水を注ぎ、顔を洗い、かたく絞った手ぬぐいで、体を拭いた。

 机の上の硬い黒パンをちぎり、口に運ぶ。しかし、いつもの量の3分の1しか喉を通らなかった。

 いつものように畑に出て、植物に水をやり、雑草を摘んでいた時だった。

  突然、汗が全身から吹き出で止まらなくなり、指先が震え出した。

 気がついた時には、ベットで横になっていた。

 ベットの横には、老夫婦が居た。「ああ、良かった。本当によかった。目が覚めた。」と、老夫婦は泣きながら、喜んでくれた。

      そして、ぎゅっと僕を抱きしめてくれた。

 それから、間もなくお医者さまが家に来て、診察してくれた。
「数日間、安静に過ごしたら、体調も回復するよ。それと外では、帽子を被るように。そして、こまめに水を飲むようにね。なにか有れば、また呼んで下さい。では、これで失礼します。」と、お医者さまは、帰っていった。

 その翌日には、おばあさんが、おじいさんと僕の分の麦わらで帽子を編んでくれた。

 麦わらで出来た帽子は、農作業になくては、ならない必需品となった。

 今では、もう小さくなって被れないが、これだけは手放せず、手元に残している。

 




 

8/8/2023, 3:21:08 PM

きれいな人に成りたい。

 容姿のきれいな人は、それだけで優遇される。

 容姿が整っていたら、貧しくともお金持ちの男性と結婚できる。

 わたし自身、容姿には自信があった。でも、所詮は井の中の蛙だった。

 此処には、わたしより美しく、色っぽい女たちで溢れていた。

美しいと綺麗は、違う。と、此処で思い知らされた。

 わたしは、美しくは、成れなかった。

「おまえは、きれいだが、美しくは無い。」と、楼主に、客に、言われた。


 わたしには、変えることの出来ない容姿に烙印を押されような、呪いの言葉に思えた。

      
     しかし、わたしの姉様となった人は違うと言った。


「綺麗な容姿とは、それだけで武器だ。

一見すると、その綺麗という武器は 無敵のように思えるかも知れない。
 
 しかし、それは違う。

 それだけでは、人を魅了することは出来ない。

 それだけでは、美しいとは、言えない。」と、姉様が言った。

「では、美しい方々と綺麗な方々の違いは、何なのでしょう。」と、わたしは

姉様に問うた。

「内面だよ。見かけだけでは、人は魅了することは叶わない。

美しさとは、心に響くものだと思う。

美しい者は、知っているのだろう。

己の心の有り様は、玻璃の鏡のように、周囲の目に、はっきりと映すことを。

だから、美しい者は 芸や容姿だけではなく、学を身につけ、内面を磨く。

見かけだけでは、到底、測ることの出来ない『心』を。」と、姉様は教えてく

れた。

 だから、わたしは、内面を磨いた。

 『心』が鏡なら、『学』は、絵画だと思う。

 自分の『心』の鏡に映したものを、『学』は言葉に表すことで、互いに見せ合い、写しあうものだと、感じた。


 

8/6/2023, 4:04:07 PM

 光輝く人。

 自分自身が望み、選んだ人生とは全く違う生き方をしている人。

 其れが、彼だった。

 私は、ノース。 彼は、サウス。 

 昔から、私が月なら、彼は日と喩えられる。

 私と彼は、何故か、よく比較される。

 人種も違えば、故郷も異なり、価値観や倫理観も違うのに。

 長年に渡り、対となる立場だからかも、知れない。

 未だに彼の行動には、理解に苦しむ。

 何故、あそこまで依頼主の指示を破り、無視するのだろう。

 しかし、何故か依頼が絶えないのが不思議なくらいだ。

 彼は、なぜ、あそこまで自由に生きられるのだろうか。

 彼のように、己に素直に生きられたらな…と、たまに思う。

 彼のような人生を歩めたら…と、羨ましく思う時が有った。 

8/5/2023, 2:28:32 PM

かの有名な平家物語の冒頭部分を思い出す。
 
 和多志の仕える主は、この文を日常的によく唱えた。それほどまでに、好んでいたものは、他に無かった。

 諸行無常。

 一見すると、同じ事の繰り返しのような日常でも、その瞬間、その一時と同じ時は、もう二度と、決して訪れることは無い。

 和多志は、そう解釈している。

だからこそ、大切なのだ。あたり前のこの平和な日常が…。
 
だからこそ、大切なのだ。この日々に、瞬く間に過ぎ去ってしまう時に、感謝することが…。

 主は、それを…まだ、幼き頃に知ったのだ。知ってしまったのだ。

 この日々は、決してあたり前では無いことを…。親しき者たちが、心から笑い逢い、生きていることの喜びと有り難みを…。

 

8/4/2023, 1:50:59 PM

 わたしは、彼に敵わない。わたしの技術をどれだけ駆使しても、彼に勝つことは、叶わない。でも、それでも、彼に決闘を申し込む。彼は、そんなわたしを決して、嗤わない。
 昔、彼に聞いてみた。諦めの悪い、滑稽なわたしを何故、嗤わないのか。と、興味本意で問うた。

彼は、こう応えた。
「私には、決して真似することの出来ない強さが、貴女には有る。貴女は、自分自身の弱さと向き合う。戦い、分析し、受け入れる強さが有る。そして、何よりも貴女の、他者には出来ぬ芸当の技を見せてくれる。貴女の技は、いつも美しい。」と。

わたしが対となる彼に、絶対的な信頼を置くのか、理解できた瞬間で在った。

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