きれいな人に成りたい。
容姿のきれいな人は、それだけで優遇される。
容姿が整っていたら、貧しくともお金持ちの男性と結婚できる。
わたし自身、容姿には自信があった。でも、所詮は井の中の蛙だった。
此処には、わたしより美しく、色っぽい女たちで溢れていた。
美しいと綺麗は、違う。と、此処で思い知らされた。
わたしは、美しくは、成れなかった。
「おまえは、きれいだが、美しくは無い。」と、楼主に、客に、言われた。
わたしには、変えることの出来ない容姿に烙印を押されような、呪いの言葉に思えた。
しかし、わたしの姉様となった人は違うと言った。
「綺麗な容姿とは、それだけで武器だ。
一見すると、その綺麗という武器は 無敵のように思えるかも知れない。
しかし、それは違う。
それだけでは、人を魅了することは出来ない。
それだけでは、美しいとは、言えない。」と、姉様が言った。
「では、美しい方々と綺麗な方々の違いは、何なのでしょう。」と、わたしは
姉様に問うた。
「内面だよ。見かけだけでは、人は魅了することは叶わない。
美しさとは、心に響くものだと思う。
美しい者は、知っているのだろう。
己の心の有り様は、玻璃の鏡のように、周囲の目に、はっきりと映すことを。
だから、美しい者は 芸や容姿だけではなく、学を身につけ、内面を磨く。
見かけだけでは、到底、測ることの出来ない『心』を。」と、姉様は教えてく
れた。
だから、わたしは、内面を磨いた。
『心』が鏡なら、『学』は、絵画だと思う。
自分の『心』の鏡に映したものを、『学』は言葉に表すことで、互いに見せ合い、写しあうものだと、感じた。
8/8/2023, 3:21:08 PM