kiliu yoa

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8/8/2023, 3:21:08 PM

きれいな人に成りたい。

 容姿のきれいな人は、それだけで優遇される。

 容姿が整っていたら、貧しくともお金持ちの男性と結婚できる。

 わたし自身、容姿には自信があった。でも、所詮は井の中の蛙だった。

 此処には、わたしより美しく、色っぽい女たちで溢れていた。

美しいと綺麗は、違う。と、此処で思い知らされた。

 わたしは、美しくは、成れなかった。

「おまえは、きれいだが、美しくは無い。」と、楼主に、客に、言われた。


 わたしには、変えることの出来ない容姿に烙印を押されような、呪いの言葉に思えた。

      
     しかし、わたしの姉様となった人は違うと言った。


「綺麗な容姿とは、それだけで武器だ。

一見すると、その綺麗という武器は 無敵のように思えるかも知れない。
 
 しかし、それは違う。

 それだけでは、人を魅了することは出来ない。

 それだけでは、美しいとは、言えない。」と、姉様が言った。

「では、美しい方々と綺麗な方々の違いは、何なのでしょう。」と、わたしは

姉様に問うた。

「内面だよ。見かけだけでは、人は魅了することは叶わない。

美しさとは、心に響くものだと思う。

美しい者は、知っているのだろう。

己の心の有り様は、玻璃の鏡のように、周囲の目に、はっきりと映すことを。

だから、美しい者は 芸や容姿だけではなく、学を身につけ、内面を磨く。

見かけだけでは、到底、測ることの出来ない『心』を。」と、姉様は教えてく

れた。

 だから、わたしは、内面を磨いた。

 『心』が鏡なら、『学』は、絵画だと思う。

 自分の『心』の鏡に映したものを、『学』は言葉に表すことで、互いに見せ合い、写しあうものだと、感じた。


 

8/6/2023, 4:04:07 PM

 光輝く人。

 自分自身が望み、選んだ人生とは全く違う生き方をしている人。

 其れが、彼だった。

 私は、ノース。 彼は、サウス。 

 昔から、私が月なら、彼は日と喩えられる。

 私と彼は、何故か、よく比較される。

 人種も違えば、故郷も異なり、価値観や倫理観も違うのに。

 長年に渡り、対となる立場だからかも、知れない。

 未だに彼の行動には、理解に苦しむ。

 何故、あそこまで依頼主の指示を破り、無視するのだろう。

 しかし、何故か依頼が絶えないのが不思議なくらいだ。

 彼は、なぜ、あそこまで自由に生きられるのだろうか。

 彼のように、己に素直に生きられたらな…と、たまに思う。

 彼のような人生を歩めたら…と、羨ましく思う時が有った。 

8/5/2023, 2:28:32 PM

かの有名な平家物語の冒頭部分を思い出す。
 
 和多志の仕える主は、この文を日常的によく唱えた。それほどまでに、好んでいたものは、他に無かった。

 諸行無常。

 一見すると、同じ事の繰り返しのような日常でも、その瞬間、その一時と同じ時は、もう二度と、決して訪れることは無い。

 和多志は、そう解釈している。

だからこそ、大切なのだ。あたり前のこの平和な日常が…。
 
だからこそ、大切なのだ。この日々に、瞬く間に過ぎ去ってしまう時に、感謝することが…。

 主は、それを…まだ、幼き頃に知ったのだ。知ってしまったのだ。

 この日々は、決してあたり前では無いことを…。親しき者たちが、心から笑い逢い、生きていることの喜びと有り難みを…。

 

8/4/2023, 1:50:59 PM

 わたしは、彼に敵わない。わたしの技術をどれだけ駆使しても、彼に勝つことは、叶わない。でも、それでも、彼に決闘を申し込む。彼は、そんなわたしを決して、嗤わない。
 昔、彼に聞いてみた。諦めの悪い、滑稽なわたしを何故、嗤わないのか。と、興味本意で問うた。

彼は、こう応えた。
「私には、決して真似することの出来ない強さが、貴女には有る。貴女は、自分自身の弱さと向き合う。戦い、分析し、受け入れる強さが有る。そして、何よりも貴女の、他者には出来ぬ芸当の技を見せてくれる。貴女の技は、いつも美しい。」と。

わたしが対となる彼に、絶対的な信頼を置くのか、理解できた瞬間で在った。

8/2/2023, 10:47:40 AM

 目が覚める。天井も壁紙も、カーテンにベットシーツも真っ白の部屋にいた。わたしは、眩しくて目を細めた。手をみると、包帯が巻かれており、この色もまた、白かった。ベットから降りたくて、靴を探していると床だけは茶色いことに気がついた。ここだけは、眩しくなかった。

 靴を履いてみると、ふかっとして驚いた。踵のない変わった形をした靴。

そっと、カーテンを開けた時だった。

 白い女の人が居た。ラベンダー色の目をしたきれいな女の人で、まつげまで真っ白だった。

「目が覚めたのね。良かった。」と、微笑み、わたしの頭を優しく撫でてくれた。
 わたしは、嬉しくて笑い声が溢れた。

その女の人は、それから毎日、来てくれた。一緒にいる時間は短いけど、凄く嬉しかった。

 女の人の娘になった。女の人は、わたしより年上の何人もの子どもが居た。

みんなは、女の人のことを『お母さん』と呼んだ。

 わたしも『お母さん』と呼びたくて、でも、なんだか恥ずかしくて。

でも、今日は勇気を振り絞って「お母さん」と呼んだ。
 
 すると、女の人は涙を流しながら笑っていて、「ありがとう。」と言ってくれた。

 わたしは、お母さんが悲しいのか、嬉しいのか、分からなくて聞いてみた。

「お母さん、大丈夫?なにか、悲しいことあったの?」って。

「ううん、お母さんはね、とても嬉しいと泣いてしまうの。」って。

「そうなの?お母さん、大好き!」って、言って、お母さんを抱きしめたの。

「お母さんもあなたのこと、大好きよ。」と言って、抱きしめてくれた。

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