目が覚める。天井も壁紙も、カーテンにベットシーツも真っ白の部屋にいた。わたしは、眩しくて目を細めた。手をみると、包帯が巻かれており、この色もまた、白かった。ベットから降りたくて、靴を探していると床だけは茶色いことに気がついた。ここだけは、眩しくなかった。
靴を履いてみると、ふかっとして驚いた。踵のない変わった形をした靴。
そっと、カーテンを開けた時だった。
白い女の人が居た。ラベンダー色の目をしたきれいな女の人で、まつげまで真っ白だった。
「目が覚めたのね。良かった。」と、微笑み、わたしの頭を優しく撫でてくれた。
わたしは、嬉しくて笑い声が溢れた。
その女の人は、それから毎日、来てくれた。一緒にいる時間は短いけど、凄く嬉しかった。
女の人の娘になった。女の人は、わたしより年上の何人もの子どもが居た。
みんなは、女の人のことを『お母さん』と呼んだ。
わたしも『お母さん』と呼びたくて、でも、なんだか恥ずかしくて。
でも、今日は勇気を振り絞って「お母さん」と呼んだ。
すると、女の人は涙を流しながら笑っていて、「ありがとう。」と言ってくれた。
わたしは、お母さんが悲しいのか、嬉しいのか、分からなくて聞いてみた。
「お母さん、大丈夫?なにか、悲しいことあったの?」って。
「ううん、お母さんはね、とても嬉しいと泣いてしまうの。」って。
「そうなの?お母さん、大好き!」って、言って、お母さんを抱きしめたの。
「お母さんもあなたのこと、大好きよ。」と言って、抱きしめてくれた。
8/2/2023, 10:47:40 AM