雪桜(引き継ぎ)

Open App
10/11/2025, 9:00:58 AM

「一輪のコスモス」



コスモス畑の中から

背の高い君が顔を出す

長い髪が一緒に揺れて

華も一緒に微笑んでいた

うろこ雲が広がる秋空を背に

乙女達の視線はいつまでも可憐に

僕の心をくすぐってくれていた

10/10/2025, 8:29:22 AM

「秋の恋」



お気に入りのカーディガンを羽織って

いつものカフェのいつもの席で

ホットミルクティーとワッフルと

湊かなえの本を読んでみる

バニラアイスが溶けるのを気にしながら

ミルクティーを一口飲んで

本のページをめくると

銀杏の木漏れ日が差し込んで

時間をゆっくり溶かしてしく

冷めたティーポットとカップがテーブルに並んで

賑やかだった店内がいつのまにか静かになる頃

お会計を済ませて軽く会釈して店を出た

薄暗くなった街に1人

頬を抜ける風は少し肌寒くて

空に浮かぶ青白く光った満月に照らされて

「今すぐに君に会いたい」と心の底から思っていた




10/8/2025, 9:36:26 PM

「自己防衛」



好きだけど

寝てるかもしれないからやめた

好きだけど

忙しいかもしれないからやめた

好きだけど

返信大変かもしれないからやめた

好きだけど

好みじゃないかもしれないからやめた

好きだけど

重いと思われるかもしれないからやめた

好きだけど

この関係が終わってしまうかもしれないからやめている

すっぱいぶどうを見つけたきつねのように

自分の気持ちを守るために

10/8/2025, 9:23:40 AM

「静寂の空」




窓を開けると秋風がそよぐ

鈴虫の音色も聞こえてくる

夜の闇で部屋が染まり

秋の夜長の考えごと

落ちてきそうな天井を見つめて

右手を伸ばしてみるけれど

自分のものじゃないみたいに彷徨うだけ

耳元で囁くように

君の名前を口にしても

静寂の空に消えていく

好きという気持ちは

まだ出せずにいる

10/6/2025, 2:26:34 PM

「観覧車」




もうそろそろ帰らなきゃという君を

最後にもう少しだけと観覧車に誘った

扉が閉まると2人の時間がゆっくりと動き出して

向かい合う君の背景が空に変わっていく

君の頬と足元の公園の木々が赤く染まり

2人が1番高いところに着いたころ

「ほら、あそこ」と指を刺す君に近づいて

少しゴンドラが揺れた時に

思わずしがみついた君との世界が

ほんの少し止まった気がして

思わず「好きです」と呟いた

君は一瞬驚いた目を見せてから俯くと

握った手のひらの鼓動がゴンドラを下ろし始めた

扉が開き夕焼けが夜景に変わるころ

君は真っ先に飛び降りて

僕をゴンドラからひっぱり出しながら

「わたしも」と短く呟いた

観覧車は終わったけれど

2人の世界は今動き出したばかり

Next