「観覧車」
もうそろそろ帰らなきゃという君を
最後にもう少しだけと観覧車に誘った
扉が閉まると2人の時間がゆっくりと動き出して
向かい合う君の背景が空に変わっていく
君の頬と足元の公園の木々が赤く染まり
2人が1番高いところに着いたころ
「ほら、あそこ」と指を刺す君に近づいて
少しゴンドラが揺れた時に
思わずしがみついた君との世界が
ほんの少し止まった気がして
思わず「好きです」と呟いた
君は一瞬驚いた目を見せてから俯くと
握った手のひらの鼓動がゴンドラを下ろし始めた
扉が開き夕焼けが夜景に変わるころ
君は真っ先に飛び降りて
僕をゴンドラからひっぱり出しながら
「わたしも」と短く呟いた
観覧車は終わったけれど
2人の世界は今動き出したばかり
10/6/2025, 2:26:34 PM