「月明かりの下で」
バーカウンターで飲んだ帰り道
思い切って手を繋いでみた
火照った身体に君の熱が伝わって
自分の顔が赤くなるのがわかった
焦って質問ばかりしてた帰り道
気をつけないと早足になっていた
人も車も少なくなった町外れは
新しいシーンの映画のセットみたいだ
時々起こってしまう沈黙の時間に
2人の足音だけが響いていた
横目で彼女の顔を感じようとするけど
月明かりがぼんやり照らすだけだった
僕は心の中でちょっとほっとした
これ以上君の綺麗な顔を見る自信はなかったから
今夜君と歩くには
これぐらいの明るさがちょうどいい
「甘い優しさ」
ずっとずっと相談してから
君に背中を押してもらって
勇気を出して告白してみた
予行練習してたとおりに
いつから好きだったかを精一杯伝えてみたけど
彼の気持ちは一緒じゃなかった
申し訳なさそうに断る彼のために
せめてもの笑顔で別れたけど
帰り道は我慢してたけど
君の顔を見た瞬間に気持ちが溢れ出してしまった
頑張ったね、と褒めてくれる君
いつだって私に優しさをくれる君
君の私への気持ち知ってたよ
私の恋を応援してくれてる顔が
時々悲しそうになるのも気付いてたよ
それでも今はもう一度君の優しさをお願い
「よくある歌」
誰かじゃだめ
君じゃないとだめ
「なごり」
バイバイまたね
挙げようとした手を彼が握りしめる
おかしな握手みたいに何度か振ってから
横断歩道を渡って駅に向かう背中に
彼の手の温もりが残った手を振る
指の間を夏の終わりの風が吹いて温もりは冷めていく
遠くなる足音が胸の中で響いてくる
時々振り向いてくれる笑顔に
胸が詰まって手を振れなくなっていく
次も会えるとわかっていても
小さくなっていく彼の背中を
見えなくなっても追い続けてた
彼の握力と足音を感じながら
「秋のメタファー」
本のページをめくるように
ゆっくりと訪れて
恥ずかしがり屋さんみたいに
足早に去っていく秋
衣替えをするように
夏の思い出を整理して
冬の準備をさせてくれる
短い秋に人々は
思い思いの秋を楽しもうとする
秋が白秋と表現されるのは
あなたの好きな色に染めてください、という
秋の優しさなのかもしれない